- Amazon.co.jp ・本 (757ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861913662
作品紹介・あらすじ
落語はまず笑う。人が生きようが死のうが、まず笑って、それから人情のひだをこまかくし、考察を深刻にし、物語を深めて…やはり笑うのだ。落語は海よりも深い。革命的超落語論集。
感想・レビュー・書評
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えーと、あれだよ、あれ。『誤読の系譜』。と思いついて探したら阿木譲(ロックマガジン)を紹介する文章だった。
複数のテキストから全く別のサブメッセージを読み抜いていく、テキストの絶対を確信して意図してずらす、世界を誤読する癖、これこれ。
『大落語(上下)』『志ん生的、文楽的』『哲学的落語家!』に続く4冊目の落語評論。どれでもいいので、国芳の金魚づくしを使った装丁(とくにカバーの折ったとこが素敵)を選んだ。初めて読むなら、なにを食べさせられるのか、歯触り舌触りで探るしかない闇鍋みたくスリル満点、順に読んでいけば何度も高座にかけられて洗練されていく語りに騙られて、どっちもオモシロい。広範囲な個人的体験と雑多なテキストで編みあがった世界が読み取られるために存在しているのは、叩けば音がする、背後には思想がある、という相い対からだろう。世界はともかく平岡正明はいつどこを叩いても音がしそーだ。
血肉になったものしか闇鍋には入れられないのだから、じょうよと聞いて、あの禿頭みたいなつやつやした皮、半分ぱくっといってなかから見える暗い暗い紫の餡のぼんやりとした昏さが浮かばないなら、薯蕷という字面で、ぺろっとめくれそうな皮の裏側の餡に汚れてももけた様子を想像しながら上顎と舌で味わうアレを思わないなら、知らないと書くのは正しい。饅頭ときいてたこ焼きを連想する関西人なんかいないが(しかも回転焼きは円でタコ焼きは玉だけど)、誤読は癖なのだから矯正したらイミがない。連想の飛躍は飛ばしたいだけ飛ばされるのがスジなのだ。かかってもまた良し。
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