家畜人ヤプー (第1巻) (幻冬舎アウトロー文庫 O 36-1)
- 幻冬舎 (1999年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784877287818
作品紹介・あらすじ
ある夏の午後、ドイツに留学中の瀬部麟一郎と恋人クララの前に突如、奇妙な円盤艇が現れた。中にはポーリーンと名乗る美しき白人女性が一人。二千年後の世界から来たという彼女が語る未来では、日本人が「ヤプー」と呼ばれ、白人の家畜にされているというのだが…。
感想・レビュー・書評
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3月20日、BOOKOFFで人を待ちながら次に読みたい本を物色?!していた所、地震警報が鳴り響き、あっという間に立っていられない程の揺れに、思わずしゃがみこんだ。
そんな私の脳天を直撃してきた本が、家畜人ヤプーであった。
いつかは手を出そうな予感がしていたこの作品に縁を感じて購入。
いやいやいや.....。そういう趣味嗜好は無いけれど、何という世界観なのか??
この時代にこんなものが書けるとは...。
婚約していた、クララと麟一郎の二人がポーリーンに出会うことにより、運命を変えられてしまう。
麟一郎が、人間の気持ちをクララに対する愛情を持ったままヤプーに改造されていく様が、不憫で可哀想で、自分がヤプー側の気持ちになっているのかと気づき何か凹んでしまった。
しかし、久しぶりに後味の悪さを思う存分感じた作品だった。
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別の件で昨年末の新聞を調べていたら、(2008年)11月30日に天野哲夫が82歳で肺炎のため死去、という記事を見つけました。まったく全然知りませんでした。
三島由紀夫が変名で書いたとか、いや澁澤龍彦だ武田泰淳が、など諸説あるそうですが(今では何人かの作家が協同して、覆面作家としての沼正三を作ったということで落ち着いているようですけれど)私の中では天野哲夫=沼正三、つまりこの本の著者です。
世紀の奇書『家畜人ヤプー』は、1956年から「奇譚クラブ」というSM雑誌で連載されたという出自を持ち、超SFであると同時に、変態趣味に耐える超SMでもあるところに大きな特徴がありますが、俯瞰すると太平洋戦争敗戦後のアメリカ白人支配を体験したマゾヒストの妄想というのが本質的なことがらのように思われます。
詳細な梗概は、私が書くのもはばかられますが、乱暴に言ってしまうと、未来の宇宙帝国は白人女性が支配する世界で、日本人男性は家畜として、たとえば人間便器として使われるという、一般の日本人の男性にとって反ユートピア、でもSM愛好家にとってはユートピアという、ややこしい一応SFです、これは。
SFにどっぷりとのめり込んでいた中学生から高校生の頃にどこからか入手して、1970年刊行(都市出版社)のこの本を読んだ私は、いったいどういう感想を抱いたか、たいへん興味のあるところですが、残念ながら記憶の引き出しには何も入っていません。
その頃の読書ノートには「『家畜人ヤプー』読了、表現そのものはスペースオペラの奇想天外さよりは真実性がある感じ、云々」などと偉そうに、SMも知らない未熟者が、涼しい顔して書いているだけです。本当はかなり驚いたはずのくせに、ね。
尚、私のように都市出版社版で読まれた方がおありなら、ひと言。この初版が決定稿ではなく、その後出版されるたびに改稿されたそうで、ですから最後の発行の当該書=幻冬舎版が最終稿だということです。要は内容が少しは違っているということで、ということは是が非でもアウトロー文庫を読まなくては!
※2012年3月25日、数カ所の文章を推敲してから更新したら、すべて消えてしまいました。ということで新規登録みたいになってしまいました。
更新する前に念のためワードに入れていましたので、全体の文章は無事でした。例のヨムナビには、たなぞう時代のコメントはカットされているので、貴重なコメントは消えてしまいました。 -
1956年から連載された沼正三のSF&【SM】小説。
未来世界。白人至上、女権主義国家にて家畜として奉仕する元「日本人」たち、ヤプーと呼ばれ服従に喜びを感じて品種改良や肉体改造をされている存在となっています。
未来帝国イース、テラ・ノヴァ古代文明、有翼四足人…などの設定があるこの物語は確かにSFファンタジー小説の枠組みです。ただこれらの言葉よりも多く小説にちりばめられているのは、畜人、肉便器、生体家具、舌人形などなど。
もうこーゆーのダメなひとは読むのが無理なストーリーです。
印象的に感じたのは人間=家畜とした世界感。リアルな世界では人間以外の動物は当たり前に家畜となってます。人間のために生かされています。でもこれは普通の感覚です。
品種改良でブランド牛豚鶏だらけ。結婚できないので霜降りステーキ大好きです。ベルルッティの革靴最高です。毛皮もありでしょう。
一方でセクシャルな面でも、同性愛、獣姦、ペドなど。二次元愛なんかもそうですかね。
この小説はそんな価値観の違いの究極な形です。
ただこれを身近なことにスケールダウンしても本質は似てませんか?
オススメはできませんが。 -
なんだこの小説は!
未来世界のSF小説なんだけど理系に疎い自分にはそれっぽい解説をつらつらと並べられるとなるほどそういう事もありうるなぁと思わされてしまう。
ただ麟一郎が哀れで彼の行先が心配でたまらなくなる。
一体この先どうなってしまうんだろう。
物語に引き込まれつつ第二巻へと進みます。
ただ自分なら肉便器にされるのだけは勘弁してほしい。 -
再読、部屋を片付けていてうっかり手に取って読んじまいました。
大体の本は年月をおくと読後感も変わってくるものですが、この本は20何年前と変わらず、「こんな頭のおかしい話書いてて、さぞや楽しかったろうなぁ。」
設定の矛盾や構成の行き当たりばったり感は否めず、小説としてはかなり未完成ですが、それを上回る変態的な創造力が行間からヌメヌメと満ち溢れていて、もう全てチャラ。
諸々色々ある作品ですが、創造世界と現実世界の倫理観や価値観はまったく別物だと考えているので、そういう意味では文字による創造物の到達点の一つだと思います。
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マゾヒズムここに極まれりといった感じですね。
人体改造ネタはもちろんのこと、「アマテラスの正体が実は……」といった日本神話を解体するような、右翼団体をブチギレさせたアイディアも秀逸です。 -
ストーリー的に面白い/面白くないは二の次として、緻密な妄想に彩られた世界観をこれだけ事細かに描写し、既存のものに全く異なった意味付けをして、それらを隙間なく敷き詰めて全く別の平行世界を作り上げた、その完璧なるオタク的精神に感動する。
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日本四大奇書の一つにトライ。内容は思ったより読みやすく、エログロが蔓延した現在ではむしろソフトSMぐらいに感じる。一体沼正三とは誰なのか、というところがむしろ本書の面白いところで、三島由紀夫や澁澤龍彦までが名が上げられているのが面白い(だって文体絶対違うじゃん)。
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よくこんな内容思いつくなあと、未知なる世界すぎて読む手が止まらなくなる。