文字の食卓

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784860112479

感想・レビュー・書評

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  • 絵を見るのと同じように、日常に溶け込む書体を目で味わう。文章と書体の記憶が強烈に分かちがたく結びついている著者が、書体ごとの思い出と独自の偏見を語るエッセイ。


    「絶対フォント感」という言葉は知ってたけどここまでの人がいるんだな。「文字を情報じゃなく物質として見る」というフレーズがこの本をよく表している。フォントの標本箱だ。
    本が絶滅するとか言われて久しいが、活字や写植が物理的にそれを"組む"人に結びついていたという身体感覚は私の世代では既に失われている。菊池信義とか杉浦康平みたいなブックデザイナーが作業を始めると部屋はカッターで切った紙屑だらけになったと読んだことはあるけれど、書体を操ること自体が特殊能力だった時代、という過去の話としてしかイメージできない。
    正木さんのフォント感は仕事で培ったものではなく天性で、幼いころから本ごとのフォントづかいが強烈に記憶に焼き付いているらしい。カメラ記憶の書体特化版みたいなことだろうか。もしかして可読性がフォントに大きく左右されるタイプの人も、逆手に取ればこういう能力が身につくのかな。それにしても改めて見るとリュウミンって長文に向かなくないか。
    正木さんがフォントを語る様子はブラッドベリの『たんぽぽのお酒』にでてくる〈風の壜詰〉を思いださせる。この本は標本箱なのだがそれぞれのフォントは綺麗にピン留めされた剥製ではなく、正木さんが戸棚から思い出を封じ込めた壜をだしてきてくれて、蓋が開かれるとその空気ごと目の前に広がる。タイトルに「食卓」と付き、フォントが「チューインガムの文字」「炊きたてごはんの文字」と食べものに喩えられているように、正木さんにとっては文字のかたちが体感と固く結びついているのだ。この語り口がとても心地よい。

  • (図書館員のつぶやき)
    この本きっと女子がすき!シンプルすぎるくらいの表紙に本文の文字。でもでも、目次です→ビスケットの文字・ゼリーの文字・スープ、おべんとう、アイスクリーム、ヨーグルトの文字(ほんの一部よ!)なにこれと思うでしょ、でもね、きっとあなたも私も読んだことのある文字に出会えると思います。没頭しているときの一息に何気なく開いたページに癒しの風~♪夏のお友に読んでみらんね(読んでみませんか)

  • わかりみがすごいなコレ…。
    精興社書体とかめっちゃ幼少時の読書時代思い出してわくわくするもんな…タイポスめっちゃかわいい…日活明朝体の爽やかさ…宇多田ヒカルの秀英細明朝体わかる…艶かなのマサルさん面白懐かしい…。
    全ての乱読者必読、いや必見。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB13935655

  • 写植の書体について、筆者の思い入れがたっぷりつまった読み物。
    それにしても、子どもの頃に読んだ本の文字について、書体毎のささいな違いなど、よくおぼえているものだ。

  • 作者とイメージする内容が違いすぎ、ピンとこない内容…。

  • 作者の正木さんは、わたしより少し年上なくらいで、同年代と言えなくもないので、読んでいる本や雑誌とか、似ているものもあるけれど、内容はともかく「フォント」に着目したことはなかったので、同じものを見たり読んだりしていてもどれほど目に入っていない情報があるのかと思い知らされた。
    文字を見て、「瑞々しい」とか、思ったこともなかった。
    だけど、装丁とかも全て含めて、「本」なのだなあとも思った。
    そう考えると、電子書籍ってのっぺらぼうみたいだ。

  • デザイナーという職業柄、タイポグラフィに詳しくなったがゆえに、ルールだ歴史だと妙に堅苦しくなって「文字愛」がすっかりなくなっていたところ、この本で著者のさまざまな書体に対するマニアックながらも超個人的な思いが語られているのに触れて、もっと自由に文字を愛してもいいんだということを思い出すことができました。ありがとうございました。

  • ひたすら文字(というかフォント?)について語り尽くしている本。細かいことはよく分からないしそこが論点ではないなと思い読み飛ばしましたが、とてもユニークな視点で文字について著者の思いが綴られています。それでいてぶっ飛んだ感がないのは、多分本を読みなれている人なら一度は目にした書体であり、懐かしさとともに共感することが多いからでしょう。しかしよくまあこんなにピンとくる表現を見つけたものです。言われてみれば確かに・・・となるものも多くて妙に納得してしまう。書体への愛、ですかね?

  • マンガにホラー書体が使われ始めたのはいつ? 村上春樹が、堀江敏幸が紡ぐ文章にあうのはどんな書体? 本書では「言葉はぴったりの書体との組み合せで読んだときひときわ輝く」と言う著者が選ぶ〈滋味豊かな〉書体×文章の名組み合せを紹介します。小説、エッセイ、マンガ、「JJ」「Number」などの雑誌、宇多田ヒカルの歌詞カードに化粧品のパッケージ、教科書。デジタルフォントではない、ちょっと前まで日本で使われていた「写植書体」を料理の献立に見立て、愛情たっぷりに語ります。本と言葉を味わうすべての活字中毒者におススメです。

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著者プロフィール

正木香子(まさき・きょうこ)
1981年生まれ、福岡県出身。文筆家。「文字の食卓」主宰。早稲田大学第一文学部卒業。幼いころから活字や写植の書体に魅せられ、〈滋味豊かな書体〉をテーマに各紙誌エッセイを発表している。著書に『文字の食卓』(本の雑誌社)、『本を読む人のための書体入門』(星海社新書)、『文字と楽園 精興社書体であじわう現代文学』(本の雑誌社)など。

「2020年 『本のリストの本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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