China 2049

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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822251048

作品紹介・あらすじ

本書はマイケル・ピルズベリーのCIAにおける経験に基づいて書かれ、CIAのエクセプショナル・パフォーマンス賞を受賞した。「パンダハガー(親中派)」のひとりだった著者が、中国の軍事戦略研究の第一人者となり、親中派と袂を分かち、世界の覇権を目指す中国の長期的戦略に警鐘を鳴らすようになるまでの驚くべき記録である。 本書が明かす中国の真の姿は、孫子の教えを守って如才なく野心を隠し、アメリカのアキレス腱を射抜く最善の方法を探しつづける極めて聡明な敵だ。我々は早急に強い行動をとらなければならない。
──R・ジェームズ・ウールジー(元CIA長官、民主主義防衛財団会長)


 本書は米国における中国専門家として著名であるばかりでなく、米国政府の対中政策に最も深く関わってきたマイケル・ピルズベリー博士の中国論である。その本人が本書の冒頭で、米国は中国の国家戦略の根底にある意図を見抜くことができず、騙されつづけてきたと告白する。この告白は衝撃的である。
 我々はこれほど中国に精通し、中国要人と交流のあった同博士でさえ中国に欺かれ続け、それを知らずに歴代米国政権が対中政策をピルズベリー博士の助言や勧告に基づいて進めてきた事実を知って今更の如く愕然とする。
──森本 敏(拓殖大学特任教授・元防衛大臣)



 1990年代後半のクリントン政権時代、著者のマイケル・ピルズベリーは国防総省とCIAから、中国のアメリカを欺く能力と、それに該当する行動を調査せよ、と命じられた。諜報機関の資料、未発表の書類、中国の反体制派や学者へのインタビュー、中国語で書かれた文献をもとに、中国が隠していた秘密を調べはじめた。やがて見えてきたのは、中国のタカ派が、北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的、技術的、経済的支援を得てきたというシナリオだった。これらのタカ派は、毛沢東以降の指導者の耳に、ある計画を吹き込んだ。それは、「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年に当たる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」というものだ。この計画は「100年マラソン」と呼ばれるようになった。共産党の指導者は、アメリカとの関係が始まった時から、この計画を推し進めてきたのだ。そのゴールは復讐、つまり外国が中国に味わわせた過去の屈辱を「清算」することだった。
 本書は、ニクソン政権からオバマ政権にいたるまで、米国の対中政策の中心的な立場にいた著者が、自分も今まで中国の巧みな情報戦略に騙されつづけてきたと認めたうえで、中国の知られざる秘密戦略「100年マラソン(The Hundred-Year Marathon)」の全貌を描いたものだ。日本に関する言及も随所にあり、これからの数十年先の世界情勢、日中関係、そしてビジネスや日常生活を見通すうえで、職種や年齢を問わず興味をそそる内容となっている。

感想・レビュー・書評

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  • 拡張の論理、成長軌道の必要性について考える。

    脱成長、資本主義の限界、持続社会というようなキーワードが散見され始める中、国家はGDP成長率を求め、株主に対し企業は利益拡大を約束し続ける。人間社会のレースは、相手が成長する限り、立ち止まったものは相対的弱者となり、組織は支配欲を根底に持つから、この防衛本能において成長志向は止まらない。

    防衛のための競争。それゆえの成長。だから、競争の構図を読み解く事が人間社会においては、原理原則の出発点となる。国家として、一時的にもこの覇者となり得たのがアメリカ。しかし、圧倒的なはずの覇権国家に対して、二番手以下の利害思惑がバグのように溜まり、トゥキディデスの罠が進む。つまり、覇権国の移り変わりだ。

    中国人は馬鹿ではないので、自国に自由な報道が無いことや、国策逮捕が横行し司法が成立していない事、自分たちの財産や人命の不安定さをよく理解している。その上で、民主主義に強く憧れている訳ではなく、大多数は、大胆な事は望まず、平穏無事に家族が健康で飯が食えれば、現状維持で構わないと考えている。大衆の無気力化だ。民主主義を剥奪された香港とは経験が違う。

    ならば、完全に大衆をコントロールしている中国が敢えて更なる拡張を望むのは何故か。覇権国からの支配に怯え、備えているという理屈だ。それを韜光養晦という言葉が象徴するように、極力下心を目立たせずに戦略的に力を備えてきた中国に騙されるなよ、と警鐘したのがこの本だ。今や、中国を弱者扱いする識者は減ったが、日本でも、つい最近まで中国を下に見る論説は存在したし、それがナショナリズムを活気づけ、本屋は右傾化したタイトルで溢れていた。

    本著の2049とは。中国共産党革命100周年の年、2049年までに、世界の経済軍事政治のリーダーの地位をアメリカから奪取すると言う計画の事だ。100年マラソンなのだと。太子党やらの派閥争いは最早方がついたのだと思うが、独裁を誤魔化す詭弁だろう。個人ではなく、民族のため、寿命を超えた年数の計を装う。派閥争いに対し、長期計画こそ超党派を導く事を熟知している。株主に迫られ中期計画を策定するお遊びとは違う。スローガンの本当の意味は、正当化にある。

    覇権国家の暴走を止めるのも、二番手以下の役割。アメリカならば国民の内なる正義により制御もできそうだが、その声を統制した国ならば、歯止めが効かない。大衆は愚かかも知れないが、一般意志では自分たちの安全を第一に考えるから、それが抑止力となるのが、民主主義の少ない利点であるはず。この防波堤がない国家が覇権国となり、新秩序を形成するのは、極めて危険だ。支配者階級の都合によるジェノサイドが進む。

  • ホンマかいな、と言う内容。何がホンマかいなかと言うと、アメリカが中国共産党政権の戦略について最近まで気づいてなかった、ということが。あまりにもナイーブ過ぎる。敢えてこの時期に対中政策の大御所がこういう本を出すということに政治的駆け引きが絡んでいるのかもしれないけど。本書にはいかにアメリカ政府が、中国の夢、覇権を狙う中国共産党に騙せれてきたかが細かく明らかにされてるんだけど、ちょっと長すぎる。正直、最後の森本敏の6ページぐらいの解説読めば内容は全て理解できると思います。

  •  チャイナの「世界覇権100年戦略」について、元CIA長官で親中派であったマイケル・ピルズベリーが詳しく語っている。
     チャイナが世界の覇権を握るべく何か長期的戦略を持っているのは漠然と知っていたが、その戦略は孫子の兵法など古典的なものに沿っているといった細かいことまでは知らなかった。
     アメリカはチャイナの野望に気付きいてそれまでの宥和的態度を一変させ、現在ではトランプ大統領が対中制裁などを行なっている。日本はアメリカと協力して対中政策をしっかり取ることができるのか、安倍政権以後の日本政府の動きに注目しなければならないと思った。

  • CIAの職員として、中国と友好関係を結ぶために長く働いてきた著者の自伝のようなもの。
    悔恨の書というか懺悔の書というか、個人としてはそのような趣きがあるとしても、政府が発刊を許したのは、ここから反撃を始めるぞ、という狼煙の役割もありそう。

    米中の橋渡しが著者の仕事だったとは言え、日本の姿がまったく見えないこの半世紀の記述である。
    せいぜい尖閣でのせめぎあいなど、チャイナが牙を見せ始めてからの一例として登場するくらい。
    この存在感のなさが「戦後レジーム」なのだな、とつくづく。

    また、チャイナの側も日本のことなどまったく歯牙にもかけていないのが伺い知れる。
    それは、別にチャイナのGDPが膨張したここ十数年とかの話ではなく、中ソ関係が険悪だった1960年代であってもそうなのだ。
    日本が、世界第二位の経済大国とか威張っていた時代にあっても、チャイナは日本を都合よく搾取する対象としてしか扱っていない。
    そのために工作に勤しみましょう、というわけで、日本の地位を奪うとかそういう意識はない。
    今、結果として日本を抜いた状況にあるだけ。
    当たり前だが、目線は米の覇権にのみ向いていて、そのための100年なのである。

    さて、そのチャイナの100年の戦略を知ってしまった今、我々はどうすべきか。
    チャイナの膨張はどうやら習近平だからどうという問題でも無いとなれば・・・。

    その答えも春秋時代の戦略に学べ、というのが著者の結論。
    やっぱり、古典は大事ですね、と。

    以下、読んでいて驚いた点。

    ソ連の高官たちが、割と早い時期に自国の没落を覚悟していたこと。
    チャイナに気をつけろと米国人である著者に忠告していたこと。

    天安門後も米の対中政策に変更はなかったこと。

    リー・クアンユーについて紙幅を割く著者だが、マハティールについての記述は無し。

  • 覚えているだろうか?

    ほんの10年前までは、日本は世界第2位の経済大国だった。今や中国は日本をはるかに追い越し、世界一の座を耽々と狙っている。

    この躍進は、世界の工場として海外からの設備投資が集中し、その後、豊かになった国民による内需が拡大したため、といった経済的な説明もできるのだが、実は、中国政府の長期的な戦略に基づく周到な計画のたまものである。

    100年マラソンといわれるこの戦略は、西欧により中国は搾取されてきた雪辱を果たすため、毛沢東時代から秘密裡に実行されてきた。

    「孫子」「戦国策」といった中国古典においては、謀略を使い、戦わずして勝つことが美徳とされる。100年マラソンにも、この思想がしっかり息づいている。

    私たちは、だまされているのだ。

    民主化、自由経済を目指していると信じさせ、技術情報を盗み、着々と武力を整え、気づいたときにはもう手遅れ…

    本書はCIA諜報員として長年中国を研究してきた著者による、スパイ小説さながらの見聞録である。本書を読めば、国と国の競争とはどういうことなのか、民主化・自由経済の理想がいかに脆弱なものか、思い知らされる。

  • アメリカではWSJくらいしか書評が載らなかったキワモノ本なので、買うまでもないと図書館で予約。4月20日読了。なんというか、438頁も費やしたプロパガンダ本。おそらくはオバマ政権の対中弱腰外交を批判したかったのだろうが、それよりもアメリカの中国理解の薄さには唖然とする。中国指導者は古典に学んでいるとしていくつも例示しているものは、日本では真面目に勉強した高校生レベルでも漢文で学んだ内容であり、例えば「呉越同舟」などというものは、その出典を「故事成語必携」とかいう参考書を使わなくても、教科書・副読本レベルで知っているもの。(最近は漢文は必修にしていない高校もあるようだが。)内容的にもアメリカ=善、中国=悪という、ちょっとお粗末なレベルのアメリカ人によくあるパターンの思考で埋め尽くされている。中国がアメリカを覇権主義国家として警戒しているのは過去の歴史からして当然で、いくつもの国の政府を転覆させており、近い例ではイラクのフセインを国ごと叩き潰している。外交で相手国に理解者を養成するのは当然で、日本だってほそぼそとではあってもアメリカの知日派と呼ばれる連中には多大の便宜を図っている。お粗末なのは、巻末の森本敏による「解説」と称するものであり、「日本軍と戦ったのは蒋介石軍であり、中国共産党軍ではない。」としている。じゃあ、帝国陸軍が悩まされた八路軍って、何だったのと突っ込みたくなる。Amazonの書評を見ていると、嫌中派には大喝采のようであるが、一定の意図を持ったトンデモ本だということくらい見抜かなきゃね。

  • 【中国、世界の頂点に向けて…?】
    筆者はアメリカの元政府関係者でもあった外交戦略家。書かれたのは2015年、原書タイトルは中国の100年マラソン。
    2049年は、共産党成立から100周年のとして、その年を目指した中国の長期的な世界の覇権獲得へ考え方、アプローチが書かれている。
    中国のナショナリスト・タカ派の理論こそが、中国の外交アプローチを真に決定づけているものである、とし、中国の歴史を遡って戦国時代の思想家・戦略家の考え方を理解することで、現代中国の世界派遣に向けた長期戦アプローチが見えてくるとする。孫氏や三国志のエピソードが引用されている。

    全力でアメリカの視点から書かれた本であること、また10年近く前に書かれた本であり、彼の打ち出した出版当時の新規性は、現在ではより普及しているように思う。だからこそ、彼の著作は的を得ていただけではなく、思考枠組みを提供し、議論をさらに活発化した意義のある著作であったのかと思う。

    日本では、中国の王朝の歴史や、国語・漢文などでも習う言い伝えや思想、日本の文化にもある程度共通する部分もある考え方などは馴染みのあるものが多いけれど、アメリカとしては、まったく遠いものであったりするのかな、と読んでて感じた。
    大学で中国の政治について学んだ時も、中国は過去の屈辱を根に持っていて、世界の覇権の復興のために進めているといったことを学んだけれど、まさにそのアプローチが、日米関係の近代史と共に論じられていた。

    もう一点思ったことは、中国語は翻訳が難しい、と書いていたけれど、一つの言葉や漢字について、エピソードを含めた深い意味を持っている言語である点、漢字は非常に含蓄のある言語であると改めて思った。

  • 今後の数十年間に延々とつづくのは、戦争や領土侵略ではなく、経済、貿易条件、通貨、資源、

    地政学的協力をめぐる攻防だろう

    ①勢をうまく利用する
    ②無為をなす
    ③他国の力を借りる

    態勢を整えておいて、好機が訪れたらそれを逃さない。

    肝に命じておこう

  • China 2049というタイトルのとおり、2049年に向けての百年マラソンを含めた、中国共産党や中国人(のタカ派)の真意、行動のとり方の話がメインの本である。

    ただ、それらの話は参考にはなるものの、大部分の日本人としては目新しい話ではないと思う。

    それよりも、中国に対する米国の関わり方の歴史や、それに対する中国の反応の仕方の変化(本質的には何も変化はなく、表面的な態度の変化があっただけかもしれないが)、相互の(というよりはほぼ米国側のかもしれないが)ミスコミュニケーション、こういった話の方が興味深かった。

    日本より格段にレベルが高い米国のインテリジェンス能力も、中国に対してはあまり機能していなかったことがよくわかる。

    これはやはり言葉の違いが大きいからか。

    細部の誇張や信頼性についてどうかと思う情報源の引用等はあるものの、著者が米国の当局者の一人であったため、米側の中国との関わりの部分については、公開できる真実が語られていると考えられ、その部分だけでも読む価値は十分あると思う。

  • 親中派から転向した著者が、中国の古来からの思想に基づく長大な覇権戦略と、アメリカがいかに誤った対中認識を持ち政策を行ってきたかを述べる。

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