- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861829987
作品紹介・あらすじ
明治維新以後150年の常識を覆す
「黒船来航」に対して、幕府は本当に弱腰だったのか? 将軍を大大名の一人としての「本来の地位」に戻すべきだと主張したアーネスト・サトウの主張は、歴史を動かしたのか?
幕末・維新に関する最重要史料でありながら一般にはほとんど知られることのなかった二書、初の現代語訳!
◎『現代語訳 墨夷応接録』の注と解説を改訂し、新たに『英国策論』を付す増補新版
◎『墨夷応接録』『英国策論』原文・「日米和親条約」「下田追加条約」・解説も収録
『墨夷応接録』(ぼくいおうせつろく)
江戸幕府とペリー艦隊との「史上初の日米交渉」について記された、日本側の唯一の議事録。嘉永7年(1854)1月19日~6月2日までの交渉内容とその間に周辺で起きた重要な出来事を、幕府全権・林復斎らの視点で詳細に記録している。
『英国策論』(えいこくさくろん)
1866(慶応2)年に英語で発表され、すぐに日本語に翻訳された明治維新に関わる第一級史料。江戸幕府を終焉に向かわせる理屈であり、倒幕派を鼓舞したにちがいないイギリスの政治方針が書かれている。
感想・レビュー・書評
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日本側が記した日米和親条約に至るまでのペリーとの交渉の記録。淡々とした議事録だが、歴史が大きく動いた場面だけに、やり取り一つ一つが興味深く、米国側の細かなリアクションの描写などは、その場に立ち会っているかの様な臨場感。何より驚くのは、首席林大学頭の筋を通した応対で、国法として譲れない部分、道理として受け入れる部分を明示するさまは、無能で弱腰な幕府という従来のイメージを覆すよう。無論、日本主観の記録という点は差し引くとしても、筆致は米国側の態度に対してもフラットで、当文書の史料的価値の一端に思えた。同録のアーネストサトウによる英国策論も一読の価値あり。20歳過ぎの一外交官の見識とはいえ、大英帝国の軍事経済力を背景にしたそれは、現体制への糾弾、新しい時代の指針として読まれたと思しい。交易がグローバル化した帝国主義時代にあって、外交の窓口が統一されない国体はもはや有り得ない、即ち幕府の正当性を否定する内容は、倒幕の理論的根拠にも繋がった。今日我々は同じ日本語でも昔の史料の読解はままならず、現代語訳で重要文書を読める意義は大きいと思う。
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