- Amazon.co.jp ・本 (338ページ)
- / ISBN・EAN: 9784846002893
作品紹介・あらすじ
『竜馬がゆく』に欠落するものは何か。誤伝累積の虚像を粉砕し、正確な史料を縦横に駆使した実像を提示。司馬遼太郎、津本陽など文学作品における御都合主義を鋭くあばく。また海舟・龍馬間の真相に初めて切りこむ。
感想・レビュー・書評
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司馬遼太郎の「竜馬が行く」は、いささかかっこよすぎるとは感じていたが、本書で知るその「歴史」上の事実は、やっぱり「フィクション」であったのかとため息が出る思いを持った。
「収録論考」をそのまままとめたとの本書は、読みにくい点もあるが、その論旨はよくわかる。
確かに、「司馬遼太郎」の小説で歴史に興味を持った人間は数多いし、小生もその一人なのだが、過去を教訓とし、現在につながる考察を行うときには、「フィクション」を前提とするわけにはいかない。
「坂本龍馬」というと、アンケートで「歴史上のヒーロー3人をあげよ」と聞けば、必ず上位に出てくる人物であるが、あの小説が多くの「フィクション」を含んでいたとは・・・。
本書では「龍馬自筆で龍馬の署名がある海舟宛書簡は、いまのところ一通も確認されていない」とは驚く。
「龍馬と海舟」の関係は、一般に言われていた「師匠と弟子」の普通の関係とは違っていたのだろうか。
本書を読むと、「勝海舟」という人物にもますます興味をもつ。
その後、日清戦争にも反対の姿勢を示すが、勝海舟と龍馬の生き様は「日本近代の本質にかかわりのある深刻な問題」であるとする、著者の見解に賛同するものである。
本書は、徹底して司馬遼太郎のフィクションを暴いている。
それは、冷静な歴史学的視点ともいえるものなのだが、ここまで批判を積み重ねなければ、司馬遼太郎史観を否定できないほど司馬史観は世の中に重きを成しているということなのだろう。
本書は、「歴史」を「読みもの」から「学問」に引き上げるための必要な視点を得ることができる本であると思う。
ただ、日本人が持った数少ないヒーローを失うことはちょっと残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示