ブラックスワンの経営学 通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822250294

作品紹介・あらすじ

ここに、1つの逆説的な事実があります。前述したようにマネジメントの学会では、現在の統計学の大ブームが起こる前から統計学をベースにした研究が主流であり、多くの論文が学術雑誌に掲載されてきました。記憶に残らないような示唆しかもたらさない仮説であっても、それを検証できれば掲載されるという統計調査の方が有利で、掲載比率では、全体の約9割を占めています。つまり事例研究の掲載比率は1割にも満たないのです。量的には存在感が薄いといえるわけです。
しかし、その反面、ベストアーティクルとして学会賞を受賞するような論文となると、事例研究の存在感がぐっと増します。最近の傾向を見ると、米国の学会、アカデミー・オブ・マネジメントが発行する『アカデミー・オブ・マネジメント・ジャーナル』(Academy of Management Journal、通称AMJ)では約50%が事例研究によるものです(2000年代から2013年現在)。マネジメント関連で、権威ある学術雑誌として名高い『アドミニストラティブ・サイエンス・クオータリ』(Administrative Science Quarterly、通称ASQ)では、発行後の5年間の影響力を評価して最優秀論文賞を決定しますが、受賞論文の約70%を事例研究が占めています(2000年以降から現在)。
(中略)

感想・レビュー・書評

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  • 名著「ブラックスワン」の中で著者のN・タレブは、予測できなかったにも関わらず、いったん発生すると「後づけ」で「それらしい説明」がなされるため、予測可能だったと思ってしまう事象を「ブラックスワン」と名付けた。そのブラックスワンが“予測”できる可能性を「事例研究」の手法に求め、経営学界の優秀論文を題材に、実務にも応用できる要点を解説した一冊。

    数値データから相関関係を分析する統計学的手法と異なり、「コンテキスト」(脈絡や状況)や仮説思考といった定性的要素を重視しつつ、様々なバイアスを排除することで客観性を高めた事例研究では、仮説を逸脱した事例を排除することなく、さらに異なる視点からの分析を重ねることにより、“それまでの常識では計り知れなかった新たな因果関係のメカニズム”(=ブラックスワン)を明らかにすることができる。

    デジタル技術の力で膨大なデータから相関関係さえ抽出できれば、仮説も因果関係も必要なし、という「ビッグデータ」のような手法とは対極に位置する「アナログな」やり方ではあるが、人知の限界への挑戦という意味では、事例研究も統計学同様、進化し続けていることがわかる。「データサイエンティスト」の双璧として「コンテキストサイエンティスト」が出てきてもおかしくないのかもしれない。

  • 生徒から学ぶ公文の姿勢。
    マッキンゼーのエクセレントカンパニーの必要条件と十分条件。
    学ぶことを止めたら進歩はないでしょうね。
    事例研究の大切さを説いた本です。

  • 「ブラックスワン」は全く関係なく、ただの(最優秀論文賞を受賞した)事例研究の偉大さを訴えるビジネス風自己啓発本。
    事例研究は統計に劣るだなんて誰が言っているのか知らないが、
    わざわざ『事例研究には3つの力がある「人間の知性を活発にする力」「複雑な現象に対応する力」「アナロジーベースで将来を切り開く力」だ!』みたいな恥ずかしいことを第1章から述べられるので、大抵の人はここで本書を読み進めるべきか判断できるだろう。

    とりあげる事例研究も、その正当性を「最優秀論文賞を受賞したのですから、彼らの判断は正しかったと言えます」と自らの判断力すら捨て去り、引用や追試の調査さえもしていない。

    案の定、家庭の経済性が大きな要因であったと注釈がつけられたマシュマロテストを「事例研究の成功例」と取り上げるところからして、単一の事例研究のみから結論を得ることの怖さを教えてくれる。

    さらには、個々の事例研究から学べることとしては「現場で聞き出す」「綿密さと柔軟さを併せ持つ」「特定の調査協力者に頼らない」というように、高校生向けにしても恥ずかしい事しか述べられない。

    "ブラックスワン"と"経営学"というタイトルに釣られてしまった自分を恥じるのみ。

  • • 事例研究(ケース・スタディ):まさか、ありえない→逸脱事例
    • 普及(イノベーション、技術)⇔見えない壁
    • 問題意識→仮説→往復運動

  • 『#ブラックスワンの経営学』

    ほぼ日書評 Day325

    「定説」を根本から覆すことができる "ブラックスワン" の発見、これを事例研究から紐解く経営学書…という触れ込み。
    奇を衒いすぎることもない真摯な展開、著者の人柄も偲ばれる。が、はっきり言って詰まらない。
    もちろん、本の価値は受け手との相対的なものであり、あくまでも個人的感想である。が、…

    以下、主だった章の感想を。

    多くの新興宗教で見られる現象…教祖の予言が外れた方が、信者の結束・信仰心が高まる。それは何故か?
    ★冒頭の章だけあって、なかなか面白い。

    60年代のニューヨークで起きた殺人事件、被害者女性は35分に渡り大声で助けを求めたが、周囲の人間は誰ひとり警察に通報しなかった。
    ★現実世界の出来事と実験室における「再現」実験で、どれだけ再現性を高め仮説検証力を持つのかの問題提起は興味深い。

    調査における「原型」バイアス。S.ジョブズが創造的な人物の象徴と信ずる人は、ジョブズの振る舞いや発言に近いことをする人をみて、その人も創造的と判断しがち。
    ★この辺から、当たり前じゃん感が強くなる。

    80年代、マッキンゼーが提唱した「エクセレントカンパニー」の条件、その必要条件を備えたはずの企業群が一斉に業績悪化の坂を転げ落ちた。
    ★ま、そやろーなー。

    M&Aで、人的資産を企業価値の大半に置くIT企業のような業態では、単に報酬面だけではなく、立地や就業環境まで保証しないと人的流出が避けられない
    ★あまりにも当たり前すぎて論点が正直よくわからなかった。

    一番最後のKUMONにおける指導法の共通言語化の取り組みが、最も興味を惹かれた。

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  • めっぽう面白かった。
    「世界の経営学者は〜」の方は、統計的手法が強調されていたが、
    こちらは、実務家かつ研究者である私の立ち位置とマッチしている。
    引用文献も広がりそう。

  • ネタは面白いのだが、文章が何とも。
    ちょいちょい教授のアピールが煩い。
    内容よりもそれが鼻について記憶に残らなかった。

  • ・起業家が成功するかどうかを判断する基準―何かあったときに、言い訳するかどうか

  • 内容がブラックスワンかどうかは別として、事例研究で留意すべき視点について、示唆に富んでおり、非常に参考になる。

  • 学術から1年遠ざかっているとこうも咀嚼感がないものかと感じた。決して内容が悪いのではなく、今の自分には響かなかった。

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2022年 『キャリアで語る経営組織〔第2版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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