アメリカはなぜ日本を助けるのか 体験的日米同盟考

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  • 産経新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784819111294

作品紹介・あらすじ

1960年代後半から90年代の冷戦終結までの激動期を最前線で取材してきた著者が、その体験をもとに日米同盟を俯瞰し、真の姿をえぐりだした渾身の書。

感想・レビュー・書評

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  • なんというか、なかなかに興味深い本である。

    筆者はアメリカ留学以来、徹底的にアメリカに好感を持ち、この国を支持する。1960年代の安保、東大紛争、反ベトナム戦争運動に違和感を覚え、そうでない視点を提供する。このへんは、分かる。

    ただ、史観があまりにも一方的だ。ベトナムにしてもカンボジアにしても親米史観のみを強調し、それ以外は一切排除である。ジャーナリストがこんな偏向史観でよいんだろうか。いくら産経新聞出版だからってこれじゃひどすぎる。

    どちらにしても、なぜアメリカが日本を助けるのかは、本書を読んでも分からない。帯の文で言えば、「一言で答えるならば、日本がアメリカの同盟相手だからである」というが、それは仲が良いから助けるというトートロジーに過ぎない。なぜ同盟なのか、、、という問いには答えない。それに、筆者が何度も何度も指摘する日本の反米史観が、いかに生じているのかという説明がも一切なされない。

    なぜ、日本人はアメリカを憎悪するのか?

    それはアメリカが「同盟」と称する属国化、隷属化を直観的に感じ取り、それに日本人が反発するからではないだろうか。もちろん、アメリカ人は親切心でやっている。乞食に小銭を投げ与えるような親切心を。

    本書の筆者が何十年にもわたるジャーナリストとしての貴重な体験を経験しつつもこの程度の結論にしか達することができないというのはケーススタディーとしては非常に面白い。人間が貴重な体験を得たとき、その体験そのもののバイアスに自覚的でなければならない。そうでなければ、その体験はどんどんその人物を縛りつける呪縛となるだけである。体験は、「カッコ」に入れて外から見直さねばならないのだ。もちろん、このことは本書の筆者が批判してきた朝日新聞、NHK、80年代以前の読売、中核派などにも通用することだけど。

    ぼくらの世代は、60−70年代の素朴な左派(北朝鮮や北ベトナムが一方的に正しいという史観)も乗り越え、浅田世代のスキゾ・ぱらぞ的虚無的なポスト・モダンも乗り越え、その後出てきたサンケー的親米親日反中反韓的子供っぽいナショナリズムも乗り越える必要がある。それはどこだろうか。どこだろうか。

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著者プロフィール

産経新聞ワシントン駐在客員特派員。麗澤大学特別教授。
1941 年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。米国ワシントン大学留学。毎日新聞社会部記者、サイゴン、ワシントン特派員、政治部編集委員を歴任。87 年に産経新聞に移り、ロンドン、ワシントン支局長、初代中国総局長、ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員を歴任。ベトナム報道でボーン・上田記念国際記者賞、「ライシャワー核持ち込み発言」報道で日本新聞協会賞、東西冷戦終結報道で日本記者クラブ賞、『ベトナム報道1300 日』( 講談社) で講談社ノンフィクション賞などを受賞。主な著書に、『ODA幻想』(海竜社)、『モンスターと化した韓国の奈落』『米中激突と日本』『アメリカの悲劇』(以上、ビジネス社)など多数。

「2022年 『米中開戦前夜 習近平帝国への絶縁状』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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