シュルレアリスム落語宣言

著者 :
  • 白夜書房
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本棚登録 : 33
感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (757ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861913662

作品紹介・あらすじ

落語はまず笑う。人が生きようが死のうが、まず笑って、それから人情のひだをこまかくし、考察を深刻にし、物語を深めて…やはり笑うのだ。落語は海よりも深い。革命的超落語論集。

感想・レビュー・書評

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  • えーと、あれだよ、あれ。『誤読の系譜』。と思いついて探したら阿木譲(ロックマガジン)を紹介する文章だった。
    複数のテキストから全く別のサブメッセージを読み抜いていく、テキストの絶対を確信して意図してずらす、世界を誤読する癖、これこれ。
    『大落語(上下)』『志ん生的、文楽的』『哲学的落語家!』に続く4冊目の落語評論。どれでもいいので、国芳の金魚づくしを使った装丁(とくにカバーの折ったとこが素敵)を選んだ。初めて読むなら、なにを食べさせられるのか、歯触り舌触りで探るしかない闇鍋みたくスリル満点、順に読んでいけば何度も高座にかけられて洗練されていく語りに騙られて、どっちもオモシロい。広範囲な個人的体験と雑多なテキストで編みあがった世界が読み取られるために存在しているのは、叩けば音がする、背後には思想がある、という相い対からだろう。世界はともかく平岡正明はいつどこを叩いても音がしそーだ。
    血肉になったものしか闇鍋には入れられないのだから、じょうよと聞いて、あの禿頭みたいなつやつやした皮、半分ぱくっといってなかから見える暗い暗い紫の餡のぼんやりとした昏さが浮かばないなら、薯蕷という字面で、ぺろっとめくれそうな皮の裏側の餡に汚れてももけた様子を想像しながら上顎と舌で味わうアレを思わないなら、知らないと書くのは正しい。饅頭ときいてたこ焼きを連想する関西人なんかいないが(しかも回転焼きは円でタコ焼きは玉だけど)、誤読は癖なのだから矯正したらイミがない。連想の飛躍は飛ばしたいだけ飛ばされるのがスジなのだ。かかってもまた良し。

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著者プロフィール

1941年東京生まれ。早大文学部中退。1963年『赤い風船あるいは牝狼の夜』刊行し猥褻図画頒布容疑で指名手配。1964年、現代思潮社から『韃靼人宣言』刊行。1970年代後半より新左翼退潮後は辺境に位置する文学・芸能の評論分野で活躍。主な対象は筒井康隆、五木寛之、山田風太郎、山口百恵、河内音頭、三波春夫、大山倍達等。1993年『浪曲的』で斎藤緑雨賞受賞。1992年~94年まで「ハマ野毛」を編集・刊行、荻野アンナ・田中優子・種村季弘らが参加。「野毛大道芸」にプロデューサー的参画。後年、落語論を連続刊行し『快楽亭ブラックの毒落語』(彩流社)が遺著となる。最高にグルーブする平岡節は永久不滅、まさに批評界のヘラクレスである。 

「2012年 『人之初 平岡正明自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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