事件現場清掃人が行く

著者 :
  • 飛鳥新社
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本棚登録 : 188
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784870319943

感想・レビュー・書評

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  •  少し前に出た『遺品整理屋は見た!』(吉田太一著/扶桑社刊)の、あからさまな二番煎じ。

     著者は「事件現場清掃人」を名乗っているが、べつに警察から委託されているわけではなく、業務内容は遺品整理屋と一緒だ。すなわち、部屋の主が自殺や孤独死を遂げたアパート/マンションの一室を清掃・リフォームする会社。その経営者が、仕事の舞台裏をエッセイ風に明かした本なのである。

     けっして悪い本ではない。むしろ、内容はよくまとまっている。ただ、類書の『遺品整理屋は見た!』を読んだあとではインパクトが薄いし、違和感を覚える点もいくつかある。

    ●違和感その1.
     「特殊清掃」の手順や使う道具などを、あまりにも詳細に説明しすぎ。
     「試行錯誤の結果、二酸化塩素を成分とした除菌・消臭剤を開発しているバイオフェイスという会社に出合いました」とか、「特殊清掃業者には、除菌・消臭にオゾン脱臭機を使用しているところが多い」が弊社は使わないとか、大半の読者にとってはどうでもよいことがダラダラと書かれている。
     
    ●違和感その2.
     同業他社との違いをくどくどしく説明しすぎ。
     他社が消せなかった孤独死現場のニオイを、弊社の技術なら完全に消すことができる……などと強調するくだりがやたらと目立つ。

     1と2を要するに、本書は著者の会社の広告にすぎない――としか思えない。営利企業の社長が著書を出す以上、宣伝的側面があるのは致し方ないとしても、本書はその点が露骨すぎ。

    ●違和感その3.
     第七章の小見出しの一つに「お風呂で煮込まれたお婆さん」とあり、強い不快感を覚えた。編集者かライターがつけた小見出しだとは思うが、あまりにひどい。
     著者は本書でくり返し、“「特殊清掃」をする際には亡き部屋の主に対する哀悼の念を忘れずに臨む”とか言っているのだが、人の死を嗤うような無神経な小見出し一つで、全部台無し。

     ……と、いろいろケチをつけてしまったが、孤独死の現実をまざまざと伝えて読者をハッとさせるくだりもある。たとえば――。

    《孤独死をするのは年金暮らしの老人が多いと思われるかもしれません。
     ところが実際には、五~六十代の男性が多いのです。
    (中略)
     孤独死で老人がそれほど多くないのは、具合の悪い人は病院に入院している場合が多いのと、お年寄りの場合は普段から周囲が気にかけていることが多く、姿を見かけなくなると「どうしたんだろう?」と心配される立場にあるからだろうと思います。
     しかし五○代の「働き盛り」では、しばらく姿が見えないとしても、「きっとどこかに出掛けたんだろう」くらいにしか思ってもらえません。》

    《死臭には男女の違いはありません。
     ただし、年齢による違いはあります。おそらく、若い人に比べると老人は体についている脂肪と水分の量が少ないために、いくらか死臭が弱いようです。》

    《特殊清掃という仕事がビジネスとしてはじまったのは二○○二年頃といわれています。超高齢化社会を迎え、単身世帯が増加し、自殺者の数が高いままの現在、ビジネスチャンスをにらんで、新規参入する業者が最近どんどん増えています。》

  • 孤独死・自殺の後、残された部屋には痕跡が残される。布団を突き抜け、畳を染め上げ床のコンクリートにまでしみ込んだ形は、かつて人だったとは思えないほど”穢れ”の印象しか与えない。だからこそ身内でさえ直視することを拒否し、現場清掃屋さんにまかせっきりなのだろう。むしろ迷惑をかけられたと憎む人もいる。いやだなあ…私もいつかこうなっちゃうのかな。

著者プロフィール

1971年沖縄生まれ。料理人、内装業者、リフォーム会社等を経て自殺・孤独死・殺人現場などを扱う「事件現場清掃会社」を設立。2010年に、その知られざる事故現場のエピソードを紹介した『事件現場清掃人が行く』(飛鳥新社)を発刊。孤独死をなくすことを自らの使命に課し、きょうも精力的に活動を続けている。

「2020年 『事件現場清掃人 死と生を看取る者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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