優雅なのかどうか、わからない

著者 :
  • マガジンハウス
3.54
  • (17)
  • (35)
  • (35)
  • (11)
  • (2)
本棚登録 : 298
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784838726936

作品紹介・あらすじ

Casa BRUTUS連載、待望の単行本化!

48歳にして再び独身になった主人公、匡(ただし)は、吉祥寺にある古い一軒家を老婦人に借り受け、自分好みに改装を始める。気楽な一人
暮らしは、順調に滑りだすが、かつての恋人、佳奈とばったり再会。佳奈は、父親とふたりで同じ町に住んでいた……。
「気ままな一人暮らし。うらやましいかぎりだなあ。これを優雅と言わずして、なんと言う」。まわりにそう言われることに違和感を覚えつつ、佳奈との関係を取り戻したいと願う匡だが、彼女の父親は認知症となり、いつしかその介護に巻き込まれていく。自分の家と行ったり来たりの生活は、さらに思わぬ展開となり、どう暮らしたいのか、誰と生きたいのかの選択を否応なく迫ってくる---。
かつて妻や息子と暮らした代々木のマンション、一人になって借り受けた、井の頭公園に接した古い一軒家。吹き抜け、窓、灯り、テラス、暖炉、キッチン……随所にあふれる細かい家の描写が、物語に柔らかな深みを与えている。

流れるような美しい文体で描かれる、松家仁之の、新しい小説世界!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 松家さんの作品の三作目。
    これまでの作品の舞台が軽井沢、北海道ときていよいよ東京。
    舞台が東京に移っても今までの松家作品に共通する静謐さや美しい自然の描写などは変わることはない。
    武蔵野の空気に包まれて心地良い気分にさせられる。

    ただ、今回はちょっと主人公のこだわりが鼻についたかな。
    職業が編集者ということもあり作者自身が投影されているのかななどとうがった見方をしてしまったせいかもしれないけれど。
    「優雅なのかどうか、わからない」じゃなくて、完全に優雅です(笑)
    庶民の私には理解できない北欧家具が冒頭からてんこ盛りで、ちょっと引いた。

    それはさておき、この物語は中年男性の幻想と言う気がしてならない。
    一度別れた不倫相手の、しかもまだ30代の女性が50歳間近の男性とやり直そうなんて思うだろうか。
    いやー、ないでしょ。
    いくらお金持ってて優雅でインテリでも、ないでしょ。
    自分から別れを切り出したんだし。

    まあ、悪くはないです。
    松家さんにしか描けない空気を堪能できますから。
    猫のふみと家主の老婦人はなんとも可愛い。
    ただデビュー作から一つづつ星を下げてる。
    次作に期待かな・・・。

  • 吉祥寺が舞台!2人が行ったお店はここかしら、とか、2人が歩いた場所はあそこかしらと思いを巡らせながら一気読み。
    古い一軒家を少しずつリノベーションしていくところがとても素敵♪

    でも、どうしてこの装丁なのでしょう。火山のふもとでの装丁は素敵だったのに…。この表紙だけが残念。

  • 出版社に勤める匡は、離婚し井の頭公園近くの古民家に一人住まいを始めた。米国に住む息子と同居することになった女主人から、外観を変えなければリフォームしても良いし、リフォーム代は実費を出す。その代わり、自分が米国から帰ることになったら出ていってほしい、という条件で住み始める。匡は、古民家を自分の好みにリフォームし始める。ちょうどその頃、以前付き合っていた(不倫していた)佳奈と再会する。佳奈は、匡の家の近くに父親と住んでいた。

    たぶん松家さんの好みのオシャレな古民家リフォーム、独り身の男性の優雅な食生活。元カノとのオシャレな関係。佳奈の父親の介護という件はあるものの、どう考えてもこれは「優雅」でしょう。そこを楽しむ小説なのだと思う。

  • 離婚をした。から始まる文章、妻の攻撃性をさりげなく強調していく感じ、その上で「そうは言っても、そもそもの非はこちらにあるのだ」ときて、ああ~不倫ね、不倫した側の人ってこういう話し方するよなあと白けた気分で読み始めた。……はずなのに、文章があまりに心地よいので引き込まれてしまう。
    古民家の改装は素直に素敵でうらやましいなあと感じるし、日々のご飯は美味しそうで、猫や鳥たちとのやり取りも楽しく、そういう日々のいろどりが過不足なく、坦々とつづられていく。作中の女性は佇まいや所作が浮かんでくるようで、お話の中で落ち着いた光を放っており魅力的だ。

    冷静に考えれば、しょうもない不倫男である主人公の反省のかけらもなく流されるままいい加減な態度は鼻につくものだし、井之頭公園周りに住んで(最後に土地買ってるけどあの辺りをさっと買えるなんてすごすぎる…)、買い物はアトレとデパ地下、家具道楽なんて完全に言い訳のしようもなく貴族で優雅なんだけど、そういう嫌らしい部分や男のアクみたいなものが文章で完全に脱臭されており脱帽。こう書くと嫌味みたいになってしまうけど、本当にすごいのだ。
    松家さんのファンになってしまったかも。別の本を読みたい。

  • 7年ほど前に読み終えて、面白かったので2回目の読了

  • 「火山のふもとで」「光の犬」がすごく好きで、以来少しずつ読んでいる作家さん。

    40代後半での離婚。井の頭公園近くの古い一軒家を借り受け、思い通りに手を加えていく主人公。
    インテリアを初め、物へのこだわりが半端じゃなく、まあ裕福なのねと少々鼻白む。それでいて「優雅なのかどうか、わからない」って、十分優雅なんですけど。

    それでも、松家さんの文章は心地よくてずっと読んでいたくなる。家の貸主の老女・園田さんやかつての不倫相手・佳奈、離婚した妻、アメリカ留学中の息子、そして家に居付くキジトラの猫・ふみまで、登場人物(猫)全てが生き方に潔さがあって清々しい。
    結局何ということもなく終わるんだけど、人生の行く末をしみじみ考えてしまうような作品でした。
    このくらいの歳になると佳奈の選択はすごく理解できて、一緒に住むことだけが幸せの形じゃないんだよね。優雅に息抜きできる場所が家じゃないところにあるって贅沢だな〜。

  •  著者作品3冊目。著者としても3作目の作品。
     いい感じに硬さもこなれた感じで、物語の進み方は滑らかだが、可もなく不可もなくと言ったところか。良作なのかどうか、わからない(笑)
     まぁ、3冊目に本作で、良かったかな。

     連載の媒体が『Casa BRUTUS』ということで、著者お得意の暮らしにまつわるオシャレな家具、リノベのあれこれといった話が出てきて、それはそれで興味深い。

     執筆当時の著者自身より若い48歳、独身男性を主人公に、(一般人から見れば)優雅と思える暮らしぶりを、少し距離をおいて描いている感じで、境遇は著者に近いものの(出版業界勤務)、生々しくない。敢えての距離感だろう。

     その主人公が離婚を機に、代々木のマンションを引き払い吉祥寺に移り住む。なんとなく自分の半生と重なり他人事とは思えない(苦笑)。
     そして古民家を借り受け、自分の好みに改装を始めるという、いかにも『Casa BRUTUS』な内容。媒体の読者を意識した筋立ても必要だろう。
     その後、かつての恋人との再会、その父親の介護問題、遠くアメリカに暮らす息子の独立の問題、そして改装した古民家の行方・・・。

     吉祥寺というわが町の見慣れた風景、訪れるお店の既視感などが柔らかな筆致と相まって、優雅な読書のひと時を満たしてはくれた。

     ただし、佳き作品なのかどうか、わからない(笑)

  • 前に井の頭公園の近くに住んでいたこともあり、映画のように映像が浮かび上がってきたわたしはラッキー!
    松家さんの作品は3作目ですが、わたしの中での評価はこんな感じです。
    火山のふもとで>優雅なのかどうか、わからない>沈むフランシス

  • ま、普通に優雅ですよね。このタイトルじゃない方がこういう「素敵な暮らし」で非日常を楽しみたい自分のような庶民には却ってよかったかも。そして離婚と浮気相手とのどうこうは申し訳ないがザ・ミッドライフクライシス(医学的には疑問符つくらしいけど)って感じでかなり全力でどうでもようござんした。

  • お洒落な雑誌の写真見たいなお話。言ってみれば現実感がなく、元妻との離婚理由や葛藤もなく、結局不倫相手と寂しいからヨリを戻すだけの話に見える。家についてたくさん書いているのに、家の匂いがしてこない。48歳までどうやって生きてきた?息子、元妻はこの人の「なにか」にならなかったのか?「介護」も現実離れしていて、優雅が物事の美しい面だけみることなら、優雅というんだろう、と、優雅じゃない自分はそう思う。

全44件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年生。大学卒業後、新潮社に勤務し、海外文学シリーズの新潮クレスト・ブックス、季刊誌「考える人」を創刊。2012年、長編『火山のふもとで』で小説家としてデビュー、同作で読売文学賞受賞。第二作は北海道を舞台にした『沈むフランシス』。本書が小説第三作になる。


「2014年 『優雅なのかどうか、わからない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松家仁之の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×