ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春

著者 :
  • 鉄人社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865372601

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  • 歌舞伎町の大久保公園周辺にて、路上売春(所謂、立ちんぼ)を行う女性8名のインタビューに加えて、新宿という土地と売春行為の繋がりを歴史的な経緯から辿る一冊。

    新宿の路上にて、自身の身体に手頃な値段を付けて容易く売り払ってしまう女性達。月並みな言葉になるが、「もっと自分の心と身体を大事にしなよ……」と思う。けれど、それが出来ない。彼女達の話を聞くと、いずれも親の虐待や育児放棄、経済的困窮から「愛された記憶がない」と語っている。最も身近な人間と、十分な愛情や信頼関係を築くことができなかった女性達。ゆえにそれが仮初であっても、ホストから愛情らしきものを示されれば、それを全ての拠り所にしてしまう。そうして幼少期に出来た心の穴を今必死に埋めようとしているのではないか。それを思うと、哀しい。

    中でも、最終章で書かれた立ちんぼで日銭を稼ぐ60〜70代の老女の話は本当にグロテスクだった。路上に立って来るとも知れない客を待ち続けるなど、年齢的にも体力的にも限界だろうに。これまでの人生において売春以外での生計を立てる術を知らないから、彼女は未だに新宿の路上にその身を置いている。
    だが現在の新宿はホスト・メンコン文化の拡大により、10〜20代の若い素人女性が多数やってきては手頃な値段で春を売る。そのような売春を好む客にとっては好環境の中、地面に蹲る白髪混じりの哀れな老女の需要はほぼないに等しい。たまに物好きな客や、超熟女好きがやってきて商談が成立することもあるようだが、それが常ではない。客が捕まらずに実入りがなかった日は、ネットカフェに泊まることすらできず、雨風を凌げる場所を探して街を彷徨っているそうだ。その情景を想像するとなんともうら悲しい気持ちになる。
    おそらく著者の見立て通り、彼女はなんらかの精神的な病を患っている可能性があるだろうが、本人に病識がなく治療も希望していない場合はこちら側から医療や福祉に繋ぐことはできない。それもまたもどかしい。
    携帯も4年前に解約されたきり、成人して独立した一人娘とは一切連絡が取れていないようだ。「元気でいるか、コロナにはなっていないか。自分ではなく娘のことだけが気がかり」と語る老女からは、路上に立つ見窄らしい姿の彼女からは窺い知れない「母親」の一面が垣間見える。わたしが彼女に出来ることなどは何もないのだろうが、せめて著者同様に、彼女にはどうか元気でいてほしいと願う。そればかりだ。

  • いたましい。
    60代と見られる街娼の方のインタビューは、読んでいるこちらの心が砕けてしまいそうなほど、ただただ、いたましいものだった。

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著者プロフィール

ノンフィクションライター。風俗専門誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)ほか。

「2021年 『覚醒剤アンダーグラウンド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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