中華と対話するイスラーム: 17-19世紀中国ムスリムの思想的営為 (プリミエ・コレクション 37)

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  • 京都大学学術出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784876982738

作品紹介・あらすじ

かつてアジアの各地から中国にやってきたムスリム移民の末裔は、時々の政治的・社会的状況に翻弄されながらも、イスラームの信仰を固守して独自の共同体を維持した。そこには、マイノリティとしての生死を賭けた、彼ら中国ムスリムの知的奮闘があった。いかにしてイスラームを、中国伝統思想、ひいては中国社会の現実と調和させるか?「中国的イスラーム」の実像に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 序章、1・5・8章、終章のみ読むことに。/イスラーム法の規定では、夫婦喧嘩の際、夫が怒りにまかせて妻に離縁を口走ろうものなら、それでほんとうに離縁が成立してしまう。イスラーム法と中国の法との矛盾を引き起こす原因。/アラビア語の著書でだが、中国に暮らすムスリムが「戦争の家」に住んでいることを宣言する馬徳新。/その解決法が、妻たちの犯行に対しては罵倒よりも殴打を選べ、なのは、著者のいう通りどうかと思うが、理念と現実に折り合いをつけようとしていたことは確か。弟子の馬聯元は、あくまで中国ムスリムが聖戦にまきこまれないで住むことを第一に考え、そのうえで万が一に備えて合法的な戦闘の進め方を明らかにした。イスラーム法と中国の現実が衝突するケースをあえて問題にし、イスラーム法学に背かぬようそれを解決する方法を真摯に探求していたことを明らかにしたのが第5章。/文明間対話のあるべき姿として、普遍主義と特殊主義のいずれにも偏らない道を模索する場合、中国ムスリムの諸事例は、モデル・ケースとして十分参照にあたいするのではなかろうか。(p.382). また回良玉氏のように、2003年から2012年まで国務院副総理をつとめ、中国ムスリムとして、イスラーム諸国との外交の場で活躍したケースも紹介される。

  • 中西竜也『中華と対話するイスラーム 17-19世紀中国ムスリムの思想的営為』京都大学学術出版会、読了。俗にイスラームは商人の宗教といわれたように、在中ムスリムはイスラーム勃興期に起源をもつ。本書は、アジア各地からやってきたムスリム移民の土着内開花(「中国的イスラーム」)を素描する。

    中国内ムスリムの危機は明朝。「回回は天下に遍あまねし」から一転して、外国人ムスリムの入国が制限される。結果、在中ムスリムは、中国の伝統的思想や中国社会の現実との対応を迫られる。独自性保持と協調が課題となる。

    本書の圧巻はイスラームの「漢訳」における中国伝統思想との対話、そして、近世中国内地におけるスーフィズム(ペルシア語イスラームの中国受容含む)を明らかにした点である。画一的なムスリム認識を原典に即して一新する快著。

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著者プロフィール

1976年,滋賀県生まれ。
京都大学白眉センター特定助教。
京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。博士(文学)。専攻は東洋史学。
京都学園大学非常勤講師,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・日本学術振興会特別研究員(PD)を経て,現職。

主な業績
「清代の中国ムスリムにおけるペルシア語文化受容」(森本一夫 編『ペルシア語が結んだ世界—もうひとつのユーラシア史』北海道大学出版会,2009年)。「イスラームの「漢訳」における中国伝統思想の薫習—劉智の「性」の朱子学的側面—」(堀池信夫編『知のユーラシア』明治書院,2011年)。「中国民間所蔵ペルシア語スーフィズム文献『霊智の要旨』—内丹道教と対話する漢語イスラーム文献『綱常』の一原典—」(窪田順平編『ユーラシアの東西を眺める—歴史学と環境学の間—』総合地球環境学研究所,2012年)。

「2013年 『中華と対話するイスラーム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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