ウォークス 歩くことの精神史

  • 左右社
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865281385

感想・レビュー・書評

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  • 歩行の歴史を語るなかに作者が散歩をするモノローグが挿入され、まさに思考がふらふらと歩き回るような過程をたどる。
    歩く対象としての自然が庭から山まで様々なかたちに変奏・解釈され、果てに歩くことのできない郊外にたどり着くのが特に興味深かった。

  • 然るべき時に、じっくり読みたい。
    今じゃないかな。

  • (01)
    誰もができることとは言えないまでも,多くの人間たちが行うことができることとして「歩くこと」が本書では取り上げられる.全17章は,プロローグやエピローグにあたる部分を除けば,ほぼ時代を追う構成となっている.
    古代ギリシアの哲人たちや近代のルソーやキェルケゴールといった哲学者たち,無文字の時代に直立で歩かれた痕跡,神話や巡礼に現れる歩行,フランス庭園からイギリス風景式庭園で歩かれた記録,庭園を離れ歩き出したワーズワース(*02)らの一群の逍遥,アメリカ大陸東部のソローらの歩行活動(*03),登山や記録に挑戦する徒歩旅行,産業革命を経た都市から歩き出す労働者たち,ディケンズのロンドンやベンヤミンのパリ,革命や運動としての歩行から女性が歩行することの危険,現代芸術が示そうとする復古的な歩行やラスベガスのディストピアのような歩行空間まで,著者の実体験ともいえる歩行の記憶から,文学や随筆といった記録までを扱い,歩くことの単純さと複雑さを一編のアンソロジーとして編み上げている.

    (02)
    ワーズワースともなると歩きながら詩作を練っていたというにとどまらず,歩きながら詩を実際に書き留めていたというエピソードは面白い.現代芸術に触れた章において,歩くことの軌跡が文字のように働き,歩くことがそのまま大地に何かを書く/描くことであることを示している.

    (03)
    歩くことは抵抗の表現でもあり,囲いこまれようとする風景へとアクセスする権利闘争として,特にイギリスでは意識されている.その一方で,著者は現代の歩行はジムに囲われた運動として「トレッドミル」として譬えられるような皮肉な労働としての歩行をも見ている.そこには,現代において歩くことの難しさも指摘されており,女性が夜に歩くことへの安全保障を社会に呼び込むことにもひとつの光明をみている.

  • 借りたけど買い直す。大作というよりは、歩くことをテーマにあれこれ考えを巡らせた短編集という感じで、読みやすい。言及されている時代、国、テーマは幅広く、そこはさすがのソルニットなのだが、だからと言って小難しいことを言っているわけでもない。
    図書館への返却期限が迫っていたので急いで拾い読みにしてしまったけど、手元に置いておきたい。

  • 「説教したがる男たち」「暗闇のなかの希望」が面白かったいきおいで、ソルニットの主著(?)ともいえる「ウォークス」を読んでみる。

    500ページと分厚いうえに、かなり圧縮度の高い文章がつづき、ボーと読んでると、すぐに文脈がわからなくなる。というわけで、結構な集中度を要求する。

    内容としては、「歩く」ということについて、古今東西、いろいろなジャンルを横断しながら、縦横無尽に「歩いていく」感じかな〜。

    たとえば、「逍遥」派(?)のアリストテレス、「孤独な散歩者」のルソー、ワーズワース、ベンヤミンとある程度予想がつくところを超え、人類が二足歩行になることが脳の進化を促したといった人類学、考古学的な諸説の紹介。巡礼の旅やロマン主義的な自然への憧れ、都市の彷徨。デモンストレーションや革命。そして、「歩くこと」が衰退に向かっていると思われる現代と未来に向けての洞察などなど。著者が住んでいるサンフランシスコの自然散策でスタートするこの本は、なぜかラスベガスの大通りを歩くことで終わる。

    こういう話だったら、松尾芭蕉とかも関係あるな〜と思っていたら、ちゃんと「奥の細道」の話がでてきたり、北斎の富嶽三十六景がでてきたり。

    本当、「歩く」ということによく調べているな〜。

    いろいろ面白い話が満載なのだが、一番、感動したのは、チェコの「ビロード」革命のところかな。

    この辺のところは、前に読んだ「暗闇のなかの希望」と通じているところで、また女性が夜歩くことについての話は、「説教したがる男たち」につながっていく話。

    やっぱ、こういうのが好きなんだなと改めて思った。

    ちなみに、原題は"Wanderlust: A History of Walking"で、「ウォークス」という言葉はでてこないな。直訳すると「旅への渇望 - 歩くことの歴史」。

  • 歩くことの歴史をたどり、その意味、メタファー、文学作品の中に現れる場面と効果などを丁寧に考察しようとすれば、これくらいの枚数(490ページ)は必要になるだろう。

    なるほど『偏見と自負』でも、歩くことは大きな意味を持っている。
    また、歩行に関する慣用句やタイトルが多いことや、女性が街を自由に歩くことが許されなかった時代があったこと、など、歩くことは物理的運動的に前進することだけでなく、文化的にも権利的にも、大きな意味を背負っているとわかる。

著者プロフィール

レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit):1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。アカデミズムに属さず、多岐にわたるテーマで執筆をつづける。主な著書に、『ウォークス歩くことの精神史』(左右社)、『オーウェルの薔薇』(岩波書店)がある。

「2023年 『暗闇のなかの希望 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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