戦後60年

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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861820410

作品紹介・あらすじ

1945‐2005、日本人はどう生きてきたのか。政治、社会、文化、風俗の動きを総覧し、われわれの「戦後」を再考する。トピックスで読む日本の60年。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の歴史から見えてくる世界、それが新興国の未来でもある。

    公教育でなぜか触れられる機会がほとんどない、戦後の日本史。
    でも日本が海外の国からなぜあそこまで評価されているか、ご存知でしょうか?
    それは戦後焼け野原で何もない状態から
    奇跡の世界第2位の経済大国へと発展した歴史が我々にはあるのだ。
    そんな戦後の歴史を少しでも知ることで、将来の自分に役立てるために読んでみました。

    まず日本は戦争で負けた、それも完膚なきまでに。
    そこから人々はお互いに協力し合い、日々の食料を交換し合い
    そして工業を興し成長してきた。
    でも戦前、日本は鬼畜米英と言って憎んできた米国が
    今度は占領軍として日本に来ると、非常な歓待ぶりでもてなしたそうだ。
    やや僕は信じられないことのように思える。
    そして極東裁判で天皇の戦争責任をGHQによって回避したこのことに、
    いまだに尾を引く戦争責任があると、筆者は説明するが
    僕も納得する部分が多い。

    日本が奇跡の経済発展を遂げる最初の出来ごとが朝鮮戦争。
    これにより、米国が日本を拠点にして色々と準備をしたことがあって
    経済がにわかに活気を帯びてきた。
    この頃から日本人が豊かになれるという考えを持ち始める。
    まじめに働ければ、将来は安泰だとうことを。
    三種の神器と呼ばれる電化製品の普及率が少しずつ上がってきて、
    特にTVの世帯保有率は東京オリンピックで最高潮となった。

    でも同時に1955年から65年ころに日本はある種の転換点にあった。
    それは筆者の言葉を引用すると「自然に身につけられていた技術や知恵が
    もはや自然に獲得できなくなるような変化が起こっていた。
    中略... 大正依頼の教養主義が崩壊した」

    簡単にいえば、今までの日本人は先輩や周りの人から色々と教えていただいて、
    知恵を身につけていたのだが、この頃からいわゆるハウツー本が流行したそうだ。
    その一例が「性生活の知恵」という、性にたいしてのハウツー本だ。
    性に対してかなりオープンにもなってきている中で、
    この本が大ブームを巻き起こしたらしい。

    今でもハウツー本が売れに売れているのだが、
    人間は根本的な所を変えない限り何も変わらないんだ。
    コップの器を変えないと、中身を何度変えても変わらないのと同じように。

    僕は戦後60年で最も興味のあるのが、1955年から80年代くらいだ。
    この時代に日本人が何を考えて生活をしていたのか、
    非常に興味がある。
    この時代に生きていた人々の思考形式が新興国で
    今や爆発的に人口が増えている中間層の行動形式にも当てはまるからだ。
    この本では「便利さよりも欲望が、強く人を動かす」と書いているように、
    便利なことよりもあれがほしいという欲望が購買意欲に変わる。
    今の日本人には考えられないけれど、
    1960年代を生きてた人ならわかることだ。

    戦後の日本を再度学ぶこと、
    これがもしかしたら日本の将来のあり方を考えるきっかけにもなるでしょう。

  • その名の通り、終戦から現代までのエポックを解説する。筆者はガロへの執筆をキャリアの始まりとしており、サブカル的な傾向が強いのかもしれない。
    しかし取り上げているものの多くは、日本の戦後を語るには欠かせないものばかりと思う。以下自分が手に取って読みたかった項、筆者独自と思われる項を挙げる。

    ・安保
    ・全共闘
    ・冷戦の終了と日本

    ・宮崎事件とおたく
    ・任侠映画の衰退
    ・ガロ

    戦後処理については歴史的事実や分析だけでなく、今後のあり方についてかなり意見を述べている。中でも印象に残っているのは東京裁判のやり直しについて。戦勝国たる欧米諸国の論理ではなく、日本兵が有益な部分を残したにせよ、実質的な被害を受けたアジア諸国からの裁定を下されなければならないというもの。そうでなければ、何時まで経ってもアジア圏の日本はなく、アメリカに従う日本という位置関係を出ない。

    全体として表やグラフが多いわけでもないので、なんだが市民感覚での(特にメディアを通した)時代の様子を掴むには良い一冊と思う。

  • 現代史の本を読む上で大事なことは、著者がいつ生まれたのかということだと思う。たとえばこの著者は1941年生まれ、つまり戦争に行かなかった戦前世代であり、終戦直後のことに関しては「ものがなかった」程度の記憶しかないし、年をとれば外から時代を眺めるという感じになる。つまり記述の仕方も傍観当事者混在的→当事者的→客観的というふうに、時代によって見る角度が違ってくる。そういう意味でも現代史は要多読か。ていうか多読しないとまともなレビューが書けない;;

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著者プロフィール

1941年生まれ。評論家。著書に『現代マンガ悲歌』『魯迅』『現代文化の境界線』『映画全文』『写真家東松照明』など。

「2005年 『LEFT ALONE』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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