- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784818819573
作品紹介・あらすじ
2001年に日銀は量的緩和政策の採用を決定したがマネーサプライの増加には至らず、結局解除となった。量的緩和論のどこが誤っていたか。各国の金融政策も踏まえて検討する。
感想・レビュー・書評
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本書では、小泉政権下で行われた量的緩和を内生的貨幣供給論の立場から検証している。小泉政権下での量的緩和では、マネーサプライ(MS)の量が増えず、リフレ派が喧伝するようなポートフォリオ・リバランス効果など起こらなかったと計量分析から結論づけている。その検証結果は正しいだろう。
高橋財政、ニューディール政策は、当時の政府が国債発行したことで銀行が国債購入を増加させポートフォリオ・リバランス効果を作り出したことがデフレ脱却に寄与したという指摘も興味深かった。この考え方は、向井文雄『日本国債のパラドックスと財政出動の経済学』でも援用されている。
一番良かったのは、マッカラム・ルールを扱った第七章。小泉政権下での量的緩和で作り出されたマネタリーベースの量は、マッカラム・ルールにより算出したマネタリーベースの量を下回っている。マッカラム・ルールに乗っ取って金融政策が行なわれた場合のシミュレーションをしてみると、その名目GDP成長率が実際のGDP成長率を下回るという結果を得ており、小泉政権下での「景気回復」には量的緩和が寄与してない。以上の指摘はとても興味深かった。個人的にはマッカラム・ルールはインチキだと思う。
VARモデルやVECMモデルを使って、各国の貨幣乗数の推移を計量分析している第二章から第四章は専門的であり、経済学プロパー以外は読まなくてもいいと思う。気になったのはMSを増やすには政府の国債発行が必須であると主張しているのにも関わらず、やたらと財政赤字を気にしている点。それは矛盾していると感じられた。10年前の本だが、今から読む価値はあると思う。筆者には安倍政権下での量的・質的緩和の検証を是非ともやってもらいたい。
評点: 7.5点 / 10点詳細をみるコメント0件をすべて表示