カタルーニャ語小さなことば僕の人生

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865280890

作品紹介・あらすじ

元銀行員が研究者に⁉ カタルーニャでベストセラー作家に⁉ ことばの海を泳ぐカタルーニャ語学者の40年。 日本で初めてのカタルーニャ語の辞書編纂からカタルーニャ語で小説をものするまで、編纂、翻訳、創作、記録あらゆる手法で日本とカタルーニャの文化をつないだ田澤耕が「小さな言語」との40年をユーモアいっぱいに描く。 二重言語の街の歴史、ふたつのことばの上下関係、言語学習についてなど…ことばの宇宙に目が眩む一冊。

感想・レビュー・書評

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  • カタルーニャ語と出会った方のエッセイ。
    言語習得は、単調な繰り返しに耐えることに尽きるとのことで、その繰り返しの中で、ある時有機的な語と語のつながりが生まれてくるそう。

    現地において、「あなたの話すカタルーニャ語はのくわからない」的な嫌がらせや、話すこと自体に異を唱えられることはなかったそうで、別の本でも読んだスペイン語圏の感覚に近いものがあると思った。

    「小さな言語の市場を制するために重要なのは、チャンスがあったら後先考えずにつかめ、ということ。「私はまだ力不足で」、「少し考えさせてください」などと言っていたら、チャンスは二度と回ってこない」(p.181)
    …あたりは、小規模言語ならではの話だが、言語以外の側面でも共感できる部分はある。

    「希少なだけでは価値は生まれない。ある程度以上の需要がなければ。これは僕がくり返し言ってきたことだ。なければ、あるいは足りなければ、創り出すしかない。そして価値を確実に生み出すには、競争相手に勝ったり、自己顕示欲まる出しに宣伝を行うことも必要だ。これは銀行員時代に叩き込まれたことだ」(p.236)


    なお、読み進めているうちに、母校の大学名が出てきて、次男が通ったとのことで、息子にあたる人と年代が近いなあと思ってその後の経歴も見覚えあり、同級生だと分かった。なるほど、こういう環境で育ったら、あのように立派で独特な方になるなあと再実感している。

  • 著者は、スペインでカタルーニャ語と出会い、その小さな言語の奥深さに魅了されて、言語社会学の研究者に。一つの言語から、歴史や文化、人々の生活へと広がる興味や、多くの著名人、市井の人々との温かい出会いなど、内容が豊かでとても面白い。最後、闘病中であることが書かれているが、温かな遺書のようにも感じた。

  •  カタルーニャと言えば、チェロ奏者巨匠カザルスゆかりの地だ。だから、たまたま図書館の新着コーナーで眼にして手に取った。
     面白い。若い人にも、中年壮年が読んでも。著者の肩肘張らない 自伝(と言っていいだろう)、もちろん努力に裏裏打ちされた成功譚、その思考のやわらかさ、ギアのON-OFF加減、すごく共感できる。
     うらやましいなぁ、でも、それぞれの人生を大事に、楽しく、しっかり過ごすことの大切さを再認識させてくれる一冊だ。

  • 『カタルーニャ語小さなことば僕の人生』読了、2022/08/13
    予約販売時にkindle版がなかったので(今見たらあったw)久々に物理書籍で読書。夏休みの課題図書だなぁということで、家族旅行での新幹線とホテルで一気読みさせていただきました。

    恩師・田澤耕先生の若かりしきころから直近までの、スペイン、そしてバルセロナやカタルーニャ語との出会いとそのストーリー。何を隠そうこの杉本渉、晴れある田澤ゼミ1期生かつ田澤ゼミOB会長でもあるので、7割ぐらいのあらすじは直接お伺いしていましたが、それでも「ああ、あの時の話はそんな風に考えて行動されたのか」という場面が多数あり、同時に田澤先生らしい知的な情報がそこここに撒かれてあり、そしてやっぱり人生は物語なんだと感じる数々の出会いに驚き、とても楽しい読書時間を過ごさせてもらいました。

    特に学生時代にも伺ってきた銀行員時代のエピソード、正直現役生のころは自分自身働いていなかった(いや、正直いまでも「ちゃんと働いている」のかは相当怪しいw)のでピンときてなかったですが、あの時代に銀行を辞め、そしてカタルーニャ語の世界にたどり着くまでの期間はとても不安で、でもとてもチャレンジングで、なんとも言えないごちゃ混ぜの充実度だったのだろうなと改めて実感。自分に置き換えた時に幼い子供たちがいながら同じような挑戦ができるのか、少なくともやろうと空想・妄想ぐらいはしているのか、そんなことを問いかけられ、むくむくと挑戦心を刺激されました。

    書籍の中には出てきませんでしたが、先生との社会人になってからの思い出はカタルーニャのテレビ局の番組をもとにした『素顔のバルサ』という写真集を出版されたときに、そのプロモーションのお手伝いをスポナビ時代にできたことでしょうか。当時絶頂を迎えていたバルサを、もう少しだけカタルーニャ側に寄せるような、まさに田澤先生にしか書けないコラムを寄稿いただきました。今、改めて最後の「あとがき」部分を読むと、サッカー本にはあるまじき(⁉️)カタルーニャの歴史が絶妙な文量で掲載されていて、バルサを入り口にカタルーニャを知ってもらいたいという田澤先生の試みがとてもよく見て取れます。お礼にとミシュラン星を持つサンパウのランチに連れて行っていただいたのが、とてもうれしかったのを思い出されます(おしゃれなガスパチョが死ぬほどおいしかった!)。

    「杉本くんは、サッカーの仕事をするのがいいと思う」。就職活動もせず南米を旅し、アルバイトの身分のままなんとなく大学を卒業。それまで全然勉強してなかった癖に「大学院に行きたいんです」とおバカな話をしたときに、すっと先生から言われた言葉です。今後の人生をどうしたらいいか、露頭に迷っていた杉本青年は恩師の言葉に「そうだよなー、スポナビでの仕事を頑張るかー」と素直に従い、すくすくとスポーツ界でキャリアを重ね、なぜだが今はJリーグで働かせてもらっています。

    カタルーニャ語はもちろん、もうほとんどスペイン語もしゃべれませんが、あの時に背中を押してもらったからこそ今があり、ビビりながらもチャンスが来たら飛び込む姿勢はちょっとだけ先生の銀行時代の挑戦心に似たものを発揮できてるかななんて思いつつ、また何かのタイミングで再読したいなと思います。

  • 大学教員になる方法や、大学院での研究テーマの見つけ方、研究者の学問探究の方法がよくわかった。面白かったし、参考になった。

  • ふむ

  • ひょんなことから、スペイン、カタルーニャの事を調べてたら、たどり着いた本。
    カタルーニャ州はスペインの東に位置してる州で、スペイン政府との対立について、見聞きしたことはあった。
    この本はカタルーニャ州で話されているカタルーニャ語の研究者の本で、彼がどのような経緯でカタルーニャ語に目覚め、日本との橋渡しになっていったかが描かれてます。
    熱中熱狂する事、日本以外で暮らす事、家族とのあり方、海外の文化へ溶け込む事など、学ぶべきことが多い良書だった。
    著者は亡くなられたけど、次世代に生きる人々が彼の残したものを引き継ぎ、伝えることが大事だと思った。
    素晴らしい本だった。

  • 本を読み終える最後まで、
    彼が亡くなった方だとは知らなかった
    スペイン語を学習するものとして、
    バスクについて知り、
    バスクの目線から見るスペインは、新しかった
    彼の、切り開いて行く力は
    好奇心が駆り立てている不動のパワーであり、
    それを理解するパートナーがいることは支えである

  • ちっちゃい言語の方が極めれば勝機はある?
    とりあえず今の自分では難しいかな?と思ってもやってみる。ライバルが少ないんだから質が低くてもなんとかなる。

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著者プロフィール

1953年生まれ。現在、法政大学国際文化学部助教
授。カタルーニャ語・文化専攻。著書:『カタルー
ニャ50のQ&A』(新潮社)、『カタルーニャ語文
法入門』(大学書林)訳書:『バルセロナ・ストー
リーズ』(水声社)、『バルセロナ』(新潮社)

「1999年 『引き船道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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