はじめてのキャンプ (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834009729

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、林明子さんが1984年に発表した、子どもが成長するにあたり、誰もがぶつかるであろう、初めて何かをするときの不安と、それを遥かに超える楽しさを実感させてくれる、全ての見開きのページに絵が描かれていることにも、心強い親しみやすさを感じられた作品です。


     主人公「なほちゃん」のお友だちでもある、彼女の家の隣に住む、ともこおばさんが、大きい子どもたちにキャンプに行くことを伝える中、なほちゃんは「わたしも いく!」と、高らかに宣言するが、それに対して、「ちっちゃいこは だめ!」と、大きい子どもたちから断られてしまい、その理由は、重い荷物を持って歩けないことや、ご飯を炊く薪を集められないといった身体的なものから、すぐ泣くこと、夜暗いと怖がることといった、精神的なものまで様々であったが、これに対して、なほちゃんは、全て大丈夫だと強い意思を示すことで、ともこおばさんから何とか許可をもらう。

     私としては、皆が駄目と言う気持ちも分からないではなく、キャンプには自然を相手にする部分もあることから、思わぬ危険が無いとも限らず、おそらく、そこを心配しているからだとも感じられたのだが、その後の展開では、その駄目な部分を言った大きい子どもたちが、それぞれの場面でちゃんとフォローしており、こうした点には、安易に挑戦させてみるだけではなく、なほちゃんのことを考えて動いている子どもたちの姿に、初めて何かをしようとする時の、子どもへの寄り添い方があるようにも思われました。

     誰もが経験する「ちっちゃいこ」の時期には、できないことがあっても当たり前だし、それは何歳を境にとかではなく、大きい子にもできないことはあって当たり前だと思う、それこそが、子どもそれぞれの個性になるからです。

     であるのならば、大切なことは、できないことがあっても、その子の良いところを、ちゃんと本人に分かるかたちで認めてあげること。

     そして、初めてできたことには、思い切りほめてあげることだと感じ、本書は、そうした大切さを、改めて私に教えてくれました。


     そんな初めての不安感に優しく寄り添った本書は、物語も素敵で、最初は、白を背景に黒ペンで描いた絵に橙色だけを塗った、2色構成で進行するが、やがて夕暮れのスイカを食べる場面を境に、その法則が破られた点に、橙色は昼間(あるいは日常)を表していたことに気付きます。

     そして、その後の、空の色が青から藍へと少しずつ濃くなっていく、夜への場面転換は、まるでその場にいるような雰囲気満点の演出に上手さを感じ、やがて人の姿が影に変わるほどの真っ暗な外の様子には、子どもたちの日常ではあまり見ることのない、自然の持つ、畏怖とも近いような厳かな静謐さを読み手にも実感させる、光と影の描写も美しい、キャンプならではの特別な体験を、絵本からでも十分に感じることができました。

     また、そこでは子どもの想像力が生み出した不思議な要素もありながら、それを乗り越えた、なほちゃんの姿には、思わずよく頑張ったと称えたくなるような微笑ましさがあり、そんな雰囲気に安心したのか、再び橙色のみの色合いに戻った翌朝には、一回りも二回りも成長した、なほちゃんの堂々とした姿があって、思えば、そうした前触れは見返しの絵で既に表していたのだなということも分かり(なぜ、煙は、なほちゃんを追いかけるのでしょう?)、こうして子どもは成長してゆくのだなと、静かな感動を覚えながら、キャンプの楽しさも同時に味わえる、素敵な作品です。

  • 読んだあとキャンプ、やってみたくなり、実現しました。
    実際やってみたら…キャンプ場が夜遅くまで大騒ぎで、寝不足に…(^_^;)

  • 大きい子限定でキャンプへ行く予定のところ、ちっちゃい子のなほちゃんも強烈なアピールで参加することに。
    ちっちゃい子でも頑張れることと成長していることを証明する条件で飛び込みましたが、楽しいことだけでなく大変な作業の連続です。
    そして夜のトイレは一人でできるのでしょうか…怖いですよね。
    キャンプを題材にした成長物語です。

  • 「ちっちゃい子」から「大きい子」への道を自分で一歩一歩進む女の子のお話。
    大人の「ともこおばさん」も、ちっちゃい なほ と”お友達”だったり、子どもたちのキャンプ引率をしたり、きちんと子供と同等で見守ったり自立の手助けしている感じが良いですね。
     対象:低学年
     読み聞かせる時間:10分弱



    なほちゃんはちっちゃいおんなのこです。
    おとなりのともこおばさんが、おおきい子たちをキャンプに連れてゆくと聞いたなほちゃんは、「わたしもいく!」と言います。
    でも大きい子たちは「ちっちゃい子はだめ」っていいます。「だってちっちゃい子は、重い荷物を持てないし、すぐ泣くし、暗いところを怖がるし、ひとりでおしっこにいけないからだめ」
    だからなほちゃんは「わたし、重い荷物持って歩けるし、絶対泣かないし、暗くなっても怖がらないし、よる一人でおしっこに行ける!」と言いました。
    ともこおばさんは「じゃあなほちゃんも連れていきますよ」って言ってくれたんです。
    キャンプでは、荷物も多いし、川に落ちちゃうし、夜は真っ暗です。
    でもなほちゃんは重くても怖くてもがんばったんです。夜にはたった一人で流れ星をみました。
    だから朝になって自信を持って言えました。「わたし、おおきいこのように、ちゃんとキャンプできたよ!」

  • こどもも聞き入っていました。
    なんたって、絵がかわいいです!
    何回かキャンプには行っていますが、森林の冒険に夢中な年頃です。
    こどもたちだけで協力しあって寝床作って、ごはん作って、ってやったことないよな…と思いました。
    読み終わってから「この子たち何歳なんだろう…」とつぶやいていました笑
    お?と思った1冊です!

  • とにかく絵が素敵。
    シンプルなイラストと、主に黄色を基調としたシンプルな色遣いがとてもかわいい。暗闇の中で火をつけるシーンなど、ドキッとするような一瞬をとらえている。
    星空を見たら白い恋人のパッケージを思い出した!

  • なほちゃんがやりたいと思ったことを甘えずに責任を持ってやりきる。そんな成長の姿が微笑ましい。
    大きい子に負けじと大きな枝を引きずってくる必死なところは思わず笑ってしまいます。
    やっぱり子どもが成長するときって、やりたくて自発的に動いた時なのかな、としみじみ思いました。
    夜中にトイレに行きたいというなほちゃんを、敢えて寝たふりでヘルプをしないおばさん。自分でやってみる、挑戦するという経験を奪わずできたことをしっかり褒める。素晴らしい対応です。
    絵も可愛らしく、かわいいなほちゃんを応援したくなる絵本です。

  • 「絵本もいいけど、そろそろ長めのお話を読める(聞ける)ようになってほしいな~」と思った時に。
    はじめての児童書にぴったりの1冊。

    小さい子にとってのドキドキや憧れや悔しさ、恐怖心や達成感が親しみやすく丁寧に描かれているので、4歳くらいでも集中してしっかり聞くことができる。

    文章が易しく、テンポ感が大変良いので、ページ数のわりに読み聞かせの負担感が少ない。

  • 絵本から物語の本に移行する時期の低学年にちょうどいいです。ドキドキして、ホッとして、達成感もあり、こういう本と沢山であって欲しいです。

  • 本を歌にしてよく歌ってた。今でも歌える。

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著者プロフィール

林明子

「2013年 『文庫版 魔女の宅急便 全6冊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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