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- Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865780796
感想・レビュー・書評
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時代区分は本当に必要か
西洋中世史の大家である、ジャック・ル・ゴフの作品である。歴史を語る上で、時代区分というものはやはり、便宜的なものにすぎない。そういった意味で、現在の時代区分というものには、十分に疑問の余地がある。筆者が主に疑問を提示するのは、中世と近代の間、いわゆるルネサンスの革新性である。たしかに、ルネサンス期は一つの転換期とみなすことが出来るが、12世紀ルネサンスや商業革命の起こりと比較した際に、そこまで大きな転換とは言えないのではないか。それに、領邦国家化が進んでいくのも13世紀頃であり、ルネサンスを新時代への幕開けとした時代区分には、やはりルネサンス期に人々の政治的な思惑(中世をさげすむことで、自分の時代を上位とみなす)があると考えうる。そもそも、当時の人に時代の解釈としては、末法思想のように、キリストから遠ざかるにつれて、闇の時代に入っていくというものであった。それを、いわゆる進歩主義的な、上向きのベクトルに転換させたのは18世紀あたりの新旧論争であり、人々の心性から見ても、ルネサンス期に大きな転換は見られない。上記のことを踏まえ、筆者は、産業革命期までの間を「長い中世」として提示し、時代区分に対してあらたな見方を提供する。
全体として、とても面白い本であった。ル・ゴフの作品はまた読みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示