未来のイノベーターはどう育つのか――子供の可能性を伸ばすもの・つぶすもの

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761798

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通り、「どう育つのか」という点について何人もの例を挙げてイノベーションを育むためのヒントを与えているが、どう育てればイノベーターになるのかという問いに対する直接的な答えは提示していない。結局のところ、そういった素質は先天的なものであるかどうかははっきりしない。イノベーターに育てるための方法を解くのではなく、そういう人と異なる特性をどう伸ばすのかについて、何となく自分なりの答えを持つに至るのがこの本の読後感である。
    アメリカは個性を伸ばす教育に力を入れている印象があったが、日本と同じように型にはめるような教育が大多数でありそれから弾き出された子どもの苦労があるという点は、日本の教育現場こそ多いと思う。実際、日本の教育は集団行動に順応するための矯正施設であるわけで、それは円滑な社会を築く為には否定することは全くできない。
    個人的なことを言えば確かに幼少期の抑圧された学校生活は苦痛であったが、子を持つ親になってからは社会に馴染める大人になってくれるか危機感を持ちながら、ルールと自由さのバランスを測って接している。
    自由にさせすぎて犯罪者になってしまっても困る、という言葉もあるように結局はバランス次第。それは子どもによっても異なるし、親によっても環境によっても変わるので、答えは一つではない。ただ、これからの時代はますますイノベーターが求められるし臨機応変に生きていく必要がある。それを踏まえてもう一歩だけリスクに近い経験をさせてあげながら育てて行きたいと思った。

  • イノベーションとは?イノベーターとは?
    AIとともに生きる時代が現実味を帯びてくる中、将来労働集約型の仕事はどんどん自動化されていくと思われます。

    いまの子どもたちが社会の主役になる頃がまさにAIと完全に共存して生きる世界になっているはずです。

    ただし、イノベーションを起こすことは機械にはできません。
    世の中の問題を見つけて、それを解決するアイデアを作ることは機械にはできません。

    イノベーターになることは自分を守ることにつながると思っています。

    ではイノベーターとはどのような存在なのか。
    本書では求められるスキルとして以下をあげています。

    好奇心。すなわちいい質問をする癖と、もっと深く理解したいという欲求。
    コラボレーション。これは自分とは非常に異なる見解や専門知識を持つ人の話に耳を傾け、他人から学ぶことから始まる。
    関連付けまたは統合的思考。
    行動志向と実験志向。 

    そして、イノベーションを起こすのに必要なものを以下のように定義しています。
    クリエイティブな思考力
    専門性
    モチベーション

    それではこれらの力はどのようにつけられるのでしょうか?

    この問いに対して、現在活躍している様々な若者たちの実例を通して解答を出しています。

  • 「4歳児は絶えず質問をし、物事の仕組みについて首をひねっている。ところが6歳半くらいになると質問するのをやめる。なぜなら学校では、厄介な質問より正しい回答が歓迎されることを学ぶからだ。高校生にもなるとめったに知的好奇心を見せない。そして成人して就職したときには、自分の中から好奇心を締め出してしまっている」(p.27)

    「私にとってイノベーションとは、この世界で意味があること。人々にインパクトを与えること、そして人をワクワクさせることをやるということ」(p.93)

     21世紀には、自分が何を知っているかよりも、自分が知っていることで何をやれるかのほうがずっと重要になる。いま生徒たちが身につけなければならない最も重要なスキルは、新しい問題を解決するために、新しい知識に関心を持ち、新しい知識を作り出す能力だ。成功を収めたイノベーターはみな、「その場その場で」学び、その知識を新しい方法に応用する能力を持っている。(p.185)

    「工学は最も重要な専門職のひとつだという私の考えは変わらないが、一般教養も同じくらい重要だということがわかった。iPadのようにエレガントなプロダクトを作るには、アーティスト、音楽家、心理学者がエンジニアと協力する必要があるのだ。またどんな分野の教育を受けた人でも、シリコンバレーで成功することは可能だ……。学生、そして私の子供達へのアドバイスは、自分がいちばん興味があることを勉強すること、自分が最も情熱と能力を持つ分野で秀でること、そして自分のやり方と自分の言葉で世界を変えることだ」(ワドワ、p.226)

     人文科学は、身の回りのあらゆることに疑問を持つことを教え、議論をしたり論理を構築する作業への信頼を育むのです。たとえばある文学について新しい解釈をしてみる経験は、他のことでも疑問を持ち、クリエーティブに考える力を与えてくれます。(p.227)

     活力と生命力とエネルギーと鼓動は、あなたの体を通じて形になる。そしてあなたという人間はひとりしかいないから、その表現はユニークなものになる。もしそこにフタをしてしまったら、(その生命力やエネルギーは)他の媒体を通じて出てくることはなく、失われてしまう。世界がそれを目にすることはない。それがいかに素晴らしいか、どれだけ価値があるか、他の表現と比べてどうかといったことは、あなたが判断することではない。あなたの仕事は、それを確実かつ直接的に自分のものにしておくこと、その(生命力やエネルギーが溢れ出てくる)道を開いておくことです。(マーサ・グラハム、p.302)

     君はまちがいなく失敗することだ。それも何度も失敗する可能性が高い。失敗しないとすれば、それは無難にやったからに過ぎない。失敗は恐ろしく身にこたえる。人前で失敗したときは尚更だ。だが最も価値ある教訓のいくつかは失敗から得られるものだ。成功した場合よりもずっと多くを学べるはずだ。失敗の原因をよく分析すると、自分のこと(弱みや強み)がよく見えてきて、目標を修正できるようになる。また自分が何をやろうとしていて、それを成功させるには何が必要かも、もっとはっきりわかってくる。失敗はイタレーション、つまり学習のプロセスだと考えよう。(p.305)

  • イノベーターになること、イノベーションを起こすことが唯一の解であり、素晴らしいから素晴らしいという考えには疑問が残るが、教育や学習についての考え方を新たに捉える上で非常に参考になった。

  • 我が子への教育は、一緒に過ごし様子を見る、そこから始まる。

    ゲームは子どもにとって悪なのだろうか?
    この本ではゲームをさせるよりも他のものをある。

    それも一理あるとは思うが、それだけではないと思う。

    ただゲームをやるのではなく、ゲームをもっと突き詰めて考える。
    攻略だけなく、なぜおもしろいと感じるのか、
    どうやったらもっとおもしろくなるのか。
    そういうことを議論することで生まれるものがあると言っているのだと思う。

    これは学校などの教育機関にも言えることなのだろう。
    過去の知識だけを学ぶではなく、未来の課題に向き合う。
    各々の力に合わせて提供できるようになれば、それは最高の教育になるのではないだろうか。

    (以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋)
    ○現代の製品やサービスや経験は非常に複雑であり、
     クリエーティブな天才が一人いれば
     問題は解決できるという思い込みはもはや幻想にすぎない。
     問題解決には複数の分野を知る情熱的なコラボレーターが
     必要だというのが新しい現実だ。
     最高のデザイン思考者は、異なる分野の人と一緒に仕事ができるだけでなく、
     自らもさまざまな領域で相当な経験を積んでいる。(P.23)
    ○私たちがやってもらおうと思っていること、
     たとえばプログラム開発や会計処理が上手にできることは重要だ。
     しかし私たちは全員にリーダーシップを求める。
     誰かにリードしてもらうのを待つのではなく、
     状況をコントロールできる人物だ。(P.25)
    ○現代の社会で「(大多数の人と)違う発想をするために、
     違う行動を取る」のは容易ではない。
     それを変えるには大人の行動を根本から変える必要がある。
     グレガーセンはあるインタビューで創造性の欠如について語っている。
     「4歳児は絶えず質問をし、物事の仕組みについて首をひねっている。
     ところが6歳半くらいになると質問するのをやめる。
     なぜなら学校では、厄介な質問よりも正しい回答が歓迎されることを学ぶからだ。
     高校生にもなるとめったに知的好奇心を見せない。
     そして成人して就職したときには、自分の中から好奇心を締め出してしまっている。
     新しいアイデアを見つけることに自分の20%以下しか割かない企業経営者は80%にも上る。
     もちろんアップルやグーグルのような企業の経営者なら話は別だが」(P.27)
    ○よそと違っていたのは、毎日1時間を読書の時間と決めていたこと。(P.53)
    ○「多くの親は子供によかれと思って、『正しい』習い事をやらせ、
     『最高の』学校に入れる」とコードは続けた。
     「でも私に言わせれば、そういう親は子供と過ごす時間の大切さを見落としています。
     子供が何かを言ったときに耳を傾けてくれる大人が近くにいること、
     子供が何かを探しているときに気にかけてくれる大人がいることは重要です。
     私たち夫婦は子供と過ごす時間を犠牲だと思いませんでした。
     人間として子供たちがとても興味深いと思ったから一緒に過ごしただけです。
     多くの人はそこのところを軽視しています。
     子供たちが小さかったとき、私は自分の会社を立ち上げて忙しかったから、
     よく言われる『短くても質の高い時期を一緒に過ごすことが重要だ』と
     考えた時期がありました。
     仕事から帰ったら、子供と密度の高い45分を過ごせばいいと。
     でも子供は、まず親が十分な時間を割いてやらないと
     質の高い時間を与えてはくれません」(P.54)
    ○でも大学に入ったら、自分は科学者ではないことに気がつきました。
     ひとつの問題にういて深く考えて実験を設計する、
     といった孤独な側面に魅力を感じなかったんです。
     ぼくが好きなのは、『みんなで作ろう』というコラボレーション的な作業。
     スタンフォードに入ってかなり早い段階で、
     それはエンジニアリングというものなんだと気がつきました。(P.57)
    ○対立は、優れたプロダクトを作る基本です。
     革新的であるはずの多くの会社が素晴らしい製品を作れないのは、
     新しいプロダクトを作るには制約を取り除かなければいけないと考えているからです。
     でも制約を取り除いてしまったら、それを乗り越えるために考え抜き、
     イノベーションを起こす原動力がなくなってしまいます。(P.62)
    ●プロダクトマネージャーは各制約を取り除くのではなく、
     制約を基に、遥か高い目標を達成する。
     そのためには各担当者と同じことができなくとも、
     各々が何をやっているか、それぞれがどう絡み合っているか理解し、
     相互作用による解決策を提示する。(P.62-63)
    ○まず、課題の解決をするためのスキルを教えること、
     そして課題の難易度を少しずつ上げて学生に自信を持たせることだ。
     教授は、自分の授業を受けた学生は博士課程で
     「少しばかり怖いもの知らずになる」と言った。(P.73)
    ○仕事でハッピーだと思えなかったら、それは単なる働き口であって、
     キャリアとは言えない(P.127)
    ○論文の発表数を基準にして無難な評価をしたいなら、それでもいい。
     だが学生相手の授業を無難にやり過ごすべきじゃない。
     それなら学生とはほとんど交流がない研究専門教員と、
     論文の発表数など気にする必要のない指導専門教員をつくるべきです。
     厄介だしむずかしいかもしれませんが、学生にとってはそのほうがいいでしょう(P.147)
    ○若者が自分の好きなことに打ち込むように後押しするのも重要だが、
     現状を打破するために努力しなくてはいけないと教えることも重要だと実感している。
     「(都市貧困地区に住む子供たちは)深く考えたり、限界に挑戦したりせず、
     平凡に甘んじるよう育てられている」と、エリカは言う。(P.161)
    ○目的意識がある人間は、多くのことに耐えられる。
     この部分が現在の教育システムにはすっぽり欠けています。
     目的もわからずにあんな暗記作業をやりたい人間なんてどこにいるのでしょうか(P.189)
    ○未来の課題を理解することよりも、過去を学ぶことに力を入れすぎています(P.242)
    ○私はマックの担当の先生に会いに行き、マックが本を大好きで、
     いつかすばらしい読者家になるとわかっているけれど、
     いま読書を強制したら本を嫌いになってしまうと説明しました。
     すると彼女は突然泣き始めて言いました。
     『そう言ってくれて、どんなに私がうれいしいかわかりますか。
     ほとんどの親は、先生がうちの子に読書を教えてくれないからでしょう、
     と怒鳴るのです』」(P.269)
    ○失敗しないとすれば、それは無難にやったからに過ぎない。(P.305)

  • 題名の通り、イノベーターを育てる為に必要なことを考察した本

    さまざまな具体例が載っていて良かった。

    - 子供の情熱をかきたてられるようにチャレンジできる環境をつくること
    - 子どもの可能性を信じ、認め、応援し続けること

    の2つだと感じた!!

    大変いい本だった。

  • これまでのイノベーションの分野では、アメリカがリーダーシップを発揮してきた。その理由としてよく挙げられるのは、強力な特許法や著作権法の存在、ベンチャーキャピタルの潤沢な資金、最新のインフラ、政府の研究開発への投資、とびきりの人材を世界中から引き寄せる移民政策などだ。p16


    「読書の時間を設けた理由のひとつは、学校であれを覚えてこい、この問題を解けといわれるプレッシャーを忘れる環境を作りたかったからです。自分が好きな本を選んで、自分の好きなペースで読めるのは大きな違いです。」私が多くの子どもたちを観察したところでは、読書の習慣は集中力という筋肉と、自発的な学習の習慣を育むようだ。

    IQ(知能指数)よりも CQ(好奇心指数) と PQ(情熱指数)が大切です」とフリードマンは言う。

    多くの政治家や経営者の意見は一致している。経済の健全性を長期的に維持し、景気を完全に回復させるには、現在よりもお多くのイノベーションが必要だということ。

    新しい(または改良された)アイデアや製品やサービスは、富と雇用を生み出す。特に企業経営者の間では、科学、技術、工学の分野でイノベーションを生み出せる若者を増やすべきだという声が強い


    ゼネラル・エレクトリック(GE)は2011年、世界12か国の企業幹部1000人にインタビュー調査を行った。その結果、「回答者の95%が、イノベーションは国家経済の競争力を高める重要な手段であり、88%が、雇用を創出する最善の方法はイノベーションだと考えている」ことがわかったという。

    また回答者の69%が「これからのイノベーションは、高度な科学研究よりも人間の利益を生み出すものではなく、人間のニーズを満たすもの」になると予測した。

    さらに90%がイノベーションは環境に優しい経済を実現する重要な手段になると考え、85%がイノベーションは環境を改善すると確信している。

    また58%がクリエーティブな人材がいることが、企業がイノベーションを生み出す最も重要な要因だと考えている。


    2011年にイノベーション企業研究所を新設したロンドン・ビジネス・スクールのアンドリュー・リッカマン学長は、「(イノベーションの)厳密な定義はしていない」と、ウォールストリート・ジャーナル紙に語っている。

    「これは新しい物事が起きる・・・プロセスのことだ。私はイノベーションをアプローチだと思っている。しかし研究所としては標準的な定義をしている。つまり新しい製品とサービス、もしくは新しいビジネスモデルやプロセスを通じて価値を生み出す新しいクリエーティブな方法だ」

    優秀な若者を貧困地区に教員として派遣するティーチ・フォー・アメリカ(TFA)


    イノベーターに必要なスキル

    私は前著『世界の学力格差』で、フラット化する世界で仕事、生涯の学習、そして市民生活に求められる新しいスキルを「7つのサバイバル術」と名づけた。

    1 批判的思考と問題解決能力
    2 ネットワーク全体におけるコラボレーションと影響力によるリーダーシップ
    3 敏捷性(びんしょうせい)と適応力
    4 イニシアチブと起業家精神
    5 情報へのアクセス力と分析力
    6 口頭と書面でのきちんとしたコミュニケーション力
    7 好奇心と創造性


    IDEOのデザイン思考は、イノベーションのあらゆるプロセスの基礎になると考えれる。『発送する会社!』『イノベーションの達人!』『デザイン思考が正解を変える』(早川書房) IDEOの社長兼CEOのティム・ブラウンやマネジングディレクターを務めるトム・ケリー。

    ブラウンは、ハーバード・ビジネスレビュー誌に寄稿した論文で、「デザイン思考者」の5つの特質を挙げている。

    第1は「共感」 人間を中心に世界を多角的に思う描く能力。

    2つ目「統合的な思考」 問題をあらゆる側面から見つめて、場合によっては突破口的な解決策を見出すのを可能にする能力だ。

    「楽観主義」も必要不可欠だとブラウンは言う。

    なぜならデザイン思考は、どんなに難しい問題にも必ず解決策が見つかると信じることから始まるからだ。

    しかし「実験主義」すなわち新しいクリエーティブな方法で解決策を探る試行錯誤のプロセスがなければ、最終的な解決策は得られない。

    そしえて5つ目に、デザイン思考者は「コラボレーター」でなくてはならない。

    「現代の製品やサービスや経験は非常に複雑であり、クリエーティブな天才が一人いれば問題は解決できるという思うこみはもは幻想にすぎない。

    問題解決には複数の分野を知る情熱的なコラボレーターが必要だ問うのが新しい現実だ。

    最高のデザイン思考者は、異なる分野の人と一緒に仕事ができるだけではなく、自らもさまざまな領域で相当な経験を積んだいる。


    クリステンセンらは、独創的な人間かそうでないかは、関連付ける力、質問力、観察力、実験力、ネットワーク力という5つのスキルがあるかないで決まることを発見した。3人はさらに実行力と思考力の2つのカテゴリーに分けた。

    ●実行力・・・イノベーターは質問力(疑問を投げかけること)によって現状を打破し、新たな可能性を検討する。また観察力によって、新しいやり方のヒントとなる(顧客やサプライヤーや他社の)ささいな行動に目を付ける。さらに実験力によって新しいエクスペリエンスを執拗に試してその領域を探る。そしてさまざまなバックグラウンドの人とネットワーキングを通じて、それまでとは全く異なる視点を持つようになる。

    ●思考力・・・4つの行動パターンはみな、イノベーターが物事を関連付け、新しいインサイトを得る助けになる。


    成功するイノベーターに最も欠かせない資質のいくつかは次のようになる。

    ●好奇心・・・すなわちいい質問をする癖ともっと深く理解したいという欲求

    ●コラボレーション。これは自分とは非常に異なる見解や専門知識を持つ人の話に耳を傾け、他人から学ぶことから始まる。

    ●関連付けまたは統合的思考

    ●行動思考と実験思考


    ダイアー、グレガーセン、クリステンセンもらの論文は次のように結論付けている
    「独創的な起業家精神は遺伝的資質ではなく、積極的な努力によって得られるものだ。アップルの『シンク・ディファレント(発送を変えろ)』というスローガンは刺激的だが不完全だ。発送を変えるには行動も変えなくてはいけない。イノベーターのDNAを理解し、補強し、手本にすれば、企業は全従業員にクリエーティブなひらめきを起こさせることができる」

    問題がある、現代の社会で「(大多数の人と)違う発想をするために、違う行動を取る」のは容易ではない。それを変えるには大人の行動を根本から変える必要がある。

    グレガーセンはあるインタビューで創造性の欠如について語っている。
    「4歳児は絶えず質問し、物事の仕組みについて首をひねっている。ところが6歳半くらいになると質問するのをやめる。なぜなら学校では、厄介な質問よりも正しい回答が歓迎されることを学ぶからだ。高校生にもなるとめったに知的好奇心を見せない。そして成人して就職したときには、自分の中から好奇心を閉め出してしまっている。新しいアイデアを見つけることに自分の時間の20%以下しか割かない企業経営者は80%にも上る。もちろんアップルやグーグルのような企業の経営者なら話は別だが」

    このようにかんがえているのはグレガーセンだけではない。

    ケン・ロビンソンは著書『才能を引き出すエレメントの法則」(祥伝社)とTEDの講演で好奇心と創造性がさまざまな形で阻まれていることを、「教育によって閉め出される」という表現で語っている。

    心理学者で創造性について研究してきたロバート・スターンバーグも同意する。
    「創造は癖だ。問題は、学校がこれを悪い癖として扱うことがあることだ。・・・どんな癖でもそうであるように、創造性は伸ばすこともできれば、抑え込むこともできる」


    アマビール教授の最も影響力のある論文のひとつは、「あなたは組織の創造性を殺していないか」(邦訳は『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』1999年5月号に収録。
    この論文の素晴らしいところは、企業で創造性をどのように理解するべきかの枠組みを示すとともに、創造性を抑圧する経営と奨励する経営を例示していることだ。

    イノベーション(創造性)は、専門性(知識)とクリエーティブな思考力、モチベーションが必要。

    「専門性やクリエーティブな思考は個人の原料、つまり生まれつきの財産といっていい。しかし人が実際に何をやるかは、3つ目の要因であるモチベーションによって決まる」


    情熱と興味(何がしたいかという人間の内的欲求)は、内的モチベーションにほかならない。

    外からのプレッシャーではなく、自分の関心、満足感、挑戦意識が最大のモチベーションになっているとき、人は最もクリエーティブなる。


    ビル・ゲイツをはじめ多くの企業経営者は、企業の競争力を高めるには、大学でSTEM(科学、技術、工学、数学)を先行する学生を増やす必要があると主張している。

    ゲイツもザッカーバーグもスティーブ・ジョブズもマイケル・デルもディーン・ケーメンもポール・アレンも、多くの優れた胃のベータは創造的なアイデアを実現するために大学を中退している。


    ジョブズによると、彼が大学でとった授業のうち、初代マッキントッシュに最も役に立ったのはSTEM関連の授業ではなくカリグラフィーの授業だった。


    ハーバード大学経営大大学院のテレサ・アマビール教授は、人間の創造性を乃場るのは専門性、クリエーティブな思考力、そしてモチベーションの3つだとした。このうち最も重要性が低かったのは専門性のようだ。


    従来型の高校や大学の教育カルチャーには、キャリアー教授のクラスのカルチャーとは絶対的相容れない3つの基本的特徴がある。

    第一に、従来型の学校では個人どうしの競争や実績を評価するが、キャリアー教授はチームワークを重視する。

    第二に、従来型の授業では、細分化された科目の専門知識を教えてそれを暗記しているかどうかを問うが、キャリアー教授の授業では課題をベースに分野横断的なアプローチが取られる。

    第三に、従来型の学校は外的インセンティブ(成績や評価点)をちらつかせて学生の尻を叩く。これに対してキャリアー教授の授業は、探究やエンパワメントや遊び(あるいは奇抜なアイデア)といった内的インセンティブを駆使する。


    イノベーションとは、この世界で意味があること、人々にインパクトを与えること、そして人をわくわくさせることをやるということ。企業には2種類ある。

    ひとつはうまく回っているけど仕事のペースが遅い古風な会社。社内で何が起きているかよく把握しているし、システムもきちんとしていて、物事の進め方も決まっている。

    もうひとつは破壊を繰り返す会社。アップルはスタートアップのように経営されている。こういう会社は迅速なプロトタイピングとイテレーション(短期間の開発の繰り返し)を通じて、イノベーションを続ける。未来がどうなるか絶えず考える。確かに企業は利益を上げなくてはいけないけれど、本当の成功とはその利益を継続的なイノベーションに投資することで得られる。


    ジャーナリストのデービッド・ボーンステインは著書『世界を変える人たち』(ダイヤモンド社)で、社会イノベーターとは「大きな問題に新しいアイデアで取り組み、自分のビジョンを粘り強く追及し、『無理だ』という声を聞き入れず、自分のアイデアをできるかぎり広めるまであきらめない人たち」だとしている。


    21世紀には、自分が何を知っているかよりも、自分が知っていることで何をやれるかのうほうがずっと重要になる。

    いま生徒たちが身につけなければならない最も重要なスキルは、新しい問題を解決するために、新しい知識に関心を持ち、新しい知識を作り出す能力だ。

    成功を収めたイノベーターはみな、「その場その場で」学び、その知識を新しい方法に応用する能力を持っている。


    ステーブ・ジョブズの伝記の著者ウォルター・アイザックソンは「ビル・ゲイツはとてつもなく頭がいいが、スティーブ・ジョブズはとてつもなく独創的だ。いちばんの違いは、問題(の解決)にクリエイティビティーと美的感覚を持ち込む能力だと思う。


    私が話を聞いた親たちはみな、自分の最も重要な仕事のひとつは、子供が自分で情熱を傾けられてることを見つけ、追いかけるのを応援擦ることだと確信していた。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784862761798

  • これからは、自分が何を知っているかよりも、知っていることで何が出来るか、の方が大切というのは目から鱗。イノベーターとして成功した人達が、どのように育ってきたか振り返ることで、そんな子育てについて考える契機となるような本。子供のためと言いつつ、実は親のために子供に期待をかけているのかもしれない。教育の本質は、子供の興味を見極め、それを伸ばす手伝いをすることなんだろうな。

  • 本年度2冊目。


    読むのに時間はかかったものの、いろいろな示唆をもらえた!

    子育てにも、仕事にも、自分自身のことにも…
    おもちゃの与え方、スクリーンタイムの扱い方、考えさせられることたくさん。

    何より親として、教師として、イノベーターに関わってきた人の多くの人のエピソードが満載。


    いい一冊に出会えました(*゚Д゚*)

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著者プロフィール

ハーバード大学テクノロジー起業センター初代フェロー(イノベーション教育)、ハーバード教育大学院チェンジ・リーダーシップ・センター元共同ディレクター。米国各地のさまざまな学校や財団へのコンサルティングを行っており、ビル&メリンダ・ゲイツ財団シニアアドバイザーも務めた。高校教師、校長、教員養成大学での教授の経験も持つ。これまでに『世界の学力格差』(The Global Achievement Gap,未邦訳)など5冊の著書がある。

「2014年 『未来のイノベーターはどう育つのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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