コメ国富論 攻めの農業が日本を甦らせる!

著者 :
  • KADOKAWA(角川マガジンズ)
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784827531404

感想・レビュー・書評

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  • 柴田明夫『コメ国富論』読了。著者の本を読むのは、『資源インフレ』以来。こちらの方が数段良かった。特に「あとがき」を読んだ時にはグッときた。
     著者の提言は次の通り。即刻、減反政策を撤廃し、日本は米の大増産に舵をきれ。増産によって米価が下落するとの指摘に対しては、国家備蓄をいまの倍に増やすことと生活保護世帯への現物給付を提唱している。
     ただ著者自身は、昨今の世界的な食料不足を鑑みると、米価は長期的には上昇するとみている。このことによって、米作りが儲かる産業になり、農地の集約化や規模拡大が進むとみている。
     日本の農産物の輸出は、今後必ず必要になってくる。なのに国内の米市場の保護ばかりを重視しつづけるのはどうか? 片方では、米を輸出するのにタイ米やカリフォルニア米の輸入は制限し続けるのはどう考えてもおかしいし、著者は外国産米脅威論そのものが誤謬だとしている。
     工業製品がそうだったように、日本の食料品も、国内で日々、世界中で一番厳しい品質検査を受けている。しかし日本の消費者のこうしたこだわりは諸刃の剣で、一方で非効率や無駄を生み出している。霜降り牛肉や規格外の野菜など。
     「日本人が好む霜降り牛肉は、トウモロコシを主体にした飼料使って生産される。...今後、そのように飼料を(コメに)変えれば肉質が変わってくる。そのとき、消費者がどのように行動するか。飼料を転換するべき意味を理解する必要があるだろう」(柴田明夫『コメ国富論』)
     日本人のこうした「度がすぎた」こだわりは、一方では技術革新や品質の向上を、他方では非合理な無駄を生んでいる。過剰なる潔癖性や世界中から買いあさるクロマグロの乱獲ともつながる話。
     この本を読んでいて"棚田"などの景観の保全については、異論がある。その景観を美しいとは思うが、それでこれからの農地改革が制限を受けるとなると、話が違うように思えてならない。
     こうした棚田などの美しい景観は、その美しさから保全されてきたわけでもなければ、情操教育のためでもなく、単純にそこで生活している人々の日々の必要から生まれてきたものだ。そこで生活していく人がいなければもちろん廃れるし、道路の拡張が必要とされるならつぶされるだろう。
     別に「棚田」などの美しい景観を積極的に破壊しろとは思わない。むしろできるだけ保全すべきだとは思う。ただし、それは農地改革上の優先順位から言えばトップではない。

  • コメの増産によって日本の食糧自給率を51%(過半数)まで引き上げようという主張。

    冒頭でアダム・スミスの「国富論」の曲解に触れ、
    無制限な個人の富の追求を是とするものではないとする。
    農業政策を市場主義経済に委ねてしまうことの危険性を指摘しながら、
    具体的な日本農業の向かう先を、コメ作りを中心にした市場開放へと提示している。

    日本の農業に可能性があることを非常に強く感じた。
    これまでの農業政策を抜本的に見直して、
    喫緊の生産者の確保、流通の改革、消費者の意識改革を行うことが必要だ。

    序章
    日本農業のすい(くさかんむりに卒)点、農業
    経済学から見た食糧自給率

    第一章
    日本農業の危機を認識せよ

    第二章
    日本農業壊滅の根はここにある

    第三章
    「農業解放」が日本の農業の未来を開く

    第四章
    日本のコメを世界へ

    終章
    農業の包容力

  • 農業の歴史や現状の勉強になった。
    米の先物取引や輸出、関税の撤廃など、興味深いことも多かった。
    しかし、少し内容が浅い気がした、裏付けなどは無く、農政を机上の空論と批判しているが、同じだと思える。

  • 長年、減反政策などのコメ政策に疑問を持っていたのだが、本書を読んで問題点や課題をかなり理解することができた。日本の農業も変わりつつあることも理解できた。攻めの農業という主張は説得力がある。

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著者プロフィール

1951年栃木県生まれ。1969年宇都宮東高校卒。1976年、東京大学農学部卒業後、丸紅に入社。鉄鋼第一本部、調査部を経て、2000年、業務部経済研究所産業調査チーム長。2001年丸紅経済研究所首席研究員、2006年所長、2014年より代表。2011年10月株式会社資源・食糧問題研究所を設立し代表に就任(現職)。主な著書は、『資源インフレ』、『食糧争奪』、『水資源』、『食糧危機にどう備えるか』、『コメ国富論』などがある。

「2015年 『食糧クライシス 世界争奪戦と日本の農業』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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