- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784837936077
作品紹介・あらすじ
死人が見える目を持つ黄泉がえりの誠二は、生きている実感を持てず、日々を怠惰に過ごしていた。だが深夜の妓楼で美青年を従えた妖艶で高慢な少女、紅羽と出会う。どこへでも出入りできる不思議な鍵を持ち、化け物姫の異名をとる紅羽。「わらわの下僕となって働け」と、街で起こっている殺人事件の解明を手伝うよう命じられ、自らの力を疎ましく思っている誠二は拒絶するが…。
感想・レビュー・書評
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渡瀬桂子さんの別名義。幼い頃に死の淵から生き返ったためか、死者を見ることのできる誠二。「誠のない男」としてぶらぶらと毎日を過ごしていた。しかし、不思議な美少女と出会い、死んだかつての女の死の理由をつきとめようと決意する。おー、面白かった!化物がばっこする江戸で、不思議な能力を持ちつつも、人間らしい感情を持つ少女と青年が出会い、お互いを認め合う物語でした。「封殺鬼」が好きな人も面白いのではないかと思います。続きでてほしいなあ。
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片目を隠し、今日も妓楼で遊び続ける。
そんな妓楼の中で、妙な少女と出会う。
女王様w と言いたくなるほどの
高笑いが似合う少女です。
そんな少女が解決せねばならないのが
四肢がばらばらになった殺人事件。
一体なぜ? とか言っていたら、妙な少年も登場。
うっかり解決してるのに気がつかないほど
どうなる!? という展開が。
しかも解決しても、ある意味どきどき展開。
案外平和的に、あちらのお話し合いも済みました。
きちんと話してみないと人は分からない、というのが
ものすごく分かりやすく浮き彫りでした。 -
ひゃー面白かったくれはちゃん可愛い。誠二さんは実家の力でくれはちゃんにお洋服を貢ぐべき。
後書きにあったf-Clan文庫の「ラブよりロマンを寄越せ(大意)」ってコンセプトは大変同意する。 -
どんな場所へも行ける鍵を持ち生まれた妓楼の鍵姫・紅羽
人形の手足を持ち紅羽に従う・十夜
死人視の左目を持つ・誠二
怪異なる事件をお上に頼まれ解決する紅羽(と十夜)を手伝うことになった誠二 -
公共図書館で、なんとなく借りてみた作品。
江戸時代が続き、16代将軍が治める日本。
吉原に入り浸る、死人が視える青年と、「どこでもドア」ならぬ「どこでも鍵」を持つ、正体不明の少女が、吉原で起こる猟奇殺人事件を解決しながら、自分の存在価値を探す物語。
よくある王道設定だけど、思ったより、いい話で面白かった。一気読み。
続きが気になるので、読み続けよう。 -
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2012/04/17:2巻から先に読んでしまいましたが、このころの誠二は荒んでいたのですね。
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甘くなく、エロくもない遊郭怪異。
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“あの家の中で、誠二は人間ではいられない。誰も、誠二を人間扱いしない。
『守り神って呼ばれながら、化け物扱いされて生きるのって——どんな気分?』
先程紅羽に投げかけた問いを思い出す。
尋ねるまでもないことだった。それがどんな気分かなんて、誰よりこの自分が知っている。
だが、紅羽と誠二は違う。
(俺は半端だ。どこまでも......半端だ)
それでも守り神として吉原のために働いている紅羽とは、絶対的に異なる。
自分は、守り神にも化け者にもなりたくないのだ。
なのに、己自身、胸の底で自分を人と思えないでいるから——だから何をしても、人を真似ているだけのような気分になる。
誠がないと言われるのは、そのせいだ。
何もかもが、真似事でまがいものだから。
(じゃあ、俺は......どうすれば、いい?)
胸の中に、泣き出したいほどやるせない気持ちがあふれる。でも、涙は出ない。
思いきり、喉が破れるくらい叫びたいのに、声も出ない。
(どうしたら、俺は、ちゃんと生きられる?)
出口も答えも得られぬまま、ただひたすらに想いばかりあふれ返る。
それでも生きたいと願うこの心は、一体どこまで浅ましいのだろう。”
個人的に好み。
鍵姫は何となくヴィクトリカを思い出しつつ。
死人視のキャラがとても好き。
続編欲しいなぁ。
“「こ、こらっ、放せ、下ろせっ、この下僕!頭がおかしくなったのではないか!?」
「だって姫さんすげえんだもん、あははは、姫さん最高!」
何かの箍がはずれたかのように大笑いしながら、誠二はなおも紅羽を振り回した。
心の中がひどく軽くなったような気分だった。腹の底で常に渦巻いていた重苦しいものが、全部どこかへ行ってしまったように感じる。今ならきっと空だって飛べる。
すげえすげえと叫びながら紅羽を振り回す誠二に、十夜がどうしたものかという顔で手を出しかねている。紅羽はもはや息もできないという顔で、されるがままになっていた。
と、あっけなく誠二に限界がきて目眩を起こし、紅羽ごと地面に尻餅をついた。
「......うわ、ものすげえ地面が回る......視界が回る......くらくらする」
「当たり前じゃ!怪我をして貧血な上に、あんなくるくる回る奴があるか!」
紅羽ががばと身を起こし、誠二を怒鳴りつけた。誠二はぐらぐらする頭を手で支え、がっくりとうつむく。動けるようになるまで、ちょっと時間がかかる気がする。
「まったく、そなたときたら!いつか深刻な怪我を負っても全く気づかずに、そのまま死ぬのではないかえ!?この馬鹿者めが!」
「うーん、確かに痛覚鈍いのも困りものかもね......結構便利なんだけどねえ、喧嘩のときは」
「ええい、しばらくそこで休んでおれ」
へたり込んだまま動けずにいる誠二から離れ、紅羽が立ち上がる。
それから、ふと思い出したように、尋ねた。
「——そういえば、そなた。先程の鍵は、どうやって手に入れたのじゃ?」
「え?ああ、あれか。あれは......俺も、驚いた」
まだぐらぐらする頭を押えつつ、誠二はへらへらと笑う。
死人の記憶に触れたのなんて初めてだ。まさか物まで受け取れるとは思わなかった。
「見えるだけじゃなかったんだな......死人視って」”