パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862485083

感想・レビュー・書評

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  • 表題の通り、パチンコの題材にアニメが使われることが増えている原因を探るルポタージュ。取材にはかなり苦労したようだけど、その結果、図らずもパチンコ業界とアニメ業界の病理に迫ることに成功している、なかなか興味深い内容になってる。

    まずパチンコ業界。監督官庁である警察が強引に進めたCR機導入と様々な規制で個性的なゲーム性が打ち出しにくくなっている状況。結果、パチンコ台メーカーはアニメという素材に目を付け、パチンコのシステムに組み込んでゆく。アニメに目を付けた理由もアニメそのもののよさやファンを取り込むという意図よりも、パチンコのゲーム性との相性がよかったから、という理由のようで、素材であるアニメは都合よく利用されている感が強い。売れてないアニメがどんどんパチンコになるのも、作る側がそのアニメファン層には大して期待しておらず、パチンコ化しやすかどうか、を見ているから、らしい。

    そして、アニメ業界。DVDの販売で制作費を回収するというビジネスモデルが崩壊寸前な状態という苦しい台所事情。そんな中、パチンコ業界から入ってくる収入は結構貴重なものらしく、ギャンブルであるパチンコへの嫌悪感はあるものの、手を結ばざるをえないという状況があるみたい。ごく一部の「売れるもの」と大多数の「売れないもの」の二極化が進んでいる状況で、業界全体が生き残るためには、パチンコへの身売りは、歓迎こそしていないが、仕方ないということか。

    しかし、その頼みの綱のパチンコ業界も斜陽産業になりつつある。パチンコ愛好者は減少の一途で、ホールも減少を続けている。パチンコ台メーカーの経営も盤石とは言えず、いつまで、パチンコ業界とアニメ業界の奇妙な共存関係が続くかは、先が見えない。しかも、パチンコの素材は別にアニメに限らないが、アニメ業界側はパチンコ・マネーは必要としているのだ。著者はパチンコのアニメ採用を一時しのぎの「カンフル剤」と喩えているけど、アニメ業界にとっても延命措置に過ぎないように見える。アニメ業界は別のビジネス・モデルを構築が求められているんじゃないだろうか。

    書名に興味を持った人は読んでみて損は無い。全体的なデザインがちょっとダサい(無理にエヴァ風にしなくてもねぇ)のは残念だけどね。

  • 特に新しい知見があるわけでもなく、取材もなんか今ひとつ踏み込めてない気がする。というか、特に「これが隠された理由だ!」というような大仰な事実があるわけでもないので、無理くり嵩ましして書いてる印象。この人のルポにしてはかなり粗い。パチンコもアニメもどちらもあまり知らない人であれば、それなりに(覗き趣味的に)楽しめるだろう。

  • <b>直近オタクアニメがパチンコ展開している理由</b>

    なかなかの良書である。
    おおよそ2010年頃までのオタク向けアニメのパチンコ展開を追ったルポ。
    これまで漠然と抱いていた私なりの仮説が、データや取材を基に裏打ちしてくれる。

    パチンコ業界
    警察規制でハード面で差別化ができない現状で液晶演出が唯一のポイント。
    パチンコ映えする相性のよいコンテンツ(アクション、キャラで勝敗を分かりやすい(恐らくは射幸心も煽る)絵作りができるもの)が求められた。
    それは、パチンコファンに認知されている必要はなく、自社開発も困難なため、版権費用が低廉なオタクアニメが供給元となった。

    アニメ業界
    アニメ制作会社は、映像メディア(DVD等)の売上低迷に渡りに舟で許諾。
    新劇場版ヱヴァなど新作の製作資金として活用された事例もある。
    (ファフナーOVAも最近新作が)

    とはいえ、アニメ〜パチンコのコラボをやや批判的、否定的に取り上げている嫌いはある。
    双方とも生き残りのために手を取っただけではないか。
    アニメ業界がパチンココラボをタブーとしているとは思わないし、DVDを買わなくなったアニメファンが嫌悪しているとも思わない。

    最新事情では、パチンコ資本が入ったアニメスタジオ、or、タイトルは、2クールで自由な作家性の強い作風を出しているようにも見える。
    ただし、初めからパチンコ化を前提にアニメを作っているケースも見られる(見栄え重視の安易なキャラ、平板なストーリー)戦略的な再放送も散見される。注意が必要だ。

    本著作では、両業界とも劇薬で延命してはいるが、滅びの道を進んでいると結んでいる。
    少なくとも、アニメ業界を応援する身としては、今後の変化に適応して欲しいものである。

  • 2011年刊行。アニメーション製作現場の無茶苦茶ぶりは、つとに知られ、その元凶が虫プロにあったというのも聞いたことがある。その意味で、玩具が売れず、タイアップすべき商品がゲームなどに限定されていく中、他方で画質向上に対する視聴者・製作者の飽くなき欲求等による制作費高騰を考えれば、彼の業界を販促ツール・制作費回収の方途としていた、というのは予想の範疇。逆に、個人的には全くやらないパチンコ業界の阿鼻叫喚ぶりには意外の感。河森正治氏(つまりマクロス関連)を手に入れるため会社を買収した、という凄まじさには…。
    アニメーションをただ垂れ流しに視聴しているにすぎないのに、作画崩壊・作画崩壊などと声高に叫んでいる人は、この種の暗部を暴露する書を読んだほうが良いように思う。余りに高すぎる要求は業界そのものの自殺行為に他ならないのだから。

  • 三共がアクエリオンを作り、マクロスへの流れて見るとなるほど、と思わされる。
    しかし最後の方の、アニメ会社の取材拒否コメント集が面白いというか、問題の根が深いというか。

  • パチンコはやらないので、さっぱり分からないが、
    街中に溢れるアニメ・オタク向けタイアップの激増はとても気になっていた。
    子供の時にテレビを見ていた世代が、
    今はパチンコを打つ世代としてターゲットになっているんだな、
    などという単純な推測だけに収まらない、
    現在のパチンコ業界の事情がわかる。
    取材してみて見えてくる、予想外の様々な要因と因果関係。
    ヘタな「つじつま合わせミステリ」よりもよっぽど面白い!
    パチンコメーカー、アニメ制作サイド、パチンコ店舗、取り締まり管轄、客、
    楽な方へ、生き残れる方へと、時間をかけて今の状態に流れ着いたパチンコ。
    金だけが動いて、面白さのなくなったパチンコに
    この先、楽しい展開・明るい未来が待っている、
    ようには思えないところが凄い。
    自分が知らない業界の事情をかいま見ることができる本って面白い!

  • 地元の図書館で読む。何故、アニメ原作のパチンコが流行するの?アニメ好きは、パチンコやらないでしょう。逆に、パチンコ好きは、アニメに興味ないでしょう。この素直な疑問に解答をだしています。

  • パチンコのタイアップにアニメ作品が増えた理由を追うルポ、なのだが最終的には両業界の患部(の一部)にまで届いている。作者とパチンコに対する理解度等が近いこともあって、非常に入り込むことが出来ました。

    結論や背景に関して特別目新しい部分は少なかったのがやや残念です。しかし、関係者の言を取る事で「事実に近い推論」から「事実」に近づいてく面白さに惹かれます。良くも悪くも「金」、それも戦略なき延命のためというのが何とも…アニメファンとしては強い不安も感じました。

  • この本を読んで思った事は、日本のコンテンツ産業は意外なところからきたアミューズメント業界のエンジェルによって、生きながらえたという事実が明確書いてある良書です。

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