夜明けには優しいキスを (プラチナ文庫)

著者 :
  • プランタン出版
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本棚登録 : 202
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784829625699

感想・レビュー・書評

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  • 「幸せになってはいけない」と思いながら暮らしている要。わざと辛い環境に身を置かなければ生きていけない要が悲しかった。そんな要を放っておけず、助けたいと心から思う公平との出会いで少しずつ変わっていくのが嬉しくなる。要にとっては怖いことかもしれないけれど、「楽しい」とか「嬉しい」とか思うのは自然なことだと思うから。

  • 公平と出会うまでの6年間、彼は確かに自分の悲しみに酔っている部分があったかもしれない。けれどその負の連鎖から1人で抜け出すのはとても難しくて、冷えた心を温めてくれるような誰かが1人でも必要なんだと思った。そういう意味でも人は1人では生きられないし、逆に自分を愛してくれる、本気で気にかけてくれる存在が1人でも入ればすごく喜ばしいことなんだ。

  • お菓子の家のレビューで凪良さんの話は闇を抱えた登場人物の話が多いのに、重くならないと言いましたが、こちらの話は違った。
    痛い。すごく痛い。スピンオフのお菓子の家を先に読んでいたのでそのギャップに驚く。
    あちらはなんだかんだと和気あいあい、ほのぼのとしているけれど、今回はどうしてこんなに主人公が理不尽な目に遭わなければいけないんだろうと読んでいて辛くなる。
    最後はハッピーエンドとはいえ、要が志穂や加瀬の件で失ったものはあまりに大きく。
    DVの被害者ってそうなんだろうか。自分が痛めつけられることでしか、受け入れるすべを知らない。
    だからこそ、DVを助長させてしまう。
    あと公平はこのままフリーターを続けていくのかな…?
    フリーターは侮蔑の対象ではない!という公平の主張はわかるし、彼はしっかりしているのだろうけど、これから大丈夫かな?と心配になる。

  • BLで本当に良かった。所どころ重松清の十字架を彷彿させる内容だったので、最後まで読み進めれるか分からなかった。
    最後、ホッと出来て本当に良かった。

  • スピンオフ読んだ後に読んだのでまあなんとか、気持ちを落ち着けて読めましたがきついですね。さあこれから!ってときに加瀬が何かやらかすので、ハラハラします。救いようない感じになったらどうしようかと思うくらい。BLでこういうことするからこの作家さんはすごい。もちろん面白かったです。

  • 「お菓子の家」を先に読んでからこちらがスピンオフ元だと知り読みました。
    う~ん・・・読んでてしんどい・・・。
    「お菓子の家」で加瀬が要のことを天使のようだったと言ってたので、優しい人なんだろうなと思ってたら、すっごく病んでて全然優しくはなかったです。
    DVは絶対いけないことなんだけど、でもこれは辛いよなぁ・・・と思いました。
    あと、仕事が不安定なのも読んでてしんどいな~と思いました。最終的に結ばれた恋人も仕事が不安定でその後どうなるのかな・・・と不安な気持ちはぬぐえないまま終わりました。愛さえあればいいってもんじゃないよね。後書きにあったように、ちょっとプロレタリアートの香りがしました。う~ん、BL的萌えは感じなかった・・・。でも物語自体はよくできていてスイスイ読めました。
    相思相愛のエッチは最後に一回だけ。
    その他はDV交じりでそれもきつかったです。痛いの苦手です。

  • お菓子の家を先に読んだので加瀬の過去が気になってこちらも。
    覚悟していたとはいえ、重たくてきつい内容です……それでも、自分の過去、犯してしまった罪、消えない痛み、目の前の他者と向き合うこと、傷を乗り越えて生きていく事の愛おしさがぎゅっと詰まっていて読後感はとてもあたたかでした。

    自らを痛めつける事に甘んじるかのような要の過酷な労働環境、恋人である加瀬に一方的に虐げられる日々、何度もフラッシュバックしては彼を縛り付ける「自分は償わなければいけない」という重くのしかかる過去。(断片的な記憶がちらつく中、要にとって何よりも残酷な、歪められた形で事実が提示されるのがまた辛い)

    真っ直ぐな優しさで彼を包んでくれる公平との温かい時間と、愛情を渇望するあまりに歪んだ欲望と暴力で彼を支配する事しか出来ない加瀬との時間の対比はとにかく痛々しい。
    加瀬に感情移入していたせいか、なんだよ要は結局加瀬を自傷の道具にしてただけじゃないか! と、若干イラつくところもあったり…。
    (結局要は加瀬のDV被害者であるのと同時に、加瀬への精神的なDV加害者だったように見えます)
    ただ、そういう残酷な優しさも要の罪であり、そういうある種の弱さ、傲慢さを持った人間が自分の罪にきちんと向き合う様を描き切った凪良先生は凄いなぁと思います。
    贖罪の意識に囚われた要は加瀬と向き合い、深く傷ついた加瀬を救おうとしますが、結局要には加瀬が一番望んだものを差し出すことは出来ないのです。終始加瀬目線で読んでしまったので、とにかく加瀬が不憫で泣きました。うっうっ。
    要が本当の意味で自分を愛し、求めてはくれないと分かってからの加瀬の行動はどうしようもなく悲しくて痛々しく、自ら身を引く行動はそうするしか無いと分かっていても痛ましすぎました。
    正直、当て馬キャラの加瀬という存在が物語の中で悲痛さのあまり際立ちすぎて、メインであるはずの要と公平が霞みます…。
    いや、公平はすごくいい子だし、要の自傷のような振る舞いや加瀬との共依存関係による負の連鎖を愛情の伝達へと変えた素晴らしい青年なんですけどね。

    それぞれが自分たちの力だけではどうにもならない中で虐げられ、希望を無くしていた中で前に踏み出す事が出来て良かったねと思う反面、人間ドラマとして非常に重厚な物語が練り上げられていたところでおきまりのように入ってきた濡れ場シーンが正直なところ、唐突に感じる程…。
    そうさぜるを得なかったと分かっていても、愛の無い加瀬との行為との対比がとてつもなく辛い。

    おまけSSはお菓子の家ともリンクした要と加瀬の再会シーンを含んだメイン二人のその後のお話。
    みんな幸せになってほしいなぁと、優しさと余韻に浸れる読後感が素敵でした。

  • 読んでいてとてもしんどかった。
    亡くなった人を責められないもどかしさとか、見えない暴力とかいろんなものが詰め込まれ過ぎてて、すごく重かった。

    加瀬さんがすごく気になったんだけど、彼も路を見つけたようでほんと良かった。

  • はあ〜重かった…
    要が幸せになったから良かったけど。
    公平の頑張りのおかげだね。

    加瀬が主役の「お菓子の家」は読了。
    加瀬の過去の話が読めて良かった。
    今作もお菓子の家も好きな作品です。

  • 読んでて辛くなったり叫び出したくなったり投げ出したくなったりホッとしたり温かくなったり安心したり。
    いろんな感情が湧き上がるお話でした。

    加瀬の酷さが際立つ前半、公平の真っ直ぐさが辛い中盤、要の一つ時間を乗り越え前へ進む強さを持てた終盤、全てが前にそれぞれが過去の自分を乗り越えた書き下ろし。

    いい作品でした。

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著者プロフィール

1973年生まれ、京都市在住。2007年、BLジャンルの初著書が刊行され、デビュー。17年『神さまのビオトープ』を刊行し、高い支持を得る。19年『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で「本屋大賞」を受賞する。同作は、22年に実写映画化された。20年『滅びの前のシャングリラ』で、2年連続「本屋大賞」ノミネート。22年『汝、星のごとく』で、第168回「直木賞」候補、「2022王様のブランチBOOK大賞」「キノベス!2023」第1位に選ばれ、話題を呼ぶ。翌年、同作の続編にあたる『星を編む』を刊行した。

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