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- / ISBN・EAN: 9784835442471
感想・レビュー・書評
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絵描きのおじいさん。
村の人たちや子どもたちのために絵を描きますが、殿様からの依頼は断ります。
あるとき、津波が来て、村中飲み込まれてしまいました。
それは、2011年の震災を思い出させる描写でした。
もちろん、むかしばなしなので、原発はありません。
おなはしの中では、塩害でダメになった畑に、雨が降り、土砂崩れがおきて、畑がよみがえります。
おじいさんの描いたナマズの絵が、大雨を降らせるのです。
しかし、わたしたちの現実は、3年経っても厳しいままです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
海沿いのある村に絵を描くのが好きなおじいが住んでいた。
畑も耕さずに何にもならない絵ばかり描いて、と最初は非難していた村の人々だが、次第にみんなおじいの絵が好きになり、行事のときに絵を描いてもらうことになっていった。
あるとき、その評判を聞きつけた武士が殿様の為に描いてくれと言うが、おじいはそういうのはもっと名のある絵師に描いてもらえと言い、相手にしない。
武士は怒って帰って行ってしまった。
おじいは村娘が結婚式をあげることになり、両家に絵を描いてやる。
地震が起こり、更に海の水が極端に引いた。
船のある場所もすっかり海水がなくなってしまった。
これは大きな津波が来るぞ、とみんな高台に逃げるが、畑や家は津波に押し流されてしまう。
塩を被った畑はみんな駄目になってしまった。
町から修理のために人手を集めに来た武士が、おじいをまた勧誘する。
殿様の元に来れば、今よりずっといいものが食べられるぞ、と。
しかし、おじいは相手にしなかった。
津波で何もかもやられて、沈んでいる子供たちのために、紙がないなら褌に描くぞ、と褌に大きなナマズの絵を描く。
子供たちが褌の凧を揚げると、ナマズは空高く昇り、雨雲を呼び寄せる。
ナマズが雨を降らせると、山の土が崩れて流れてきた。
塩にやられた畑に泥が入り込み、畑はもとの力を取り戻す。
それからもおじいは、ずっと村で絵を描き続けたそうだ。
地震、津波の描写あり。
ずっと前の作品だけれど、東日本大震災のあとに読むとただの絵本としては片づけられない。
褌に描いたナマズが雨を呼ぶ。
昔話のよう。
死んだ畑でもこうすれば生き返ることが出来るのか。
復興とまでは言わなくても、希望が持てる。
ナマズは地震を呼ぶイメージがあるけれど、ここでは雨、泥水と繋がっている。