データで見る行動経済学 全世界大規模調査で見えてきた「ナッジの真実」

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822288839

作品紹介・あらすじ

新型コロナウィルスの流行――
政府の対応が国によって違う裏側には、
各国民の「ナッジへの反応度」が関係していた!?

・日本人の、政府の働きかけに対する反応は、やっぱり「特殊」!?
・アメリカ、イギリス、イタリア、フランス、ドイツ……各国民はどう考えているのか?
・中国と韓国がいつも「過剰に反応」しているように見える理由

各国民の深層心理が見える、全世界規模調査を大公開!

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アメリカは活用に積極的。
デンマークは慎重派。
では、日本は……?

「ナッジ(Nudge)を用いることを検討している担当者、
そしてナッジに警戒心をもっている人々の必読書」
(大阪大学大学院経済学研究科 大竹文雄氏[解説]より)

“使える経済学=ナッジ"を
大事なプレゼン、キャッチコピーづくり、
マーケティング、コンサルティングの現場で、
賢く役立てよう

「誰が、どのように働きかけたら、大勢の賛同を得られるか」がデータでわかる。
「ナッジ」の提唱者の一人が贈る、「ナッジ」活用の基本原則。

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ナッジとは、
強制や金銭的動機付け(インセンティブ)に頼らず、
選択の自由を残しながらも、望ましい方向に誘導する、
ちょっとした工夫です。

どのようにナッジを活用すれば、
人々が自身の選択に納得感を持ち、満足できるのか。
「習慣化したいけれど、面倒くさいこと」を難なく継続し、
「悪いことだとわかっているけれど、やめられないもの」を無理なく断つという、
「ナッジのメリット」を享受できるのか。

本書には、ナッジを最も効果的に活用するためのヒントが満載です。

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[本書の調査対象国一覧]
日本 アメリカ アイルランド イギリス イタリア
オーストラリア カナダ 韓国 中国 デンマーク
ドイツ ハンガリー ブラジル フランス ベルギー
南アフリカ メキシコ ロシア

感想・レビュー・書評

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  • 行動経済学の「理論」が当てはまらない、日本社会の「特殊すぎる」事情|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
    https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2022/05/post-109.php

    (短評)『データで見る行動経済学』キャス・サンスティーン、ルチア・ライシュ著: 日本経済新聞(2020年6月6日 有料会員限定)
    https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60025660V00C20A6MY6000/

    データで見る行動経済学 | 日経BOOKプラス
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/20/P88830/

  •  一言で言えば、ナッジに関する理念的な内容を扱っている本。実例や実際的な面白さを味わうには同著者の「シンプルな政府」のほうがよいと思う。

     ナッジとは「一人ひとりが自分自身で判断してどうするかを選択する自由も残しながら、人々を特定の方向に導く介入」である。例えばナッジは食品の栄養価を分かりやすく表示して健康的な食事を推進するが、消費者が食品を選ぶ自由を阻害するわけではない。しかしながらナッジに対しては、人びとを無意識的に「操作」するのではないか、という懸念が付きまとう。

     これに対して著者らは、ナッジに関する国際的かつ大規模な意識調査から、人びとがナッジを信頼するために必要な、ナッジの原則を確認してゆく。この意味で、ナッジの性質や理念的な部分に関心を持つ人にとっては面白いのだけど、「ナッジってなに? どう役に立つの?」と思う人にとっては抽象的であまり面白くない本だと私は思う。したがってそういう方には同著者による「シンプルな政府」のほうをおすすめしています(笑)

     結論としてナッジの原則を確認しておくと、以下のようになる。

    一、ナッジは正当な目的を促進しなければならない
    二、ナッジは個人の権利を尊重しなければならない
    三、ナッジは人々の価値観や利益と一致しなければならない
    四、ナッジは人を操作してはならない
    五、原則として、ナッジは明確な同意がないまま人からものを取り上げて、それを他人に与えるようなものであってはいけない
    六、ナッジは隠さず、透明性をもって扱わなければいけない

     当然とも言えるものばかりだが、この点は実際の施策についてはつねに確認検証されるべきだろう。また「操作」についても個人の純粋な意思とは何かと考えると極めて難しいので、他の原則(たとえば価値観、利益など)に基づく正当性を納得してもらう必要があるかもしれない。

     調査結果については興味深いことが多いのだが、総じて言えば、ナッジという手法そのものを否定しようという立場は少ないようだ。原則に基づく利用が重要だという結論につながるところである。

     ただ例外的で面白いのは、日本やスウェーデンは総じてナッジへの支持が低いという点だ。施策の内容に関わらず、ナッジという手法を認めていないのか、はたまた政府に対する信頼感の無さの顕れなのか、解釈が難しいところだと著者は結論づけている。日本では韓国との対比が際立つのも面白い。韓国もまた政府への信頼感は高くないが、ナッジに対しては容認する傾向が強い。中央政府による強力な体制を確立している中国が予想に反してナッジへの支持は根強いのも興味深い。

     余談を言うと、アメリカで「デフォルトでは民主党として登録される」というのを民主党支持者の32/68、無党派層の26/74、共和党支持者の16/84が支持している。この手の、否定を想定した無茶苦茶な質問もあるのだけど、少ないながら支持をする人もいるようだ。何を考えているんだ……? と笑った。少数とはいえ、こうした人びとの良識を確認する設問の結果に対しては、なかなか不安になる結果も見られる。

     個人的には、「シンプルな政府」で抱いた疑問が本書では大規模な調査に基づいて掘り下げられていたので面白く読んだ。公共の福祉と自律性については、より深い議論を重ねて原則に組み込むことが必要となる(私自身はそれこそ根幹的な問題ではないかと感じるのだけど)。ただ、それでもナッジは社会がよりよい方向に向かうのを援護する一つの方法として、有力なものであることは間違いがないのだろう。

  • 情報提供型ナッジ
    デフォルト設定型ナッジ
    ナッジの問題点=誘導されている感覚、支持されないナッジ。
    日本では、政府への信頼が低いことで、賛成されないナッジが多い。
    アメリカで人気があるナッジ=レストランでのカロリー表示
    タバコパッケージの画像、貯蓄プランへの自動加入。
    価値観と合わないナッジは反対される。女性の姓に変更する、など。肥満などに対する過剰なナッジも支持される。
    ハンガリーとデンマークはナッジ全般に好意的ではない。ハンガリーは公的機関への不信感から。デンマークは個人の自主性を重んじる伝統から。
    政治的に偏向していると感じるナッジは支持されない。

    原則的ナッジ支持国=アングロサクソン系の国。
    慎重型ナッジ支持国=日本、ハンガリー、デンマーク。
    反ナッジ国はいまのところない。
    圧倒的ナッジ支持国=韓国、中国。政府への信頼が高い。命令されることになれている。

    認知のシステム1とシステム2に対応するナッジ=非教育的ナッジと教育的ナッジ

  • 行動経済学の本です。ナッジという、政策に行動経済学の考え方を取り入れる手段が注目されています。正しく使えば、法律や条例などで罰則を設けたり、金銭的なインセンティブを設けたりすることなく、住民が自発的に正しい行動をとるようになるとされます。一方で、導入の方法を誤り、「誘導されている」という印象を与えてしまうと、住民の抵抗感や不信感を生むことが懸念されます。これからの人口減少社会で、行政コストの削減は避けて通れないテーマだと思われます。この本を読んで、ナッジの効果と注意点の正しい知識を学ぶことは、今後の社会のあり方を考える上で有効なのではないでしょうか。

    【特に覚えておきたいフレーズ】
    「政府・制度への信頼はナッジへの賛成と高い相関がある。信頼を得る一番の方法は、信頼を得る努力をすること。行動情報を活用した政策が社会の厚生を促進するようにするだけでなく、政策が透明性をもって採用される十分な機会を提供し、住民の反対意見や懸念に耳を傾けることも重要になる。」
    「正当性を持つためには、正当な目的の促進、個人の権利の尊重、人々の価値観や利益との一致、人を操作しない、明確な同意がないまま人から取り上げたものを他人に与えない、隠さず透明性をもって扱う、という6つを守る必要がある。」
    →これらは、ナッジに限らず、政府や行政にとって施策を考える上で最も重要なことです。また、企業と顧客の関係においても同じことが言えます。

    【もう少し詳しい内容の抽出】

    〇ナッジとは
    ・ナッジとは、行動経済学の理論的な枠組みに基づいて、メッセージやデザインによって情報提供の方法を工夫したり、申請の仕方や選択肢の提示の仕方を工夫したりするもの。大きな金銭的インセンティブや罰則を使わないで、人々の行動に影響を与える政策手段である。低コストであるため、政策担当者の注目を集めている。
    ・「選択する自由も残しながら、人々を特定の方向へ導く介入」というナッジの特徴を知った人の中には、ナッジによって自分が政府に誘導されているようで嫌な気持ちになる人もいることが問題点。ナッジを政策に使う場合は、人々の好みや倫理的判断を知っておく必要がある。
    ・心理学や行動経済学で知られている、意思決定に影響を与えやすい表現の特性を利用する「情報提供型」と、デフォルトからの変更の手間がどれだけ小さくてもデフォルトの選択を選ぶ傾向の特性を利用する「デフォルト設定型」に分けられる。

    〇世界各国でのアンケート調査の結果からわかったこと
    ・人々が反対する可能性が最も高いナッジは、目的が不正であるとみなされるもの、大半の選択者の利益か価値観のいずれかと一致していないと見られているもの。認知処理の過程に無意識に働きかけたり、潜在意識に訴えたりするナッジよりも、よく考えて判断をするようにさせるナッジが選考される傾向がある。大半のケースでナッジに対する賛否を決定するのは、ナッジそのものに対する評価より、特定のナッジの目的に対する評価である。
    ・さまざまな国や文化にわたって、ナッジは政策ツールとして高い水準の支持を得ている。
    ・政府・制度への信頼はナッジへの賛成と高い相関がある。信頼を得る一番の方法は、信頼を得る努力をすること。行動情報を活用した政策が社会の厚生を促進するようにするだけでなく、政策が透明性をもって採用される十分な機会を提供し、住民の反対意見や懸念に耳を傾けることも重要になる。

    〇ナッジに適用されるべき権利
    ・ナッジは、「人間の行動主体性をないがしろにしている」「政府への過度な信頼がベースになっている」「目に見えない」「人を操る」「行動バイアスにつけこむ」「『人間は不合理』という間違った前提に立っている」「周縁の問題にしか機能しない」といった誤解を受けやすい。
    ・正当性を持つためには、正当な目的の促進、個人の権利の尊重、人々の価値観や利益との一致、人を操作しない、明確な同意がないまま人から取り上げたものを他人に与えない、隠さず透明性をもって扱う、という6つを守る必要がある。
    ・すべてのナッジは、公共の福祉や社会全体の厚生を純増させ、最大化させなければならない。

  • ちょっと、思っていた内容でありませんでした。

  • 当たり前なことをくどくどと。

  •  世界18か国でナッジを活用した政策をどのように考えるかについて調査を行ったもの。
     日本が慎重国であることに驚き。
     著者は、政府への信頼が低いことが原因ではないかと推測しているが、監修・解説の大竹文雄は、「日本人が外国人よりもナッジに強く反応する傾向があることを知っているからではないか」と推測している。

  • 論文的 興味持てず

  • 行動経済学のナッジについて、どういう原則を守って使わなければならないかを述べた本。

    特に、日本は世界に比べてナッジを用いた政策に否定的なのは驚いた。

  • ナッジを政策に取り入れる上で、大衆の合意が必要であり、政策立案者と大衆のより良い話し合いで、ナッジの導入を検討する必要がある。
    日本は他国と比べ、ナッジの賛成率が低く、これは政府への信頼が低いとの推測にはなるほどと思った。
    大半の人はシステム2のナッジを選好をするのは意外だった。自分で考えて選択することに大きな意味があるのだろう。
    途中、理解できない部分もあったので、いつか読み直したい。

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著者プロフィール

ハーバード大学ロースクール教授。専門は憲法、法哲学、行動経済学など多岐におよぶ。1954年生まれ。ハーバード大学ロースクールを修了した後、アメリカ最高裁判所やアメリカ司法省に勤務。81 年よりシカゴ大学ロースクール教授を務め、2008 年より現職。オバマ政権では行政管理予算局の情報政策及び規制政策担当官を務めた。18 年にノルウェーの文化賞、ホルベア賞を受賞。著書に『ナッジで、人を動かす──行動経済学の時代に政策はどうあるべきか』(田総恵子訳、NTT出版)ほか多数、共著に『NOISE──組織はなぜ判断を誤るのか?』(ダニエル・カーネマン、オリヴィエ・シボニー共著、村井章子訳、早川書房)ほか多数がある。

「2022年 『NUDGE 実践 行動経済学 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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