▼あらすじ
それは戯れの会話――
「もし金をやるといったらいくら欲しい?」
「一億円」
だが、そう答える加藤の声は真剣で――彼は、なにを考えている?
ふたりの出会いは火曜日のバー。
加藤はあまり自分のことを語らない青年だったが、長門の誘いを嫌がる様子もなくホテルについてきた。
しかし真剣な交際を望むと、その美しい顔で、ただ火曜日に会うことだけを許した。
好意は感じるのに、まるで掴めない彼自身とその真意に、心を乱し続ける長門だったが…。
***
yoco先生の絵柄とあらすじに惹かれて購入したのですが、読む前まではこういった重たい題材を取り扱った内容だとは夢にも思わなかったです。
もし事前に知ってたら買うのを躊躇ってたかもしれません。
あらすじにも書いてあるように、加藤(受)は自分の事を殆ど語らない非常にミステリアスなキャラで、長門(攻)と良い感じになっても頑に秘密を明かさず、常に一線を引いた付き合い方をしようとします。正直、途中までは二人の駆け引きを楽しく眺めていられたんですが、本当に、イラッとするほど加藤の口がいつまで経っても堅いので長門がやきもきするのと同じようにこちららまで焦れてしまいました…。ここまでしといて何で言わないんだ、と。
そして物語の終盤辺りで漸くその理由が判明するのですが…まさか人工透析が必要なくらい重い腎臓病を抱えているとは思わなんだ…。
ぶっちゃけ、私はやくざ関係(笑)だろうと予想していたので、加藤が倒れた辺りで、えっ…と思ってしまいました。
いや、重い病気をテーマにしたBL作品をあまり読んだ事がない…というか、あえて手に取らないようにしてるのでその筋を全く予想していなかったんです…。
そんな自分の鈍さに笑いつつ、最後まで読み進めた感想といたしましては、重かったのはテーマだけ…と言ったところでしょうか。
人工透析、という言葉が出て来たのには流石に衝撃を受けましたが、命に別状はないし、本人も悲観してないから気分が沈むような事もなく、長門の支援の甲斐あって最後は海外での臓器移植が無事成功して帰国、めでたしめでたし…って感じで、ラストは良く言えば後味良く、悪く言えばサラッとした印象で終わってるので、加藤に人工透析の必要がなくなったのは嬉しいけど、淡々とし過ぎてあまり心に引っ掛かるものはなかったな…というのが本音です。
正直、病気の事もそこまでして隠す事かなぁって思ってしまったり…。
ただ、あんまりにも重た過ぎる内容だと読んでいて疲れるし、鬱々とした話が苦手傾向にある自分にはこれくらいあっさりしてた方が丁度良いかな、とも思ったり。
逆に、重たい話を好む方には少し物足りないかもしれません。
でも、加藤の嫌がる事は決してしない長門の紳士的な態度には好感が持てましたし、彼の仕事内容も興味深く、決して楽しめなかった訳ではありません。
yoco先生の透明感のある美しいイラストも素敵で惚れ惚れしましたし、多少、ご都合感はあっても最後は正真正銘のハッピーエンドなので良かったです。