ココの詩 (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834082951

作品紹介・あらすじ

人形のココは、ある日子ども部屋で金色の鍵を拾い、小さな女の子のすがたになります。春風に誘われ、初めてフィレンツェの街にでたココは、そこで出会ったやくざなネズミ「ヤス」に恋をするのでした。しかし無垢なココはヤスにだまされ、借金のカタにネコに売られて、召使いとして暮らすことになります。どうしようもなく恋い焦がれる気持ちと正義感とのあいだで揺れながら、ココは名画の贋作をめぐってネコ一味との攻防に巻き込まれていくのでした。

感想・レビュー・書評

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  •  一九八七年刊行、高楼方子さんのデビュー作。二〇一六年の復刊版を読んだ。短いあとがきに、復刊にあたっての言葉がある。絵を描かれている千葉史子(ちかこ)さんは方子さんのお姉さんだそう。
     そんな情報はどうでもいいくらい、すごい。
     
     「意味不明、ついていけない、なんてもの読まされてしまった」と思う人と、「最高、大好き、私の人生の一冊」と思う人とに分かれそうな作品だ。私はどちらかといえば後者で、今とは違う時期(例えばもうちょっと若い頃など)に読んでいたら、自分が銅鑼になって打ち鳴らされたように人生に響きまくって、「人生の一冊」として心の神棚に祀っていたかもしれない。しかしこうも思う、またそれとは違う時期(例えばもっと若い頃など)に読んでいたら、びっくりして、この人の本は合わない気がするからもう読まないでおこうと思ったかもしれない。
     人形の女の子ココがあるとき突然意思を持って部屋を抜け出し、ネズミやネコと出会って大冒険を繰り広げる物語。このまとめ方で何も間違ってはいないのだが、大冒険の内容はかなりハード。
     ヤスという切れ長の目のネズミに出会ってしまったことが全ての始まり。ディズニーアニメでいうと、『ラプンツェル』のフリン・ライダーであるとか、『ズートピア』のキツネのニックであるとか、ああいったちょいワルお兄さんが出てきて、純なヒロインとはじめは衝突しつつもいずれはハッピーエンドといった類型のお話がある。あの感じにキュンとする(かつ、ハードな展開でも大丈夫な)人は、ぜひ読んでみてほしい…。伸るか反るか、責任はとりませんけどね…。いや、こんな誘いで読んでしまった人には先に謝っとこう、ごめんなさい、全然違います。
     見どころはココとヤスの話だけではない。絵画もこの作品の重要な要素だ。ストーリーとしては善玉と悪玉が出てくるが、実はどちらも絵に対して誠実で真剣であり、善だの悪だのと世の中そんなに単純ではないと考えさせられる。と同時に方子さんの絵画への愛も感じる。
     内容面でも表現面でも最後まで全く息をつかせない、怒涛の展開に、語り口に、鬼気迫るものすら感じる、すごい本だった。



     以下、好きなところメモ。
    ・「僕たちが寝てしまったのがいけなかった」と言うモロ、翌日の明るいウエム。
    ・詩(韻文)の力!
    ・カーポとイラ楽しい。ジブリアニメの『猫の恩返し』の王様と大臣のビジュアルイメージ。
    ・ヤスがココにですます調で話すところ。
    ・「私って一体なんなんだろう」からの、「自分のしてきたことの果てが今なのだ」。
    ・おじいさんが水たっぷりの筆で風景画を滲ませるシーン。
    ・終章「日々の終わり」。何度でもきっと…どうしようもない、だって…。

    • たださん
      akikobbさん、こんにちは♪

      これが高楼さんのデビュー作なのですね、お姉さんがいることも含め、初めて知りました(^^;)

      読む時期に...
      akikobbさん、こんにちは♪

      これが高楼さんのデビュー作なのですね、お姉さんがいることも含め、初めて知りました(^^;)

      読む時期によって、合う合わないが変わるのは、それだけ伝えたい層をはっきりしていることと、高楼さんの作風の懐の広さを感じさせられまして、私も、どこかのタイミングで読みたくなりました(^o^)
      2023/12/30
    • akikobbさん
      たださん、コメントありがとうございます。

      「伝えたい層をはっきりしている」→なるほど、そうですね。読んだ実感としても、自分の中のどの部分(...
      たださん、コメントありがとうございます。

      「伝えたい層をはっきりしている」→なるほど、そうですね。読んだ実感としても、自分の中のどの部分(経験とか感情とか)が共鳴しているかがはっきりわかるという感じで、「伝えたい層」そして「響かせたい部分」へのヒット力が強い!と思います。ご感想楽しみにしております。

      今年高楼方子さんと出会えたのは大きくて、たださんからおすすめいただいたり感想を交換したりできて楽しかったです。
      来年もどうぞよろしくお願いします♪
      2023/12/30
    • たださん
      akikobbさん、お返事ありがとうございます(^^)

      なるほど。伝えたい層と共に、自分の中の、より細かい部分に共鳴し、響くのですね。
      よ...
      akikobbさん、お返事ありがとうございます(^^)

      なるほど。伝えたい層と共に、自分の中の、より細かい部分に共鳴し、響くのですね。
      よく作家によっては、デビュー作が全てなんて事も言われますが、案外、高楼さんはそうなのかも。
      なんて書いといて、その後も、独自の道をマイペースに行っているから、きっと、この方の信念は、いつまでも揺るぐ事がないのでしょうね。

      はい。私も、akikobbさんとのブクログの時間は、とても楽しかったです(*'▽'*)
      特に、高楼さんの「すてきなルーちゃん」(タイトル間違ってたら、すみません)は、akikobbさんのレビューがきっかけで知ることが出来て、こうした様々な立場の人のことを考えられるから、この人の作品が好きなんだよなあと、改めて実感することが出来ました。
      こちらこそ是非、来年もどうぞよろしくお願いいたします♪
      2023/12/30
  • どんなに流されてきたようでも、人は自らの選択の果てに今ここにいるのか。
    それとも、運命の糸車はグルグルと廻り続け、人は選ぶことも抗うこともできない結末へと進むしかないのか。
    答えなどないなかで、痛みは少女を大人にする。
    “人はね、少しずつ大きくなるというより、ある時、突然大きくなるものなのさ”

    みんな終わってしまっても、そう始まりが残っている。もう一度選ぶことができる。
    苦しみや哀しみの多い現世でも、生きないよりは生きたほうが、きっといい...。
    輪廻転生の果てに、いつか白い小さなお船にのって 知らない国へとゆーらゆら....

  • Twitterでおすすめして頂いた本。
    装丁と挿絵がとても可愛くて読む前からわくわく。

    これは本当に児童書なのか…?と途中で何度も確認した。
    児童書の登場人物(登場鼠?)らしからぬワルい男に惹かれるココに「その男はあかんってばぁ…!!!」と母親目線。
    最後の展開は一瞬固まってしまった。

    高楼方子さんの作品を読む度に、この本に子供の頃出会っていたらどう感じていたのかな、と思う。

  • いろいろと、とんでもない話だった笑。
    はるな檸檬さんの本で、この本を知り、読んでみたいと思って数年。
    ようやく手に取ったが、非常に不思議な話だった。
    あまり後味がよくなさそう、とは知っていたけど。

    つんつく先生などの絵本のたかどの作品とは異なり、けっこうダーティ。
    同じくたかどのさんの「ルチアさん」も暗めだったなあ。

    フィレンツェを舞台にしたネコとネズミの戦い。
    ココは性格が、、ちょっと、、、。
    ストーリーは、(この状況を産み出した)「犯人はヤス」の一言だけど、戦いのシーンの演出はカッコ良くて好きだな。
    ヤクザ映画のようでもあり、歴史物語のようでもあり。やくざな男にひかれた少女の悲しいすれ違い。ああ、だからその男はやめとけって言ってんじゃ~ん、という読者とモロの叫びが続くストーリー。

    エンディングにもうちょっと明るめの想像の余地を残して欲しい。双子の人間はなんだったのかな。

  • はるな檸檬さんが推薦してた作品。なんだかとてもわびしくなった思いがあります。児童文学ですが大人でもいけます。物語の最後はあしたのジョーじゃありませんが真っ白になります。

  • ずっとずっと読みたかった本をやっと読めた。童話シリーズに入っているけれど、子供よりも大人のほうが夢中になる本じゃないだろうか。愛すべきじゃない、愛するに値しないようなチンピラな相手を愛してしまうココ。ココの痛みが読む側にも伝わってきます。そして最後はえぇーー!と息を飲んでしまう。
    千葉史子さんの挿絵もとてもいいです。フィレンツェに行きたくなる。

  • 人形とネズミと猫の世界観に入り込みきれなかったのは私が大人になってしまったからなのか…
    ヤクザに恋する乙女心はリアル。贋作を巡る攻防はハラハラの展開で面白かった。が、モヤモヤが残る結末だった。人間の双子を登場させた意味合いもよく分からなかった。

  • お人形や、猫やネズミが出てくるので、最初はファンタジーなお話かなぁ。読み進めるのどうしようかなぁ。と、読んでいたらどんどんと物語に吸い込まれ最後まで一気読み。

    みなさん感想に書いているけれど、これが児童文学なのか。。
    途中から最初のほんわかした印象とがらりとかわり、とてつもない世界に連れていかれます。

    高楼さんはフィレンツェでこの物語を書いたそうだけど、まさしく何かに影響を受けて夢中で書いた作品という感じで異次元に連れていかれるような感覚でした。

  • 同作家の「時計坂の家」とはまた違う、裏切られた驚きがあった。そんなことになる?!
    またしても、これは子供の頃に読んでいたら、相当なショックを受ける展開だし、理解しきれていなかっただろうなという印象。
    でも他の作品も気になってしまう不思議笑

  • 衝撃的だった。
    これが児童書だとは。
    魅力的なキャラクターばかり。
    そして、誰も憎めない。

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著者プロフィール

高楼方子 函館市生まれ。絵本に『まあちゃんのながいかみ』(福音館書店)「つんつくせんせい」シリーズ(フレーベル館)など。幼年童話に『みどりいろのたね』(福音館書店)、低・中学年向きの作品に、『ねこが見た話』『おーばあちゃんはきらきら』(以上福音館書店)『紳士とオバケ氏』(フレーベル館)『ルゥルゥおはなしして』(岩波書店)「へんてこもり」シリーズ(偕成社)など。高学年向きの作品に『時計坂の家』『十一月の扉』『ココの詩』『緑の模様画』(以上福音館書店)『リリコは眠れない』(あかね書房)『街角には物語が.....』(偕成社)など。翻訳に『小公女』(福音館書店)、エッセイに『記憶の小瓶』(クレヨンハウス)『老嬢物語』(偕成社)がある。『いたずらおばあさん』(フレーベル館)で路傍の石幼少年文学賞、『キロコちゃんとみどりのくつ』(あかね書房)で児童福祉文化賞、『十一月の扉』『おともださにナリマ小』(フレーベル館)で産経児童出版文化賞、『わたしたちの帽子』(フレーベル館)で赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞を受賞。札幌市在住。

「2021年 『黄色い夏の日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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