- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784866809366
感想・レビュー・書評
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初版2024年
やや長文です。
第1章 ジャニーズ事務所
ジャニーズ事務所創業者・社長の故ジャニー喜多川氏の性加害事件についてで、報道されている通り。明るみに出たのはつい最近であるが、芸能・マスメディア関係者の間ではジャニーズには忖度するという暗黙の了解があり、口を閉ざすことが慣行されていた。芸能界史上とてもインパクトが強い事件。森永卓郎はジャニー氏に女性と同じように魅力的な男を嗅ぎ分ける力があったと分析している。事件が闇の中であったのに、明るみに出た今ジャニー喜多川氏が死去していることがまた更に輪をかけて闇の中にあり、ブラックホールの存在のような事件になってしまったと感じる。
第2章 ザイム真理教
前著『ザイム真理教』と少し視点を変えて述べている。以下引用を多めに述べる。
この30年間、先進国では、日本だけが経済成長をしていない。統計データをきちんと見ている経済学者なら、その最大の原因の1つが緊縮財政であることは、みなわかっている。だから、まともな経済学者は、財政緊縮路線を批判する。
ただ、私には不満があった。それは、なぜ財政緊縮が行われているのかという分析がないことだ。
(略)
私の答えは明確だ。それは財務省が「宗教」を通り越して、「カルト教団」になっているからだ。
(p67)
2020年度末で、国は1661兆円の負債を抱えている。しかし、国は同時に資産も1121兆円持っている。政府がこんなに資産を持っている国は、日本以外にない。
(略)
2020年度の名目GDP(国内総生産)は527兆円なので、GDPと同じ程度の借金ということになり、これは先進国では、ごくふつうの水準だ。
(略)
通貨発行益も含めて考えれば、日本は現在、借金ゼロの状況になっているのだ。
にもかかわらず、財務省は「財政赤字を拡大したら、国債が暴落し、為替が暴落し、ハイパーインフレが国民を襲う」と国民を脅迫する。だが、アベノミクスが図らずも、それが間違っていることを証明してしまった。
新型コロナウィルス感染症の拡大で、(略)税収を上回る赤字を出したにもかかわらず、国債の暴落も、為替の暴落も、ハイパーインフレも、まったく起きなかったのだ。
(p69,70)
そこには、財務省内での人事評価が大きく関わっている。
増税を実現した財務官僚は高く評価され、その後、出世して、天下り先が用意される。
一方、財政出動をした結果、経済が成長して、税収が増えたとしても、財務官僚にはなんのポイントにもならない。だから、財務官僚は増税のことしか考えない。財務省の思考には、経済全体の視点や国民生活のことなど、まったく入っていないのだ。
(p71)
結果として、新聞でもテレビでも、「日本の財政は世界最悪の状況であり、消費税を中心とした増税を続けていかないと、次世代の禍根を残す」という根拠のない神話が繰り広げられていく。メディアがそうであれば、多くの国民が騙されてしまうのも仕方がないことなのだ。
(p73)
財務省は、消費税の引き上げなどの増税策ばかりを示して、経済規模拡大による税収増というビジョンはほとんど出てこない。いったいなぜなのか。
増税を実現した官僚は栄転したり、よりよい天下り先をあてがわれる。(略)一方、経済規模を拡大して税収を増やしても、財務官僚にとってはなんのポイントにもならない。
(p79)
日本のメディアでは、財務省批判は絶対のタブーだ。それは財務省が独裁者だからだ。(p101)
教科書には、「日本は、司法と立法と行政がそれぞれ独立する三権分立」だと書かれている。しかし、エリート中のエリートである財務官僚だけは別だ。彼らは司法の上に立ち、政治家を洗脳することで立法の上にも立っている。その地位は絶対君主に等しい。(p111)
国民は財務省の官僚を選挙で選んだわけではない。国民に選ばれていない人が、国権の最高権力者として君臨するという統治機構は明らかにおかしいのだ。(p114)
私は、ザイム真理教問題を解決するためには、(略)財務官僚の究極の目的である天下りを完全禁止するとともに、彼らの権力の大きな源泉となっている国税庁を完全分離することだ。(p114、115)
財務省という公務員最難関の組織に属するのは、最高権力者の座に就くことである。財務省は国のためというよりも、自身の保身のために行動してしまう。そして彼らの言うことを国民は盲信しているので高い税金を払うことに疑問を感じないという現状が作られてしまった。
第3章 日航123便はなぜ墜落したのか
大抵の日本人は御巣鷹山への墜落だと思っていた日航123便が、実は自衛隊機による撃墜であったという衝撃的な結論で、頑なにボイスレコーダーは公開されていないという事実。
撃墜が事実として第4章で語られることに続く。
御巣鷹山に墜落した航空機事故の真相は、ボイスレコーダーの公開を待たなければならない。
第4章 日本経済墜落の真相
日航123便の墜落からわずか41日後、プラザ合意があり、日本は円高になり、輸出品が売れなくなって、経済不況になる。
さらに、墜落からほぼ1年後、日米半導体協定の締結。目的は2つ、価格設定はアメリカ、もう1つは国際法を無視してまでの、日本市場で外国製品のシェアを5年以内に20%以上にするという合意。
凋落のきっかけとなった。
これらの政策決定の背景には、墜落事件があり、日本政府は日航123便の墜落の責任をボーイング社に押し付けたことになり、顔に泥を塗ったのだから、大きな見返りが必要になる。それだけではなく、日本政府はバレたら、政権が確実に崩壊するほどの大きなウソをついてしまった。だから、「123便のことをバラすぞ」と脅されたら、なんでも言うことを聞かざるをえなくなってしまったのだ。
日米構造協議は交渉なのに全部アメリカの言いなりになんでも受け入れる。対米全面服従。
プラザ合意による超円高の後、日本経済は深刻な景気後退に突入。
日航123便の事故をきっかけに日本経済は30年間悪夢を見続けたという見立てで、説得力ある。
あとがき
この30年間、日本経済は転落の一図をたどった。私は原因は2つだと考えている。1つは財務省による財政緊縮政策。財政をどんどん切り詰め、国民の生活を破壊する。前著『ザイム真理教』に詳しく書いた。
そして、もう1つが日航123便の墜落事故に起因する形で日本が主権をどんどん失っていったという事実。国の経済政策をすべてアメリカにまかせてしまえば、経済がまともにうごくはずがない。
発想を変えれば、コックピット・ボイスレコーダー、そしてフライトレコーダーは現物が残されている。原因を国民の前に明らかにする。これだけで日本は主権を回復する独立国家への道を歩むことができるようになるはずだ。
ジャニーズの事件はとても重いが分かりやすい。ザイム真理教については前著と本書とを合わせて、独裁の怖さが伝わる。日航123便墜落事件は初めて真相を知った。墜落事故に隠された新事実によって日本経済も大きく墜落。物事に直面した時何でも疑ってかかる必要があるが、森永卓郎の読みは正しいと思いたい。嘘のような本当のような、それでいて衝撃的な、そして口にすることも憚れることを本に書くのには相当勇気が必要であったであろう。真相を語る才能に恵まれた森永卓郎がすい臓ガンのステージ4であることは寂しく思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第三章「日航123便はなぜ墜落したのか」
読んでいて胃とか腸とか
あらゆる内臓が
ギューッと縮むようでした。
日本でこんなことが?!
ロシアや北朝鮮じゃなくて?
関係者は、正しいと思っているなら
ボイスレコーダーやフライトレコーダーを
公開すべきです。
森永さんみたいにいろんな知識があると
知ってしまったために心が砕かれることが
たくさんあったと思う。
笑顔で能天気に見えるけど
実はいろんなことで心を痛めていて
その結果すい臓がんステージ4に
なってしまったのでしょうか。
どうかお元気なうちに
たくさん書き残してほしいです。
もしかして最近体調が良いのは
こうして毒を吐き出しているから?
このままお元気になって
完治してほしいです。 -
なかなか骨太の一冊であった 先にザイム真理教を読んでいたのでなんとなく二番煎じなのかなと思っていたがジャニーズ事務所と日航123便墜落事故の裏には何かを感じさせられるものがあった果たして真相は?日本の経済問題はやはり難しい!汗かきながらながら読了!森永氏の遺書としては余りにも重すぎる!
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ここのところなんだか日本がおかしい…とずっと感じてきたことが、ここには書いてあった。
自分にそれだけの知識がなさすぎて、一概に「その通りだ」とは断言できないが、著者が命を賭して書いたというだけの熱量がここにはある。
この本の内容を参考に、何が正しいのかをしっかりと判断していきたいと思った。 -
難しいことはわからない私がこの本を読んで学んだこと。それは、
"保身"は人の命さえ奪えるということ。しかも、"正当"に。
だから、
大きなお金も動かしてないし、ジャニーズにも飛行機にも関わってない私ができることは、
間違いを素直に認められるような社会にすることだと思う。そうすれば保身なんてしなくてすむ。
間違いをした人を責めたり、徹底的に潰しにかかるのをやめること。許してゆくこと。
そして、自分も保身をしそうになったときに、その選択をせず、間違いを認めること。
それで潰される環境なら、そんな環境からは身を引くこと。
変化が怖くてもね。
それしかできないけど、それはできる。 -
モリタクさんの本は、読みやすく、かつ信憑性が高いと思っている。
私も長年、日航123便の事故に関しては疑問(モヤモヤ感)を持っていた。
1980年頃に、柳田邦男氏の「マッハの恐怖」など、航空機事故関連の本を多読し、この日航123便の事故調査報告には、まったく納得していなかった。
高度8000m近い上空で圧力隔壁が破損したのなら、瞬時に空中分解するはずなのに、 と。
研究開発分野に30年以上従事してきた技術者である私にとっては、絶対に裏になにかがあると思っていた。
きっと本書の内容が真実なのだろう。
今の日本経済の低迷も、ある意味 この日航123便事故に起因するかもという帰納法的記述も頷ける。
後味の良い本だった。 -
モリタクさんは、ニッポン放送のラジオでたまに聴くので、あのテンションを想像してましたが、さすがに文章力、展開力、そして説得力のある文体と内容でした。話すより書く方が学者っぽい。
ジャニーズから財務省、そして日航機までテレビやネットではここまで掘り下げられない書物の力を感じる。真実を突き止めるのが、全てにおいて正しいのかわからないが、真実を知る権利は誰もが持ってるのが民主主義だと思う。
時代の変遷を経てもなお、社会に問う姿勢はかっこよさを感じた。 -
思ったより読みやすく、スイスイ読めた。
内容は実におそろしい。