毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集
- 左右社 (2022年9月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865280999
感想・レビュー・書評
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約370ページ、1ページにつき一首。これまでの作品を網羅した歌集。どこか皮肉や毒気のある歌には共感しかない。簡単な言葉で印象に残る歌が数多い。現代短歌・歌人につながる最重要作品。
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心に染みるものがあった。
良い歌を自分用に保存しようかと思う -
初めて読んだのは書評キッカケなので、宣伝文句でうたうように、、短歌ブームのキッカケなんてことはしらなかった。
短歌って、コピーと似てる。あの文字数にいろんなものをいくらでも封じ込めることができる。うまく言ったもんだ、面白い言葉遊び、核心をつかれてニヤリ、心が痛む、人生がノっているな、かなりどん底まで落ちてるな、など、読み手の心象が伝わってくるのであった。語られる世界に騙されているのかもしれないけれど、それもまた物語としてよし。 -
本書のタイトル「毎日のように手紙はくるけれどあなた以外の人からである」
最後の方に出てくる短歌「会いたくて会えない人はあなたには会いたいなんて思ってません」はアンサーソングのようだけと、違うのだろうか?
読むタイミングによって刺さる短歌は違うので、何度も楽しめる本。 -
圧倒的な本でした。
25年か、或いはもっとなのかわかりませんがその年月の枡野浩一さんの歴史を走馬灯のように見える壮大な一冊であり、1ページに一首という贅沢な構成からそのひとつひとつを丁寧に考えながら読めるので、漱石の草枕のようにどこから読んでも味わい深いものになるはず。
読書が好きでない人でも、1ページ分の文字の分量が少ないので読みやすいし、万人におススメできる本じゃないかと思いました。
装丁もムック本のようで飾らないあっさりとしており、周囲も、段差のないカットが手に取ったときに読みやすい。
すべてにおいてよい本でした。
紙をもっと薄くしてもっと載せる事も考えられたでしょうが、それをしないのは理由があったのだろうと思っています。 -
枡野浩一(1968年~)氏は、歌人、詩人、小説家、エッセイスト。
私は50代の会社員で、近年短歌に興味を持ち始め、俵万智、穂村弘、東直子、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら等の歌集や短歌入門書、また、山田航の『桜前線開架宣言』、瀬戸夏子の『はつなつみずうみ分光器』、東直子/佐藤弓生/千葉聡の『短歌タイムカプセル』等の現代短歌アンソロジーを読み、1年ほど前から投稿を始めた新聞歌壇では、複数の歌を選んでいただいてもいる。
枡野氏については、これまで、上記の『はつなつ~』と『短歌タイムカプセル』の収録分、歌集『ハッピーロンリーウォーリーソング』(既に絶版なので中古で入手)、入門書『かんたん短歌の作り方』を読んできたが、今般行きつけの大手書店で出版されたばかりの本書を目にし、早速入手した。
枡野氏は、『はつなつ~』の中で、短歌を詠まない人(=歌人以外)にもわかるように短歌をつくっており、それが「かんたん短歌」(糸井重里が命名した)と呼ばれていると書かれ、また、穂村弘の『短歌という爆弾』の中では、「歌壇に完全に背を向けて存在感を維持できた初めての歌人」、「比喩ってかっこ悪いよねとか、これまでポエジーを支えるとみなされていた要素を否定してみせた」などと評されているのだが、それ故に(逆説的に、とも言えるが)、短歌の素人・初心者にはシンプルに「共感」や「納得感」を抱きやすいし、自らの作歌の参考にもなる。
また、私は、若手の木下龍也と岡野大嗣が好きで、彼らのような歌を作りたいと思っており、それは、彼らの歌が、近代短歌(現代短歌の多くもそうだが)の主流である、自分の存在を詠う“私小説的”な歌とは一線を画し、「ふとした瞬間に兆した感情を共有すること」を目的としたポストモダン的な歌だからなのだが、枡野氏が、最近の穂村弘との対談の中で、木下や岡野の作風は自分と近いと語っていることも、半分納得し、興味深く感じた。(ただ、木下や岡野は枡野氏よりもライトかつポジティブな印象の歌が多い)
本書で改めて枡野短歌を味わいたいと思うと同時に、枡野氏のような(歌壇に背を向けた)歌人が新聞歌壇の選者になったら面白いのではないかと思ったりもした。
(できれば、1頁に1首ではなく5首くらい載せて、薄い本にしてもらえると有難かった) -
詩が好きだ。
っていうと、格好つけてると言われたことがある。
理解できないような文章を、
自分なりの解釈ができる詩が好きだ。
きっとこの詩はこんなふうだとか
そんな風に考えれることが好きだ。
枡野さんの詩は、日常だ。
日常の中でふと思ったことをそのまま文字にしたような文で。
それは安直でも稚拙でもなくて、素直な気持ち。
綺麗な言葉にしてるわけでもない。
ふと思ったことを書いているから、
なんとなく分かるなって思うものが多くて面白い。
「死にたい」とか「好き」とか
そんなことをなんか寄り添って言ってくれてる気がする。
何が好きだっていいじゃんか。
私は私の好きを詩の中で見出してるだけ。 -
最高にスッキリする。
いや、モヤっとする短歌もある。
自分に当てはまるもの、知人にこういうひといるよねっていうもの。この本を、誰かにプレゼントする場合は「これ、あなたみたい!」と付箋をつけてから渡したい。わたしにとってはそんな特別な本になった。
はじめから順番に読むのもよし。
開いたページから読むのもよし。
本を(活字を)読むのが苦手なひとは、短歌集から入ってみるのもいいのかもしれないなぁ、とも。 -
図書館にて。
年明けに大きい本屋に行ったとき、平積みされていて手に取った。
失礼ながら知らない方だったが、表題の短歌がすごく良くてどうしても読みたいと思い、図書館に注文してみた。
すごく良かった。好きな歌も嫌いだなと思う歌もあったが、そのどれもが良かった。
ウィキでこの方の経歴などを見てみたが、そういえばかなり昔に南Q太さんの本で出てきた元夫の人がこの人だったらしい。
この本にも離婚のごたごたが書かれている場面が出てくるが、あれがこれかとつながった。
この本を読んでいると、私にも書けるかもしれないと思う気持ちが分かる。
思うことを簡潔に表現するということはとても難しく、それをわかりやすい言葉でわかりやすく読むというのは本当に難しいと思うので、それを簡単に見せるというのは選ばれた人にしかできないことだと思う。
ほめているけれど、決して上から言っているつもりはないです。(この本の中にそういう歌があった)
手元に欲しい本だと思う。