- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864103138
感想・レビュー・書評
-
うまれに恵まれて裕福に育ち、高い教育を受け、仕事をしながら作品を書き続けたふたりの作家、ゲーテとカフカ。
似たような境遇で育った彼らはしかし、まったく正反対ともいえるマインドの持ち主。
天性の明るさと前向きさを有し、困難に立ち向かうことを良しとし、人の欠点をみとめて愛し、自分の軟弱さを律し、パワフルに生きた「陽」の人、ゲーテ。
生まれつき自分に自信がなく、何事にも敏感で不安で、体力もなくなにかを始める前に疲れてしまい、自分の弱さに負け続け、苦しみ続けた「陰」の人、カフカ。
ゲーテもやりすぎだしカフカも行き過ぎだけど、人はみんなこういう面を両方もっていて、笑ったり悩んだりしているのだろうなぁ。
ゲーテの強さには感服したし、カフカの暗さには何度か笑った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
<太陽の光を放つ人、月の光を放つ人>
この二人を比べた面白い本――タイトルが凄すぎますが(汗)――あるのを図書館で発見しましたので、ご紹介してみたいと思います。
「希望は、私たちが生きるのを助けてくれます」★ゲーテ
「朝の希望は、午後には埋葬されている」★カフカ
「厚い雲、立ち込める霧、激しい雨の中から、希望はわれわれを救い出す」★ゲーテ
「救世主はやってくるだろう。もはや必要ではなくなったときに」 ★カフカ
「大地にしっかりと立って、まわりを見渡すのだ。力のある者には、世界が語りかけている
★ゲーテ
「ぼくの足の下に、たしかな大地はありません。はっきりとはしないまま、ぼくはとても怖れていました。自分が地面からどれだけ浮き上がってしまっているのか、ぜんぜんわからなかったのです」★カフカ
決して、ゲーテの後進となるカフカのパロディではないと思うのですが、それにしても、あまりの可笑しさにクスクス笑いながら読みすすめていると、また面白い言葉に出会いました。
「一晩に、わたしは千匹のハエをたたき殺した。それなのに早朝、一匹のハエに起こされた」
★ゲーテ
「かわいそうなハエを、なぜそっとしておいてやらないのですか」 ★カフカ
ここでゲーテがいうハエというのはもちろんメタファー(隠喩)で――確かに千匹のハエって一体どういう事態なの??――どうやら当時のゲーテに対する悪評や嫉妬・羨望の声のようですが、そのようなことに委細かまわず己の信ずる道を突き進むゲーテらしい言葉ですよね。でも1匹のハエに叩き起こされるあたり……巨人ゲーテも太陽神ならぬ人の子(^^♪
ここで私が注目したのはカフカ。ご存じのとおり、彼はもともと虚弱体質だったようで、かなり内向的な性格です。とても心根の優しい人で、とりわけ弱い者や虫やら小鳥や生き物に対して格別の優しさ。まるで踏みつぶされそうな弱い虫と自分を同一視していたようにさえ思えます。ついつい有名な「変身」を想起します。
ある朝起きてみると、突然醜い虫になっていたグレゴール・ザムザ……ひどくおどおどして、その仕草のひとつ1つが妙にリアルで過敏で、痛いおかしさと涙を誘う憐れな虫の境涯(脱線ついでにご紹介しますと、この作品にインスパイアされた村上春樹さんは、「恋するザムザ」という短編を書いています。これもまた、いとおかし)。
「あの人がわたしを愛している――そのときから、わたしは自分自身にどれほど価値を感じられるようになったことか!」★ゲーテ
「なんと言っても、あなたもやはりひとりの若い娘なのですから、望んでいるのは、ひとりの男であって、足もとの一匹の弱い虫ではないはずです」★カフカ
***
ある日、カフカは恋人ドーラといっしょに公園を散歩していると、人形をなくして泣いていた少女に会いました。「お人形はね、ちょっと旅行に出ただけなんだよ」とカフカは言いました。その翌日から、カフカは毎日人形が旅先から送ってくる手紙を書いて、その少女に渡しました。お人形は旅先で様々な冒険をしたそうで、その手紙は3週間も続きました。最後は悩んだカフカでしたが、お人形は遠い国で立派に成長して幸せな結婚をしたという結末になりました。そのころには、人形に会えないことを少女は受け入れていたそうです。当時、カフカは病気のため余命1年弱と宣告されていました。
この少女とカフカのやりとりに想いを馳せていると、カフカにとって濃密だった3週間のおとぎ話(手紙)とはどんなものだったのだろう? そして妖しくも柔らかな月の光を放つカフカの作品をつらつらと思い浮かべてみたりして、なんだか久しぶりに再読したくなりました。
「自らを不滅の存在とするために、わたしたちはここにいるのだ」 ★ゲーテ
「目立たない生涯。目立つ失敗」★カフカ
いや~カフカの作品は、時代を超えて月光を放ち続け、多くの芸術家に霊感を授けていますね♪
「最も幸福なときにも、最も苦悩しているときにも、わたしたちには 芸術家を必要とする」
★ゲーテ
「自分の城の中にある、自分でもまだ知らない広間。それを開く鍵のような働きが、多くの本にはある」★カフカ
太陽の光を放つ人、月の光を放つ人、ふたりの性格や作風はまるで異なっても、芸術や書物をこよなく愛した人たちであることに違いはありません。 -
ポジティブなゲーテとネガティブなカフカの対照的な名言を集めた本。明るさも暗さも突き抜けてるからこそ心地よい。自分の気持ちがどちら側に寄っているかで響くものが違う。人生に立ち止まりたいと感じたら何度も読み返したい一冊
-
構成もデザインもナイス。
内容もゲーテとカフカの言葉なので外れなし。
どっちかをageてどっちかをsageるもんでもなく、対比させて陰と陽を楽しむといいよ。希望名人ゲーテが眩しいときはカフカの言葉に浸り、絶望名人カフカが鬱陶しいときはゲーテの言葉を謳えばいいよ。
中庸万歳(ぇ -
ことごとく、自分次第。
自分が、かなりカフカよりだということに気づかされる。
でも。カフカほどではない。
自分の出来る範囲を決めてしまい、自分の周りからの評価をきめつけている。常に不安をおぼえ、余計なことを考えている。
ゲーテは、少なくとも自尊していて、明るく前向きに過ごすことを常としている。
根っからのものではないとしても、どう思うかは自分次第なんだなと思う。
自分も自分の力で、もっと前向きになれるようにしたい。 -
栞紐2本が気に入った
-
ゲーテのポジティブさと、カフカのネガティブさに大きなギャップがあって面白かった。
ゲーテにおいては、ここまでプラスな考え事ができて本当にすごいなと思った。身長も187センチあって、身分も高くて、色々な学問に精通していて。現代にいたとしても超モテモテだと思う。
ゲーテの生き方をみて、色々なものを手に入れられたら本当に幸せなんだろうかと考えさせられた。
ゲーテは83歳くらいまで生きたらしい。人生の過程で、兄弟や奥さん、親友を亡くすという悲しい出来事を経験している。周りの人が亡くなるのを体験すること以上に悲しくなることはないと思う。だから、人生がある程度順調にいっても、本当に辛いことは誰でも起きるんだなと思った。 -
おもしろかったです。
うまいこと対比してあってでらウケました。
巻末の本の紹介もよかったです。
カフカ全集の復刊ぜひ希望。 -
陰と陽。両極端な二人の狭間から生まれるものは。
作家界の二大巨塔ゲーテとカフカ。かたや25歳にして『若きウェルテルの悩み』が大ヒットした独を代表する文豪。かたや多数の作品を生み出しながらも死後40年あまりも評価がされることがなかった不遇のオーストリア保険局員。そんなポジティブとネガティブを象徴させる二人の名言を、テーマごとに対比させてみるという面白い試みをしたのがこの本。
「太陽が輝けば、ちりも輝く」ゲーテ
「暗闇に戻らなければなりませんでした。太陽に耐えられなかったのです」カフカ
偉大なる存在のもとにあって、その恩恵を感じるか自身の小ささを思い知るか。自分がその場に相応しくないと思ったのなら、時には隠れたり逃げたりしながら生活していくことも正しい決断でしょう。
「大地にしっかりと立って、まわりを見渡すのだ」ゲーテ
「ぼくの足の下に、たしかな大地はありません」カフカ
大地が無くてはさすがにどうしようもありませんが、ちゃんと居場所が固まったのなら周りに目を向けたいものです。自分の足元ばかり見つめながら生きていくのはあまりにも大変。
「生きている間は、生き生きしていなさい!」ゲーテ
「静かにしているべきだろう。息ができるというだけで満足して」カフカ
こうまで言われては・・・。それでもこういった考えを持ちながら生きて行っている人々も確かにいるのだという事実は知っているべきだと感じます。たとえどんなに自分が前向きな人間で、こんな思考が理解できないとしても。
落ち込んでいる人には前向きな言葉をかけて励ますことが普通ですが、時として自分の状況を再認識してしまい逆効果になることもあります。むしろ同じ境遇の人を見つけることで安心するという場合もあるのではないでしょうか。
どちらも正しく、どちらも共感を得る。だからこそこの二人の名前は、没後こんなに年月が経過した後でも世界中に知れ渡っているのかもしれません。 -
基本的にはポジティブ・ゲーテとネガティブ・カフカの言葉が対比して書かれてます。
ゲーテのある意味つっこみたくなるようなポジティブな名言が好きでした。しょうがないおっさんだな、と何度も思ったような気がする……。対するカフカは……しょうがないやつだな……とたまに嫌になることも(え)。その日の気分次第で感想は変わると思います、はい。
ゲーテの言葉はよく小説から引用されてるみたいですが、対するカフカの言葉は日記とか手紙が多いです。
実は、不思議なカバーです。買ってからのお楽しみ。