日本サブカルチャーを読む: 銀河鉄道の夜からAKB48まで

  • 一般社団法人 北海道大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784832933897

作品紹介・あらすじ

宮澤賢治・村上春樹など文学作品からミステリ、ラノベ、百合小説、BL、アイドル、ゲームまで、多種多様な対象とジャンルを取り上げその現代的意義と可能性を明らかにする。錯綜する日本のサブカルチャーを読み解く視座を提供する試み。

感想・レビュー・書評

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  •  昨今のアイドル界隈、アイドルオタク界隈についての社会学あるいは社会心理学的な本を読みたくて地元の図書館に行ってみたのだが、ほとんどそういった物もなく、まったくもってしょぼい図書館である。
     本書は「北海道大学出版会」によって2015年に刊行されている。北大に出版部があるとは知らなかった。
     編著者の押野武志さんは北大の教授だが、他の書き手は全国に散らばっている。
     最近の「サブカル界隈」をめぐって様々な観点によって小論が書かれ、収められている。私は最近のアニメとかラノベとか全然知らないので、ここで取り上げられている各タイトルについて、書かれていることから推測する以外なかった。そんなことだから、本書の各批評についてどうこう言うことも出来ない。
     それでも、幾つかの文章は論理の筋道がおかしかったり、尻切れトンボだなとか、飛躍したなとか、いろいろ感じることは多かった。
     巻頭の「セカイ系の系譜」ではセカイ系のはしりとして宮澤賢治が取り上げられているのが面白かった。
     また、アイドルに関して、美空ひばりが戦後間もない焼け野が原に出現した天才少女という神話的な物語イメージを体現しており、このイメージがそのまま「マクロス」のミンメイや、東日本大震災の被災地で歌うAKBメンバーにつながっている、という千田洋幸さんの説は、私には思いつかなかった視点なので、興味深かった。

  • 押野武志[編著]『日本サブカルチャーを読む――銀河鉄道の夜からAKB48まで』

    【版元】
    判型: 四六 並製
    頁数: 352
    ISBN: 978-4-8329-3389-7
    Cコード: C1095
    発行日:2015-04
    定価: 3,024円 (本体価格2,800円+税)
    在庫僅

     宮沢賢治は元祖「セカイ系」だった!? 宮沢賢治・村上春樹など文学作品からミステリ、ラノベ、百合小説、BL、アイドル、ゲームまで、多種多様な対象とジャンルを取り上げ、その現代的意義と可能性を明らかにする。錯綜する日本のサブカルチャーを読み解く視座を提供する試み。
    http://hup.gr.jp/modules/zox/index.php?main_page=product_book_info&products_id=897


    【目次】
    目次 [i-vii]

    はじめに――日本サブカルチャーを読むための史的展望 001
      一 本書の目的  001
      二 日本におけるサブカルチャーの定義  002
      三 対抗文化としてのサブカルチャー  005
      四 一九七〇年代のサブカルチャー  007
      五 カルチャー/サブカルチャーの境界の消滅  013
      六 日本文化論とサブカルチャー ―― 一九八〇年代以降の展開  04
      七 サブカルチャー批評の現在  020
      八 本書の構成  022

    I サブカルチャーの多様な展開
    セカイ系文学の系譜――宮沢賢治からゼロ年代へ〔押野武志〕 031
      一 セカイ系文学とは何か  031
      二 賢治の世界認識  034
      三 「世界」から「セカイ」へ  041
      四 サブカルチャーとしての賢治  050
      五 セカイ系文学の射程  055

    山川直人『100%の女の子』における合成の機能――村上春樹の原作小説との対照〔西田谷 洋〕 061
      一 はじめに  061
      二 合成される『パン屋襲撃』  064
      三 潜勢的なものの現勢化への抵抗  067
      四 潜勢性と現勢性の対立の強化  073
      五 レイヤーのコンポジティングと未了  075

    『食堂かたつむり』試論――倫子のイメージをめぐって〔水川敬章〕 081
      一 はじめに――自然派ワインを導きに  081
      二 強くて可愛い娘の物語――小説『食堂かたつむり』  085
      三 可愛い呆けた娘の物語――映画『食堂かたつむり』  092
      四 小説への接近――絵本『りんごさんとるりこさん』とマンガ『食堂かたつむり』  097
      五 おわりにかえて――倫子を回帰させる『食堂かたつむりの料理』  101

    生と死の狭間で歌う少女――AKB48から美空ひばりへ、リン・ミンメイへ〔千田洋幸〕 107
      一 アイドルの記憶装置としての『Show must go on』  107
      二 焦土に歌う美空ひばり  109
      三 死を呼び寄せるアイドル、リン・ミンメイ  115
      四 “死の天使”ぱるるの誕生  120

    ドライビングゲームにおいて、いかにして「物語」はマウントされるのか、あるいはされないのか〔竹本寛秋〕 129
      一 問題設定  129
      二 「物語」としてのドライビングゲーム――アーケードゲームからコンシューマゲームへ  133
      三 『首都高バトル』が拡張した「プレイ経験」の質  138
      四 二重の「プレイ経験」としての『グランツーリスモ』  142
      五 『Forza Motorsport』における「プレイ経験」の継承と展開  148
      六 おわりに  152

    II キャラクターから複数の物語へ
    〈操り〉という亡霊――東川篤哉『ここに死体を捨てないでください!』〔諸岡卓真〕 157
      一 ユーモアミステリと〈操り〉  157
      二 〈操り〉の拡張  159
      三 〈操り〉の逆説  160
      四 〈操り〉の崩れ  164
      五 連鎖する勘違い  166
      六 必然としての偶然  169
      七 事件の真相  172
      八 〈操り〉という亡霊  174
      九 〈操り〉の誘惑  177

    pixivという未来―― 「クィア・アダプテーション」としての二次創作〔岩川ありさ〕 181
      一 pixivとジェンダー  181
      二 「タグ」がつなぐオルタナティブな物語  184
      三 「祈り」としての二次創作  186
      四 「クィアな再解釈」の可能性  190
      五 「腐女子ヘイト」という問題系  193
      六 pixivという未来  194

    〈関係〉を書くことの可能性――百合小説・中里十『君が僕を』論〔佐藤 亮〕 201
      一 はじめに  201
      二 「百合」というジャンル  203
      三 ジャンルの問題  205
      四 中里一の百合論  207
      五 『君が僕を』論(1)――枠組みと混交性  210
      六 『君が僕を』論(2)――解けない問いをめぐって  212
      七 『君が僕を』論(3)――構造の解明と解明不可能な謎  215
      八 『君が僕を』論(4)――二つの終わり  218
      九 おわりに 220

    ミステリとライトノベル――谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズにおける物語世界の構成〔横濱雄二〕 223
      一 物語世界の表象  223
      二 物語世界の動態  228
      三 物語世界の操作可能性  233
      四 物語世界の駆動力  238
      五 物語世界の複数性  241
      六 物語世界の代補と代表  245

    III サブカルチャーを理解するための新たな枠組み
    物語としてのゲーム/テレプレゼンスとしてのゲーム―― 『バイオハザード』を例として〔榊 祐一〕 253
      一 はじめに  253
      二 理論的考察  255
      三 『バイオハザード』の分析(1)――物語の水準に注目して  262
      四 『バイオハザード』の分析(2)――プレイ経験に関わる水準に注目して  268
      五 おわりに  278

    サブカルチャー批評の現在と未来――三・一一以後のサブカルチャー批評は何を表象すべきなのか〔柳瀬善治〕 287
      一 はじめに  287
      二 原爆とメディア――三島・ハイデガー・データベース  288
      三 サブカルチャー批評における歴史的反復の問題  291
      四 「資本主義の逆説的な帰結」としての「(偽の)崇高」  295
      五 他者に開かれた「崇高」あるいは「絶対的退屈」からの開口部  300
      六 「スーパーフラット」を読み替える――「襞」=「空隙」としてのフラット  304
      七 「平滑空間」としてのサブカルチャーあるいは「死者」と「未生の分子」をめぐる〈線〉  311
      八 おわりに 「倫理的な形象の出現」と「接合可能性」―― 三・一一以後のサブカルチャーは何を表象すべきか  315

    あとがき――戦前期の大衆文学論に触れながら(二〇一五年二月二四日 押野武志) [319-326]
    初出一覧 [327-328]
    執筆者紹介 [329-332]
    人名索引 [1-7]

  • ・宮沢賢治を端とするセカイ系の系譜
    ・ドライビングゲーム:首都高バトルとグランツースモの違い

  • マニア

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著者プロフィール

1965年、山形県生まれ。北海道大学教員。
専攻は日本近代文学。
著書に『童貞としての宮沢賢治』(2003年、筑摩書房)、『文学の権能』(2009年、翰林書房)、編著に『日本サブカルチャーを読む』(2015年、北海道大学出版会)、共編著に『日本探偵小説を知る』(2018年、北海道大学出版会)など。

「2022年 『交差する日台戦後サブカルチャー史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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