- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784838715633
感想・レビュー・書評
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先に読んだ『99%失敗しない「ゴルゴ13」流プロフェッショナルの流儀』は、オリジナルを全く知らないまま読みましたが、こちらはオリジナルを所蔵している愛読者であるため、ワクワクしながら読みました。
「ヨーロッパを舞台にした冒険活劇スパイ・コメディ」とされる、奥深く幅も広いこの物語ができあがるまで、裏側ではどんな努力がなされているのか、とても興味があります。
著者はオリジナルと同じ青池保子氏。
きちんとした文章も書ける人だとは。リアルな声が文面から伝わってきます。
『エロイカより愛をこめて』は、ベートーベンの「エロイカ交響曲」あたりからきているのかと思いきや、007の『ロシアより愛をこめて』のもじりだと知りました。
「絵はその時その時の感性で描くものだ」と言いながらも、いつも全身像は定規で計って身長を頭長で割り、きっちり8頭身になるように描いているというその几帳面さにびっくり。
連載開始当初は12頭身だったとのこと。たしかに、以前よりもガッシリした絵になったなと思いますが、リアルに近づいたということなのでしょう。
本編でエロイカよりも人気なのがエーベルバッハ少佐。
読んだ人は「少佐が軍人なのになぜ長髪なのか?」と、必ず一度は疑問を抱きます。
作者の答えは「理由は簡単、少女漫画だからです」と、とてもシンプルでした。
当時は、登場人物の後ろ毛一本の動きにもロマンを見出す時代だったとのこと。
少女マンガたけなわの、夢見る読者たちのために、少佐が髪を切ることは禁じられたようです。
少女マンガたるべき絶対条件として、髪型にこだわりを見せる著者。
エロイカの長髪巻き毛を見るたびに、(どれだけ描く手間がかかっているんだろう)と思っていましたが、「伯爵の髪を描くのが面倒くさい時は帽子をかぶせる」という、あっさりした割り切り方も教えてくれました。
文章から、作者の頭の良さ、勘の良さが伺えます。
もちろん、軍事専門家の監修あってのストーリーですが、作家が理解できない国際情勢を描くことは不可能なので、複雑に入り組んだ各国の状況に精通していることに驚きます。
初めは、夢とロマンをいっぱいに盛り込んだストーリーでしたが、すぐにドタバタスパイコミックに転向した本編。
それが長寿作品として今もなお続いているのですから、その継続パワーに敬服するばかりです。
政治的背景も取り込まれる、内容が濃いシリーズのため、途中で読むのが途絶えてしまっていますが、制作に向けての作者のたゆまぬ努力とエネルギーを見習って、これからも後追いで読み続けていこうという気になりました。
本編ファンは一読すべきもの。さらに物語世界への愛着が増すことうけあいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の漫画は一部が小説を超えているが、その一人が青池保子。こんなに面白い漫画をどうやって描いているのだろうと思って、読んだ。面白いところは、自分で書いていて笑うらしい。そりゃ、そうだろう。本当に可笑しいんだから。
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マンガを読んでいて、どうやったらこんな話が作れるのかといつも感心していたので読んでみた。物語の作り方については期待はずれだったが、他のところが面白かった。少佐がエーベルバッハ市のパンフに載ってたり、ドイツでの反応とか。あと、青池さんのプロ意識に感服。
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復活してからの「エロイカ」は読んでない。(読もうと決心)でも「エロイカ」ファンだけでなく、仕事を持つプロの女性のエッセイとして深い内容でもありました。なんていうか「大人」だ。少女漫画家というと結構奇天烈な行状も聞こえてきたりもするけれど、マンガの書き方指南というより創作の姿勢が見えてきて、それはあくまで誠実で情熱あふれるものだというのが嬉しかったりもしました。
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少女漫画にエーベルバッハ少佐という金字塔を打ち立てた、青池保子さんが書かれた『エロイカより愛をこめて』を中心に据えたエッセイ。エロイカのお話がどう創られていくかや、自身の生い立ち、漫画家人生の道筋など色々知ることが出来る一冊。文章も読みやすく、書き下ろし(多分)イラストもある楽しい一冊でした。もう一度漫画を読みなおしたくなること請け合い。
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ロバートプラント似の 伯爵の謎が解けた
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エロイカファンなら必読だと思います。
創作に関する話から作者の子供時代の話まで多岐に渡って楽しませて貰えました。
少佐と伯爵の創作エピソードも楽しいけれど脇を固める皆様のエピソードが更に楽しかったです。仔熊のミーシャと白クマの若かりし頃に驚き、数ページ後のミスターLと部長の若かりし頃に更に度肝を抜かれました…。年月って残酷。
以前に比べて本編の発行ペースはスローですがこれからも楽しみに待ちたいです。 -
漫画家『青池保子』の独創的なスパイアクション漫画『エロイカより愛をこめて』を中心としたエッセイ。
まず、「おお!懐かしい」
あの少女マンガの中にあって異彩を放つ絵とストーリー、個性的な面々、中でも堅物の少佐(なぜか金八先生ばりの長髪)のカッコ良さ。
そう言えば、あの衝撃的な背徳感漂う一作目は、私が出会った初のBL風作品ではなかっただろうか?でもその後は、あれよあれよと言う間にスパイコメディー路線になってしまった気もしますが。
「エロイカ-」と名をうってますが、漫画全般的にかかれてました。もっと「エロイカ」の突っ込んだ話を読みたかったな。 -
小学生のころ母が大好きだった漫画が「エロイカより愛をこめて」だった。あえて漢字で漫画と書くのは、少女マンガにあるまじき女性登場率の低さ!劇画だし。 金髪碧眼のイギリス泥棒貴族(←ホモ)が華麗に画面を舞うはずが、NATOの少佐とKGBのおっさんスパイたちが絡んでハードボイルド・コメディとしてむちゃくちゃ面白くなってしまった… というお話を創作された青池保子の制作裏話と自伝である。 怪しい宗教がかったアシスタントさんが来たときの話とか石像が意思を持つような話を書いたらカッターでぶっすり手を切ったとかは、霊感がないのにホラー体験をしてしまったの、ほらっ!と少女が誇らしげに言うようでほほえましかった。 そうだ、いま書いてて思ったけど写真の彼女は大変かわいらしい。もっとセクシー美女か大女を想像していたので驚いたが、爽やかに何でも笑い飛ばしてしまいそうな雰囲気は十二頭身でかっこいい伯爵たちを描いていて少しも違和感がない。伯爵やジェイムズ君やボーナム君がロック・グループから生まれたなんて…イメージぴったり。ふふっ。私はハレルヤ・エクスプレスのころの絵が好きなので、それと重ねてます。 中学生のときマンガ家へのファンレターに添えた作品がその人の目にとまり、雑誌に短編を描いたのがプレデビューだったとか。そのマンガ家が当時すでにカリスマ作家だった水野英子。そのときは舞い上がってたいしたものが描けなかったそうだけれど、『イブの息子たち』以後の活躍を見越していたとすればさすが…天才は天才を知るってことね!