- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834082388
感想・レビュー・書評
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生と死と再生と成長と永遠と一瞬のお話。
ところで、著者紹介の「1977年テヘラン生まれ」って、めっちゃクール。ものもらいに憧れるこっこのように、惹かれる一文。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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小さな温泉街に住む小学五年生の「ぼく」は、子どもと大人の狭間にいた。ぼくは、猛スピードで「大人」になっていく女子たちが恐ろしかった。そして、否応なしに変わっていく自分の身体に抗おうとしていた。そんなとき、コズエがやってきたのだ。コズエはとても変だけれど、とてもきれいで、何かになろうとしていなくて、そのままできちんと足りている、そんな感じがした。そして、コズエは「まく」ことが大好きだった。小石、木の実、ホースから流れ出る水、なんだってまきちらした。そして彼女には、秘密があった。彼女の口からその秘密が語られるとき、私たちは思いもかけない大きな優しさに包まれる。信じること、与えること、受け入れること、変わっていくこと、そして死ぬこと……。この世界が、そしてそこで生きる人たちが、きっとずっと愛おしくなる。
西加奈子、直木賞受賞後初の書き下ろし。究極ボーイ・ミーツ・ガールにして、誰しもに訪れる「奇跡」の物語。
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大人になることに嫌悪感を抱き、女子からはもちろん男子からも距離を置きたがる慧が、「まく」ことが好きな転校生・コズエと出会うことで物語は始まる。田舎の温泉街の密度の濃い人間関係の中で成長していくことは、時に逃げられない窮屈な思いと闘うことでもあるのかもしれなくて、その思いが、一風変わったコズエを知ることで、外へ気持ちを向かわせるきっかけにもなっているような気がする。慧にとってだけではなく、ほかの人たちにとっても、コズエやそのオカアサンとの出会いは、あるべくしてあったことなのだろうと思われる。どんな人にもコズエがいてくれたら、と思わされる一冊である。 -
コジコジのような不思議でかわいくて面白くて、でも生々しくて核心的な素晴らしいファンタジー
作品でした。
ドノが話をするページでなぜだか涙が止まらなくなりました。きっとそれは私のなかにあったはずなのに忘れてしまっていた大切なことだったからだと思います。そういうものたちが本のなかに散りばめられています。
小学校の図書館の片隅におかれていてほしい。そしてそれが必要な子供に見つけてほしい。できれば沢山の子供たちに。 -
読みながら確実に慧が成長しているのを感じた。
しかもそれがちゃんと小学5年生の時の成長で、とてもリアルで懐かしかった。
久しぶりに会って話していろいろ思い出した時の感情に近い。
最近頭がモヤモヤしていたけど、原点に帰れた気がする。 -
私は人と違う、そしてついさっきまでの私とも違う。
その当然のことに初めて説明を付けてもらえた感覚。
生まれて、誰かに影響を与えてそして与えられながら生き、やがて死に、散り散りになってまた居場所を見つけるという同じことを私たちは繰り返している。
不思議な話。
あり得ないのにそんなことどうでもよくなるほどに説得力があるのはなぜなのだろう。
私はどこにでも散り散りになれる粒の集まりだと知っていればもう何も恐くない。
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萩尾望都さんの「ポーの一族」を想起した。成長して大人に近づくことは死に近づくことでもあると考える「ぼく」が、エドガーやアランのような「コズエ」と出会って、死と生、人生について考えるお話。
ちょうどこの小説を読んでいる間に叔母が亡くなった。私も色々と考えさせられた。
印象に残るお話で、西加奈子さんはやっぱりいいなと思った。 -
子どもの成長と不思議な話し。
一体感など、最期は仏教チックな哲学チックなものを感じた。 -
サクサク読める文章でした。
男の子の気持ちの変化がよく伝わります。
不思議な世界観ですが、それらを私たちの現実とシンクロする感じがありました。 -
主人公の、精神的にも身体的にも大人になりたくないっていう感覚が自分にもあったなぁって今でもあるのかもしれない(いや、もう大人か…)となりました。
序盤慧が語る集落や、学級への軽蔑した感覚が、
コズエとの出会いかかわりから、最終的には
登場人物たちがお互いの違いを受け入れ認め合う
雰囲気に変わったことに、この本の主張(コズエのもたらした影響)というか伝えたいことが詰まっていたような気がします。