作品紹介・あらすじ

●現代日本を代表するチベット仏教の研究者であり、自らも修行者である永沢哲氏(宗教人類学、上智大学グリーフケア研究所客員准教授)の編著による、チベット仏教を知るための決定版である。
●特筆すべきは、本書の多彩な執筆陣は、いずれも自らがチベット仏教の修行を実践していること。
●本書の刊行の背景にあるのは、世界が過剰なグローバリズムに進むなか、コロナ禍により大きな転換点を迎えた現代において、人類の行く末を選択するにあたって、宗教は重要な役割を持つという時代的な要請である。
●チベットは、2500年前に誕生し、アジア全土に広がった仏教の全体を移植し、発展させた。チベット仏教は、長い歴史の中で発展、成長した人類の叡智である仏教の哲学、心の技法(修行)を持っている。そして、その知恵は現在、世界に向かって大きく広がろうとしている。
●本書は、チベット仏教の現在を、その特徴である顕教と密教を縦軸に、思想、修行、社会的展開を横軸に、各相から紹介を試みる。
●編著者の永沢哲氏が2016年にサンガより刊行した『チベット仏教(サンガジャパンVol.24)』は現在の姿と各派、近現代の人物に焦点をあてた。
本作では、深く踏み込んで、顕教の教えと技法、密教の教えと技法(その多くの精髄は、詩の形で表されている)、そして伝承の要の一つである経典の翻訳に焦点を当てた。
加えて本作では、現在の社会における社会参加の姿と宗教的な核をもった事業を具体的事例とともに紹介。
また、伝統的な修行による境地と科学的な知見とが統合するプロセスにある現在の最新研究もわかりやすく解説する。
●本書は、学術的な最新研究の成果を凝縮した、チベット仏教の現在を深く知るための必須の一冊である。
●本書が既存のチベット仏教の書籍とは違う、8つの特徴的な点を挙げる。
1.今までと違ったチベット仏教の本を目指している。
2.従来密教のイメージとして語られてきたマンダラや儀式といった、その表層的ではなく、密教の核心に迫っている。
3.顕教から密教へのプロセスが可視化されている。
4.未来に向かって行われているチベット大蔵経の多言語への翻訳や、モンテッソ―リ教育と仏教の知恵を融合した新しい教育など、現代の動きを伝えている。
5.慈悲と菩提心と密教のつながりを災害の対応を通して考察している。
6.死の問題を正面から扱っている。
7.チベット仏教を支えてきたのは、有名な高僧―「リンポチェ」―だけではないことを伝えている。高度の密教の修行をつうじて、悟りを完成する人々の多くは、無名の行者たちである。表紙を飾る尼僧の姿は、そのことを象徴している。
8.本書を読み進めることで、チベットだけではなく、仏教全体の大きな営みを見ることができる。個々の人々が、じぶんの内面に向かいながら、助け合って生きることが、仏教の本質である。それが本書の底流に流れる基調音である。

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著者プロフィール

1957年鹿児島県生まれ。東京大学法学部卒。京都文教大学准教授。宗教学。専門はチベット仏教、身体論、瞑想の脳科学。人間の意識・神経系の可能性を研究。著者に『野生の哲学─野口晴哉の生命宇宙』『野生のブッダ』『瞑想する脳科学』、論文に、T. Nagasawa, Eaten by Primordial Wisdom: transmutation of the physical body in the rDzogs chen tradition, in S. Craig et al, (eds.), Studies of Medical Pluralism in Tibetan History and Society, IITBS, 2010.ほか。

「2016年 『講座スピリチュアル学 第7巻 スピリチュアリティと宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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