ヒュウガ・ウイルス: 五分後の世界2 (幻冬舎文庫 む 1-8)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877285852

感想・レビュー・書評

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  • 村上龍は青春、戦闘、エロの描写を得意とするが、この作品は『愛と幻想のファシズム』『半島を出よ』と並び戦闘系小説の傑作である。
    『五分後の世界』の続編という設定であり、小田桐からジャーナリストのコウリーへと視点は引き継がれ、冷酷かつ勇猛なUG兵士の実態が真横から観察される。
    本筋は皮膚から突如流血し筋収縮により頸骨が折れ無残な死をもたらすヒュウガウイルスの原因究明であり「圧倒的な危機感をエネルギーに変える」作業を継続した者だけが得られる抗体がウイルスに対して有効であるという結果が導かれる。

    ビジパ必読の本作は、海外のジャーナリストにネガティブな記事を書かれないように曖昧な笑みを浮かべながら追従する現代の日本人経営者とは全く異なる、その圧倒的覚悟と能力により彼らを本能的に畏怖させる狩猟者としての斬新な日本人像を与えてくれる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/682630

  • 今、村上龍にハマっていて何冊か読んでいる。
    「生き延びる事」「優先順位をつける事」というのが、どの本からも心の芯に突き刺さってくる。
    ヒュウガ・ウイルスの最後では、自分は生き残れるのかどうか、を否応なく突きつけられる。
    今の日本人の大部分がロシアンマンボを踊りながら死ぬのではないか。
    UG兵士達ほど強烈な経験はできないだろうけど、なんとか生き残る側に行きたいと思う。

  • 何度読んでも面白い!私の好きな作品の一つ。

  • 戦闘描写の勢いと、コウリーの思考がリンクした臨場感がすごい。

    感染、発病のプロセスも映像を見ているかのように想像できた。

    しっかりと裏付けをとった、化学的な事実をもとにしているのも好印象。

    免疫系の知識が全くない人だと、読むのが大変だと思う。

    圧倒的な予算をかけて映画化とかしてほしいなー。

    このシリーズ好き。

  • UGに接触したCNN記者のキャサリン・コウリーは、UGの細菌戦特殊部隊への同行を求められる。その目的は、九州に存在する超高級リゾート地域『ビッグ・バン』の北にある村で発生した、奇妙な筋痙攣後に吐血して死ぬというウイルスの発生源を壊滅させる任務であった……。
    21世紀はこの小説で始まる。点状出血、内臓溶解、骨格筋の爆発的なケイレン。信じ難い致死率の出現ウイルスは何を象徴しているのか?ずれた時空の日本を襲う生存への最大の試練。世界人類が迎えた「最後の審判」を刻む衝撃のドキュメント。

  • このコロナ禍でどうしても再読しておきたいと思った。(基本どんなに感動した本でも再読することはない)
    仕事上で感じることの多い、苛立ちを代弁してくれる今の自分に必要だった本。

    戦争で降伏しなかった時空が5分ずれた日本が舞台の前作「5分後の世界」の続編

    圧倒的な情報量と戦闘描写のカタルシス。
    スラムのオドロオドロしく忌々しい描写。
    それに反比例する、後半部に現れる少年とのエピソードのシーンは涙が出るほどの美しさ。

    ただ、ウィルスの解説や、専門的な名称はわかりづらく、理解できない部分も。
    また同様に、UG兵士は個性的なキャラクターを持たずどの人物がどういう働きをしているか
    銃火器・兵器などの名称も詳しくないため、どんな戦闘がされているのかははっきりイメージしづらい。

    それでも感動するシーンや、好きな文章がいくつもありこの作品の良さが削がれるものではなく、
    かえってそいうった専門的、難解な部分も
    クールでハードな作風によい相乗効果を与えている。

    特に気に入っているのが、固有名詞のセンスの良さ
    (向現、ヒュウガ村、オサカ、オールドトウキョウ、ロシアンマンボ…)近未来SFっぽさもある。

    村上龍氏の作品には現実世界をあらかた予言しているかのようなものがいくつかあり
    この作品もそのうちの一つかと思う。
    やはり特別な存在の作家だ。

  • 第二次世界大戦で沖縄の犠牲だけでなく、本土で決戦を行ったという過程でのストーリー。
    地下に国家を構えたUG軍が、現代の自衛隊と少し重なる気がします。
    目の前の困難に粛々と立ち向かう様に、頼もしさと切なさを感じました。
    この作品をよく読んで、理解できたら…今回のコロナウイルスに対しても少し落ち着いて対処出来るのでは…と思ってしまいました。

  • 【書誌情報】
    著者:村上 龍
    解説:畑中 正一
    価格:533円(税別)
    ISBN:4877285857
    判型:文庫
    Cコード:0193
    発売日:1998/04/25
    カテゴリー:小説
    形態:文庫
    シリーズ:幻冬舎文庫
    整理番号:む-1-8

    九州東南部の歓楽都市ビッグ・バンで発生した感染症。筋痙攣の後に吐血し死亡させるウイルスの蔓延。キャサリン・コウリーは日本国軍に同行する。人類《最後の審判》を刻む長編小説。
    https://www.gentosha.co.jp/book/b2415.html

    【目次】
    目次 [004-005]
    「五分後の世界」梗概 [006-007]

    プロローグ キャサリン・コウリー 009
    第1章 レトロウイルスのように 035
    第2章 細胞外マトリックス 060
    第3章 エンドサイトーシスで細胞質へ 091
    第4章 リソソーム・残骸の街 115
    第5章 壊死したミトコンドリア経由 122
    第6章 ゴルジ装置・腐乱酵素放出 148
    第7章 モリソンホテル・免疫グロブリンの群れ 176
    第8章 核酸の中へ・終止コドンの発見 196
    第9章 逆転写酵素の秘密 216
    第10章 ヒュウガ・ウイルス 248
    エピローグ キャサリン・コウリーの、ジャドソン・カワカミへの手紙 259

    あとがき(一九九六年三月十二日 村上龍) [261-265]
    解説(畑中正一) [264-273]



    【抜き書き】
    ・村上による「あとがき」から抜粋。

    “この小説のモチーフになっているウイルス、免疫、遺伝子は作家にとっても刺激的な生物学の領域だが、たとえばウイルスや細胞器官を擬人化してアニミズムに堕することは絶対に避けたかった。/アニミズムは知と想像力の最大の敵だ。”

  • 前作が良かったので読んで見たが、あまり面白みを感じなかったのは残念。筆者の意図があまり伝わらなかったか。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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