面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ) (目取真俊短篇小説選集3)

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  • 影書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877144371

感想・レビュー・書評

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  • 表題作のみ読了。

  • 目取真俊短篇小説選集全3巻を読み終えてつくづく思うのは、遅まきながらもこの目取真俊という稀代の作家に出会えて本当に良かったということ。沖縄の埋もれた記憶を暴くのではなく、澱みの底から生身の手の感触を損なわずに掬い出し、空中に揺蕩う鮮やかな熱帯魚に、宵闇に煌めく蛍の灯に、群れて舞い立つ蝶の羽搏きにと浄化する。嘗ては村の共同体で伝承されてきた鎮魂歌は消え入りつつあるが、そうはさせぬと孤独に抗うひとりの小説家の魂の絶叫が轟く。悲しみは染みつき抜けないが「群蝶の木」のゴゼイの清らかな魂を守るためなら引き受けよう。

    それにしても目取真俊は、沖縄のおじい、おばあを描くのが素晴らしくうまい。背負った悲しみを内に秘め、終わらぬ戦後を寡黙に生き堪えてきた老人の、生を終える間際(生を終えた後もだ)の表情を、果てない愛情の筆で描写する。どうして心震わさずにいられようか。素晴らしかった。

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著者プロフィール

1960年、沖縄県今帰仁村生まれ。琉球大学法文学部卒。
1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。1986年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。1997年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞。
著書:(小説)『目取真俊短篇小説選集』全3巻〔第1巻『魚群記』、第2巻『赤い椰子の葉』、第3巻『面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)』〕、『眼の奥の森』、『虹の鳥』、『平和通りと名付けられた街を歩いて』(以上、影書房)、『風音』(リトルモア)、『群蝶の木』、『魂込め』(以上、朝日新聞社)、『水滴』(文藝春秋)ほか。
(評論集)『ヤンバルの深き森と海より』(影書房)、『沖縄「戦後」ゼロ年』(日本放送出版協会)、『沖縄/地を読む 時を見る』、『沖縄/草の声・根の意志』(以上、世織書房)ほか。
(共著)『沖縄と国家』(角川新書、辺見庸との共著)ほか。
ブログ「海鳴りの島から」:http://blog.goo.ne.jp/awamori777

「2023年 『魂魄の道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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