わが闘争: 不良青年は世界を目指す

著者 :
  • イースト・プレス
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本棚登録 : 57
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784872575668

作品紹介・あらすじ

日本で最高の「カリスマ」と呼ばれる男が、2年5ヵ月3日間の刑務所生活から生還した。角川書店時代の父との確執、「出版革命」と称された経営術、麻薬事件、社長追放劇、そして弟との決別…。波瀾の人生のすべてを語る。

感想・レビュー・書評

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  •  角川春樹が、生い立ちから現在までを語りおろした本。
     と学会の「日本トンデモ本大賞2006」にもノミネートされたほどぶっ飛んだ内容だが、けっこう面白かった。

     「トンデモ本」扱いされているのは、第2章で著者のオカルティックな側面が全開されているため。UFO目撃体験とか、自分の“霊的パワー”について大マジメに語っている。
     いわく――。

    《自分を「歩く神社」のような存在だと思っている。つまり、おれが移動すると、そこに一種のおれの精神パワーの領域ができる。(中略)台風にしても、おれがいればそこは避けて通る》 

     ううむ……。だが、こういう部分で投げ出さずに最後まで読んでみると、あとの章は意外にまっとうだ。

     生い立ちを語った章は、とくに読みごたえがある。
     角川書店創業者である父との激しい葛藤、妹の自殺などの悲劇に暗く彩られた青春時代は、「神話的」といってもよいほどドラマティックだ。

     また、角川書店の社長となって「出版界の風雲児」としてのしあがっていくプロセスを語った章も、すこぶる面白い。豪快な武勇伝と意外な舞台裏エピソード満載である。
     たとえば、横溝正史ブームについてのくだり――。
     
    《当時、すでに横溝さんは過去の人になっていて、亡くなったと思っている人が多かった。おれでさえ、最初は亡くなっていると思っていた。遺族に会いに行くつもりでお宅にうかがったのは、一九七○(昭和四十五)年十二月下旬だった。うかがったところ、ご本人が健在だったので、びっくりしてしまった》

     笑える一節をもう一つ引用しよう。

    《(五度目の妻と)慰謝料を三千万円払って離婚した。この五度目の妻を詠んだ俳句は三句、俳句に換算すれば一句一千万円かかったということになる》 

     考えてみれば、私の感性の「土台」は、70年代後半から80年代半ばにかけて角川春樹が作り上げたカルチャーに、かなりの部分を負っている。
     薬師丸ひろ子の大ファンだった私は、少年時代、彼女の「ファンジン」と化していた角川書店の月刊誌『バラエティ』を毎号熟読しており、同誌の幅広い記事によってカルチャーを見る眼の基礎を養ったのだ。

     あのころの『バラエティ』は面白かったなあ。
     たとえば、呉智英の文章を私が初めて読んだのは、『ガロ』でも『宝島』でもなく『バラエティ』でだったと思う。南伸坊も大友克洋も吉田秋生も、私は『バラエティ』で知ったのだ(その後、編集長が替わったら急につまらなくなり、すぐに廃刊した)。

     言ってみれば、私は角川春樹に少しばかり恩義がある。
     だから、いまでも角川映画や「角川商法」(※)を馬鹿にする気にはけっしてなれないのである。

    ※大ざっぱに説明すれば、「メディアミックスによる大規模宣伝で強引に一つのブームを作り上げ、文学だろうが学問だろうが、なんでもかんでもエンタテインメントにしてしまう出版手法」ということになるか

  • 単行本には第6章「角川春樹の世界制覇――角川春樹事務所の経営戦略」と角川春樹年表(発行された2005年までと2008年春の株式公開予定まで)が収録されているが文庫版では割愛されていた。

  • 色んな意味で、ぶっ飛んだ思考回路の人ってことが分かる。

  • 「本の雑誌」の角川春樹特集つながりで。まずは獄中句集「海鼠の日」をひもとき、次は自伝「わが闘争」へ。とにかくパワフル、エネルギッシュ。ハッとする言葉から、思い込みの強さを感じたり、起伏はげしく、魅力を感じつつも、畏れも感じる。どうしようもなく惹きつけられ、ふりまわされ、刺激を受けそう。/おれの「魂」は「スサノオノミコト」である。/敵対したものにもては差し伸べる、しかしそれでも歯向かうなら容赦なく叩き潰す。/ドフトエフスキー「死の家の記録」、シベリアの収容所に入れられた、人殺しから政治犯までの、さまざまな人間を冷徹に観察した記録。刑務所はまさにその縮図/「朝令暮改」というと悪いイメージがあるが、一度決めたことに縛られ改めないのは、新たな発想が沸かないか、頑固か。おれの言う「朝令暮改」は何事にも縛られないことだ/栗田書店の返品倉庫で働きつつ、新宿三丁目でスナック「キャッツアイ」を経営。/父との対話。「人間っていうのは、短所だけ見たってはじまらないですよ」「そりゃそうだ。おまえは欠点だらけだけど、それがおまえの魅力だ」/(見城徹氏と幻冬舎への真正面からの批判は、愛のムチなのか)/不良を通すということは、今後は結婚するつもりはない、生涯独身で。戸籍を入れる結婚という制度は「不良」であることとは矛盾する(その後結婚しているが、これも朝令暮改の一環なのだろうか)/できちゃった結婚はしないぞと33歳でパイプカット/四人の相手と五回結婚したが最も愛したのは戸籍上二ヶ月しか結婚してない二度目の結婚相手

  • 友達にも上司にもしたくないけど、思い込みの力ってすごいな、と思った

  • 角川春樹の半自叙伝であるが、もう五年も前の本である。
    この本を読んでみる気になったのは、角川春樹をゲストに迎えた動画を見て興味を持ったからだった。
    振り棒を3万回振ってもぜんぜん疲れないとか、脳細胞を全開にすることを目指しているとか、あいかわらず信じられない話のオンパレードなのだけど、こういう事を悪びれずに書いてしまうパワーに感動してしまう。
    言っていることは理不尽なんだけど、なぜか元気が出る本である。

  • 地震や式神等を操れる、角川春樹さんの自伝です

  • en-taxiの宗匠ぶりに興味を持って本書を手に取ったが、やっぱりちょっとcrazyな人だと思った。

  • 著者は、日本出版界では、メディアミックスという新しいことをやってのけた角川春樹。正直に、自分を「神」と言い切る様や「UFOが・・・」という下りを読むと、自分的には違和感を覚え、受け入れ難いキャラ。しかし、この著者のパワーを知るにつけ、何かでっかい事をやる人は、尋常じゃないエネルギーを持っているなあと感じる。

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著者プロフィール

昭和十七年一月八日富山県生まれ。國學院大學卒業。父・源義が創業した角川書店を継承し、出版界に大きなムーブメントを起こす。抒情性の恢復を提唱する俳句結社誌「河」を引き継ぎ、主宰として後進の指導、育成に力を注ぐ。平成十八年日本一行詩協会を設立し、「魂の一行詩」運動を展開。句集に『カエサルの地』『信長の首』(芸術選奨文部大臣新人賞・俳人協会新人賞)、『流され王』(読売文学賞)、『花咲爺』(蛇笏賞)、『檻』『存在と時間』『いのちの緒』『海鼠の日』(山本健吉賞)、『JAPAN』(加藤郁乎賞)、『男たちのブルース』『白鳥忌』『夕鶴忌』『健次はまだか』『源義の日』など。著作に『「いのち」の思想』『詩の真実』『叛逆の十七文字』、編著に『現代俳句歳時記』『季寄せ』など多数。
俳誌「河」主宰、角川春樹事務所社長。

「2019年 『角川源義の百句』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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