- Amazon.co.jp ・本 (56ページ)
- / ISBN・EAN: 9784845634781
感想・レビュー・書評
-
『山月記』は、私にとって大切な物語の1つだ。
この本は、中島敦の作品というより、ねこ助さんの作品と割り切って手に取るべきなのかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中国は唐の時代、官吏の身分に満足できず、詩人として身を立てようとして、妻子をおいて山中に消えた<隴西の李微(ロウサイのリチョウ)>。 自身の数奇な運命を友人の<袁惨(エンサン)>に語った『詩人に成りそこなって、虎になった哀れな男』の説話は、 昭和17年発表された中島敦(1909-1942)の作品です。李徴の 切ない思いが漢詩に詠まれており、その意味する寂寥感の深さに打ちのめされてしまいそうな作品でした。
-
その声は、我が友、李徴子ではないか。
学生時代に教科書で読んだ物語。
絵柄は美しいけれど私のイメージする2人ではなかったかな。
自尊心と羞恥心が邪魔して行動に移せないということはあるかもしれない。自分を高めるためには誰かと接しないといけないなと改めて。 -
図書館で見つけて、表紙に惹かれて借りてみたら、学校の教科書に載っていた話でした。
大人になった今、久しぶりに読みました。昔読んだ時よりも今のほうが、虎になってしまった李徴の気持ちがよく分かりました。
やはり教科書に乗る作品というのは、名作なのだなとしみじみと思いました。 -
「その声は、我が友、李徴子ではないか?」
高校の現代文の授業で読んで以来。言い回しや表現が小難しかったけど、書かれていることにハッとさせられたのを覚えているし、今でも折に触れて戒めのように思い出すことがある。
そして当時あやふやだった部分も、時を経て人生観が熟し(言い換えれば"老い"かもしれない)、さらに深く読むことができた気がする。
「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」。己の才能を誇りながらも誰より傷つくことを恐れ、ただ驕り高ぶって刻苦を厭い、努力を放棄してきた李徴の無念と後悔。
李徴を虎の姿に変えてしまったものの正体が手に取るように分かるから、刺されるような鋭い痛みを覚える。
旧友の袁傪に、慟哭の咆哮を聞かせる最後の場面が、物悲しくも力強くて沁み入る。私も虎になって月に向かって咆えたいよ。
文机いっぱいに寝そべる豪然たる虎のイラストがとっても素敵で、ページをめくる手が止まりしばらく陶然とした。 -
イラストの美麗さだけでなく、それ以外の文字色や背景色まで合わせて山月記の、ほの暗く切なく愛しい世界観が詰め込まれた一冊でした。カバー裏のイラストも必見。
-
袁傪は旅の途中、旧友の李徴と再会した。
たが、美少年だった李徴は変わり果てた姿になっていた。
粗筋だけは昔から知っていた作品。ねこ助さんの挿絵が美麗なのも手伝いするする読めた。
李徴が人間性を失っていく恐怖や詩人として詩を残したい想いを残した妻子の生活より優先したことに対する自嘲が哀しかった。 -
乙女の本棚シリーズ、私に取っての2冊目。
近代文学苦手な私でも国語の教科書で読んでからずっと印象に残っている山月記。
文体は難しく見えるが物語としては非常にシンプル、でも奥深い。
虎になってしまったのは心が人ざらなるものになってしまったのだろう。いやでもそれならここまでは自省し気がついたのなら人に戻ってもよかろうに、とか、妻子より自分の生きた証を優先することが本当にダメなことか?など本当色々考えさせられるのです。この作品は教科書という場に本当相応しい作品。
大人になった今でもやっぱり印象は変わらなかった。
それだけに、あと、最初に読んだ秘密の物語とイラストのコラボマッチ具合がよかった故に期待値が上がってしまったのだろう、イラストの配色や雰囲気は好ましかったものの、主人公たちをインスピレーションさせる人物がどうみても女の子だったのがいただけなかった。。。虎は良かったんだけどなぁ
2023.12.15
194 -
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
*理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取って、理由も分らずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
*一体、獣でも人間でも、もとは何か他のものだったんだろう。初めはそれを憶えているが、次第に忘れて了い、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか?
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
*人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭う怠惰とが己の凡てだったのだ。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
*時に、残月、光冷やかに、白露は地に滋く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽