用兵思想史入門

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861826054

感想・レビュー・書評

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  • 主に古代ローマから第1次大戦までの用兵思想(?)を紹介した書籍(2016/12/05発行)。

    本書、比較的よく知られている電撃戦については意図して省かれているようですが、後の用兵に多大な影響を与えたと思われるアメリカ南北戦争や日露戦争についても、ほとんど触れられていないのはどうでしょう? 又、ジョン・F・C・フラーの「プラン1919」については簡単に触れる程度で、最も重要な著書とされるフラーの「F.S.R.Ⅲ」については全く紹介も説明もされていないのは...

    用兵思想史入門と云うより第2次大戦の部分を除いた戦史入門と云った感じの本で、個人的には今一つの内容でした。

  • ギリシャのファランクスから始まり、斜線陣、重点、諸兵科連合などの概念。
    歩兵、騎兵、槍兵から自動化師団に至る変遷。
    現代アメリカのドクトリンなど

  • 著者の本は以前も読んでいたため、既知の内容が多かったが、復習にもなってよかった。(そもそも同書が「イラストで学ぶ」シリーズの原型なので当たり前なのだが...)

    以下、備考
    ・【p.37】紀元前7世紀のアッシリアで「諸兵科連合部隊」、紀元前4世紀のギリシアでは、エパミノンダスによって「重点の形成」が実施
    ・【p.76】30年戦争で、「傭兵軍」から「常備軍」に変化
    ・【p.91】西欧では、8〜9世紀からの封建制の発展とともに騎士の時代に。15世紀後半頃から、長槍を持つ歩兵が活躍。17世紀後半には火器の導入で歩兵の火力がさらに上昇
    ・16世紀末頃、オランダのマウリッツが教練・教範を導入。17世紀前半には、スウェーデン王のグスタフ・アドルフが、歩兵、砲兵、騎兵を組み合わせた諸兵科連合戦術である「三兵戦術」を編み出す。
    ・【p.110】ジョミニ『戦争術概論』
    ・【p.113】外線作戦とは、味方の複数の軍が後方連絡線を外側に保持して、内側の敵軍を囲んだり挟み撃ちにしたりする位置で作戦をすることをいう。内線作戦とは、逆に味方の軍が後方連絡線を内側に保持して、外側の敵軍に対峙する状態で作戦をすることをいう。外線作戦では、敵軍をその弱点である側背を含む複数の方向から攻撃できるという利点がある一方で、味方の離れ離れになっている複数の軍を協調させて敵軍を攻撃しなければない、というむずかしさがある。これに対して内線作戦は、敵の複数の軍に囲まれる不利がある一方で、味方の軍を一か所に集中し、敵の囲みの中で短い距離を機動して分散している敵軍を各個撃破できる、という利点がある。ジョミニは「戦いの原則」に「味方の全力で敵の分力と戦うこと」を挙げており、内線作戦の優位を主張。しかし、この内線作戦の優位という考え方は、のちに大モルトケによって覆される。
    ・【p.116】クラウゼヴィッツの戦争とは政治目的を達成するための手段に過ぎないという考えは、現代において戦争を政治の統制下に置く「シビリアン・コントロール」の考え方に受け継がれてるとされる
    ・【p.130】銃火器の発達により、ナポレオン戦争から使われてきた大火力の「横隊」と突撃力の「縦隊」、それらを援護する「散兵」による「混合隊形」は時代遅れに。
    ・【p.134】19世紀頃から歩兵部隊は、小銃の改良とともに増大する火力に対して、伏せることや塹壕の構築、掩護射撃といった方法で対処
    ・【p.138】当時のプロイセン軍には、綿密な動員計画や開進計画(「開進」とは、戦役の開始に先立つ兵力の配備もしくは集中のこと。展開や展開準備に近い)の起案を所掌する機関が実質的に存在せず。大モルトケは1858年以降、参謀本部を改編する中で、鉄道に関係する動員計画の調整をする鉄道班を創設
    ・【p.149】ウェストファリア条約(1648年)からフランス革命による「国民軍」の出現まで、欧州の戦争は、限定的な政治目標を「常備軍」による限定的な武力行使で達成しようとする「官房戦争(キャビネット・ウォー)」が主流。ドイツ統一戦争における大モルトケの短期決戦は、「官房戦争」のリバイバル。しかし、第一次世界大戦に向けて再び「国民軍」による「国民戦争(国民国家戦争)」へ
    ・【p.150】プロイセン軍の参謀総長となった大モルトケは、鉄道や電信を活用することでプロイセン軍の迅速な動員と開進を実現。また、「戦場の霧」や「摩擦」に対処するため、細部の実施については下級指揮官に権限を委任する「委任戦術」という分権指揮(↔︎集権指揮)を制度化。「ドクトリン文書」をまとめた。
    ・【p.177】19世紀半ばまでは、私掠船による通商破壊戦が繰り広げられたが、私掠船の廃止等を取り決めた「パリ宣言」で廃れる。ただし、その後の戦争も、私掠船が海軍籍の艦船に変わっただけで、同様の通商破壊戦が継続
    ・【p.209】火力の増大により、散開隊形が普及
    ・【p.212】1913年、仏軍は作戦要務令の中で「仏軍はいまや古来の伝統に回帰し、今後は攻撃以外の原則はこれを排す」(!)と定め、一次大戦で採用された「第17号計画」で「徹底攻勢」に傾斜
    ・【p.228】第一次世界大戦は、開戦初頭の「運動戦」から「陣地戦」に移行。当初の「一線陣地」や「数線陣地」から「陣地帯」や「数帯陣地」に発展し、「反斜面陣地」も採用。さらに独軍は、守備隊を陣地内で柔軟に移動させる「遊動防御」も実施
    ・砲兵部隊は、「破壊射撃」だけでなく、「制圧射撃」や「移動弾幕射撃」、「対砲兵射撃」も実施
    ・歩兵部隊は、迫撃砲や歩兵砲などの支援火器を活用。歩兵の突撃単位や指揮単位は、中隊から半小隊、分隊へと細分化され、射撃単位も個人まで細分化。大戦後半の仏軍では、各半小隊に軽機関銃が配備され、下士官の指揮で柔軟に機動し突撃したりするようになった「戦闘群戦法」。
    ・独軍は「浸透戦術」を展開するも成果はあまり出ず。
    ・【p.265】世界初の本格的な歩兵と戦車の戦術「歩戦共同戦術」は、英軍の「カンブレーの戦い」
    ・【p.298】全縦深同時打撃と梯団攻撃の図
    ・【p.299】「交戦(сражение)」は会戦よりも上位の戦闘規模
    ・【p.307】1980年代、赤軍は、戦車師団や自動車化師団を基幹として、空挺師団や空中機動部隊、特殊部隊等を統合した「作戦機動部隊(Operation Maneuver Group: OMG」を編成し、縦深作戦に活用
    ・【p.318〜】訓練教義コマンド(TRADOC)のデピュイは、「アクティブ・ディフェンス」を考案。敵の主攻正面以外の味方部隊から機動力を有する部隊を引き抜き、敵の主攻正面に迅速に機動させる様式。マクナマラ時代の摩擦無視を引きずっており批判多数
    ・【p.329】「エアランド・バトル」はTRDOCによって導入されたが、海兵隊では、ごく少数の「機動戦」支持者らによって始められた活動が、最終的に海兵隊総司令官の支持を得て『ウォーファイティング』が制定。陸軍では中央集権的な組織によってドクトリンが改定されたのに対して、海兵隊は草の根活動がドクトリン改定につながった。

  • 古代から現代に至るまでの用兵思想史について、平易な言葉でわかりやすくまとまっていて、まさにタイトル通りの入門書。

  • 2017/07/01 初観測

  • 【投票者イチオシ】用兵・兵法はレアなのでぜひ入荷してください!https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001111539/?lang=0

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