一途一心、命をつなぐ

著者 :
  • 飛鳥新社
4.04
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本棚登録 : 241
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784864102230

作品紹介・あらすじ

「心臓手術から帰らなかった父の教えですべてが変わった」-。6000人以上の命を救った医師の30年に及ぶ「無私の生き方」!天皇陛下の執刀医初めての単行本。

感想・レビュー・書評

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  • もともと医療系の本が大好きなのだが、本書には本当に感動した。
    心臓外科医の天野医師は、天皇陛下の心臓手術の執刀を担当した。心臓を患ったこともないし、病気で生死の境をさまよう経験もしたことがないから、どの医者に手術をお願いするかにそれほど差が出ると思っていなかった。天野医師は、ここまでしないと極められないのか、とあきれるほど執念深い向上心を持ち合わせている。外科医としてはとにかく手術の数をこなさないと技術が良くならないらしい。手術をしたくてしたくてたまらないようだ。
    たくさんの手術件数の中には、助けられなかった、つまり患者さんが亡くなってしまったことがごく少数あり、省みてはその経験を次の手術に活かしているそうだ。
    順風満帆なだけではなく、受験に失敗したり、転職した先の病院の環境が良くなかったりと、いろいろな挫折や挑戦があり、それを機会に成長していく。天野医師は心臓外科医という職業が大好きで、手術をしていると嫌なことも忘れてしまうそうだ。ここまでやるか!という姿勢を見せられて、生き様が心に刻まれた。

  • 心臓外科の日本最先端のお一人である著者。カテゴリは医学でよいと思いますが、著者の経験談・思想が濃く盛り込まれている、ジャンル的には多岐にわたるようにも思います。

    心臓外科医というだけでも十二分に非凡ですけれども、やはりこの一冊を読むと極める人というのは何と言うか、人間の出来や素材やレベルといったものが根本的に違うのかな、という感じがします。
    普通の人はこんなに自分の技術や能力に自信がもてないでしょう。
    でもこういう世界の人はハタから「自信過剰では」と思われるくらいのほうが安心しますね。
    自信のない医者に掛かりたい患者などいませんから…。


    いい言葉が随所に出てきます。

    (引用)一人前になるには、ある時期に集中して1つのことを濃く、深く学ぶ経験がとても大事だと思う。

    (引用)予期せぬ事態が起こっても、パニックにならずやるべきことをやる。それが出来るようになったのは、やはり経験の力が大きいだろう。

    予期せぬ事態ほど、対処するには経験の力が大きいということは、ある程度生きていると確かに感じることがあります。
    経験に関わる著者の格言のような言葉はまさに経験に裏打ちされてとても実感のこもった言葉たちと感じます。

    装丁やタイトルなどからある程度の年齢以上の方が手に取られることが多いでしょうが、これから社会に出るような、あるいは社会人になりたての若い人にも読んでもらいたい一冊のように思います。

  • 詳細なレビューはこちらです↓
    http://maemuki-blog.com/?p=8473

  • 迷ったときは難しい道を行け。
    努力をすれば7番目の医者でも1番になれる。
    まっすぐな信念とひたむきな努力が天野先生を作ったのだと思う。

  • 読んで真っ先に思ったのは、もし手術を受けるようなことになったら、天野先生のような方に診ていただきたいと思いました。こんなに真摯に患者のことを考えてくださる医師なら、信頼してお任せできます。

    成功している人、何かを成し遂げた人には、みんな必ずそれなりの苦労、努力をしている。時には人との軋轢を生むこともあるかもしれない。それでも今いる場所をよくしたいと思うならば、そこから逃げてはいけない、そのことを強く感じた。

    「経験を思いやりに変える」という言葉を実践していきたい。

  • 494

  • 「医療の本質は思いやり」
    「好きだからやっている」
    「プラスの連鎖」
    「手術する時にはいくつもの方向から自分に向かう愛を感じることがある」

  • とにかく諦めてはいけない。途中でくじけないで突き進んでいけば、ゴールには辿り着ける。人生においても、どんな仕事においても、そうやって覚悟を決めて突き進む時期が誰にでもある。結果を決定的に左右することになる分岐点を理解する。ここがその分岐点だと気づいたら、腹を決めて、それまで以上に精神を集中させて前に突き進む。王道が通用しないこともあるだろう。であるなら、どんな方法だったらうまくいくのか、何をすればいいのかを即座に考え、決断し実行していく。その一歩一歩の積み重ねが、天秤の視点を再び真ん中に戻し、生きる方向へと軌道修正することになる。

    3000例を超えたあたりから大局感のようなものが身に付いてきた。起承転結のようなものが自然と見え、流れを正確に読めるようになった。経験は動画ではなく、絵として頭の中に取り込まれている。少なくとも年間250例はキープするよう自らに課してきた。この数字は、平均すると土日を除き、毎日一件以上は施術しているというペースだ。

    あの世で亡くなった患者さんたちに再会したら、どんなふうに迎えられるだろう。なぜ助けられなかったか、どうしていれば救えたのか、結果の原因を必ず分析して、その経験を今後に活かすようにしている。

    支えてくれる人たちの思いは力になり、そしてその力が、最終的には施術で患者さんを救うことへと集約される。きちんと心をこめて施術をすれば、結果は裏切らないと信じている。これまでの多くの経験を通して、そのことを身をもって知っている。

    絶対に妥協しない。勇気持って突き進む。

    ぎりぎりまで待ってようやく動き出すのではなく、一番よいタイミングで最も効果的な治療法を選択する。

    治療の一番の目的は患者さんを励ましたいから。患者さんの心理は常に揺れ動いている。だから、励ましが必要なのだ。患者さんが患者になりきるために、治療師も治療師になりきる。両者がなりきって初めて、治る力を最大限に引き出すことができる。

    患者が、治療師と共に、怪我や病気に立ち向かっていく姿勢が重要になる。大変な状況にあっても前向きな気持ちを失わない人、諦めない人。そして、生きる方向への手綱をちゃんと握っている人。自分の症状から逃げずに、腹をくくって治療に向かう。治療師を信じて治療に集中する。一緒にがんばりましょうという姿勢で、両者が相思相愛になった方が絶対に強い。

    親というものは、どんな症状であれ、子供をそのように産んでしまったという自責の念をずっと引きずっている。治療師は、できることならその負担から親を解放してあげなければいけない。

    難しい患者さんの施術が、これからの可能性を広げる牽引役になる。

    今、自分の思い通りにいかなくて焦っている人もいるだろう。周囲より遅れてしまったと悩んでいる人もいるだろう。しかし、あまり気にしなくていい。亀さんである事を恐れる必要はない。治療師になりたい。将来、人や社会のために役に立ちたいという強い気持ちさえあれば、自分自身をとことん追い込んで頑張ることができる。そうすれば、時間はかかっても必ず道は開けるものだ。

    自分の家族だったら、どうするか。迷ったときは、自分にそう聞いてみるといい。きちんと答えられない場合は、そこでは決断しない方がいいだろう。常に客観的で冷静な目を持った自分が現れるようになったのは、30代後半の頃だった。施術中に限らず、事あるごとに出てきて、自分を励ましたり、コントロールしたりする。

    施術で自分ができることは全部やっておく。一手間加えることで患者さんの予後がもっとよくなる可能性が少しでもあるなら、その手間は惜しまない。やれることは全部やった。これ以上のことはできない。ちゃんと納得してから施術を終えたい。患者さんが施術後、様々なことを体験し、人生を全うし、その結果として「あれあ最高の施術だった」と後で分かる。ある意味、施術を超えたところに答えがある。よい施術をするための努力を惜しまない。準備を怠らない。やるべきことを丁寧にやる。そういう青臭い思いを持ち続けたい。それが治療師の良心というもの。

    一人前になるには、ある時期に集中して一つのことを濃く、深く学ぶ経験がとても大事だと思う。いったん立ち止まって、徹底的に掘り下げる。物事の原点まで辿っていく。一見、遠回りのように思えるが、こちらの方が確実に自分のものになる。

  • 2015年2月28日読了。
    天皇陛下の心臓バイパス手術の執刀医にもなった日本を代表する心臓外科医の第一人者。
    仕事に対する姿勢、考え方が素晴らしい。

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著者プロフィール

天野 篤(あまの あつし)
心臓血管外科医。順天堂大学医学部教授。
1955年、埼玉県蓮田市に生まれる。
1983年、日本大学医学部卒業後、医師国家試験合格。関東逓信病院(現・NTТ東日本関東病院。東京都品川区)で臨床研修医ののち、亀田総合病院(千葉県鴨川市)研修医となる。1989年、同心臓血管外科医長を経て、1991年、新東京病院(千葉県松戸市)心臓血管外科科長、1994年、同部長。1997年、新東京病院での年間手術症例数が493例となり、冠動脈バイパス手術の症例数で日本一となる。2001年4月、昭和大学横浜市北部病院循環器センター長・教授。
2002年7月、順天堂大学医学部心臓血管外科教授に就任。
2012年2月、東京大学医学部附属病院で行われた上皇陛下(当時の天皇陛下)の心臓手術(冠動脈バイパス手術)を執刀。
2016年4月より2018年3月まで、順天堂大学医学部附属順天堂医院院長。
心臓を動かした状態で行う「オフポンプ術」の第一人者で、これまでに執刀した手術は9000例に迫り、成功率は99.5%以上。



「2020年 『若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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