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- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877144371
感想・レビュー・書評
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表題作のみ読了。
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目取真俊短篇小説選集全3巻を読み終えてつくづく思うのは、遅まきながらもこの目取真俊という稀代の作家に出会えて本当に良かったということ。沖縄の埋もれた記憶を暴くのではなく、澱みの底から生身の手の感触を損なわずに掬い出し、空中に揺蕩う鮮やかな熱帯魚に、宵闇に煌めく蛍の灯に、群れて舞い立つ蝶の羽搏きにと浄化する。嘗ては村の共同体で伝承されてきた鎮魂歌は消え入りつつあるが、そうはさせぬと孤独に抗うひとりの小説家の魂の絶叫が轟く。悲しみは染みつき抜けないが「群蝶の木」のゴゼイの清らかな魂を守るためなら引き受けよう。
それにしても目取真俊は、沖縄のおじい、おばあを描くのが素晴らしくうまい。背負った悲しみを内に秘め、終わらぬ戦後を寡黙に生き堪えてきた老人の、生を終える間際(生を終えた後もだ)の表情を、果てない愛情の筆で描写する。どうして心震わさずにいられようか。素晴らしかった。
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