富の福音

  • きこ書房
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877713867

感想・レビュー・書評

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    アメリカ社会のバックボーンであるこのような個人主義を改めて、共産主義社会を建設しようと運動している人たちに私は警告したい。あなた方が夢想する共産主義社会は、人類が過去にこれを試みたのである。そして、一歩一歩、その古い組織から脱け出してきたのが、今日ある人類の文化史なのである。  富を生み出す脳力と忍耐を持った者が富を蓄積したことで、人類に利益を与えたことはあっても、害を与えたということはない。

     いずれにしても、その結果、世界のほとんどの書籍を集めた図書館を国民は一セントの負担もなく利用することができるようになったのである。この図書館を利用できる範囲に住む好学の青年に与える利益を考え、仮にこの五億ドルを多数の市民に平等に分配した結果を考えるのなら、どちらがより社会のために有益かは言うまでもないことである。

    慈善を行い、人に何かを与える人がまず考えなければならないのは、助けるべき人は、自分自身で努力している人に限るということである。  いっそう改善を試みる人に、その手段の一部を与えて助力をすることが真の慈善であり、手をあげて待っている人を助けることではない。向上心ある人のみに部分的な助言を与えるべきであって、その全部に手を貸すというようなことはしてはならないのである。

    真に価値のある人が第三者に援助を求めるのは、不時の災害に遭ったときか、突然の変化に対応できなかった場合だけである。  注意して、まじめに働く人たちを見ていれば、一時わずかな助力を与えることで、大きな成果を得られることも少なくない。気がつけばそのような人に、すすんで援助の手を差し伸べることが望ましいが、どこまで援助することが適当なのかは、援助を受ける人の事情をできるだけ詳しく知るようにする必要がある。  いたずらに慈善に走らず、価値のない人を助けないことも、価値のある人を助けるのと同じように必要なことなのである。何も確かめず、ただ言われるままに助力を与えることは、力を与えてはならない人に力を与え、力を与えなくてはならない人を黙殺する結果になるだろう。   富豪の援助が社会にもっとも役に立つ分野は、奨学金制度のように、人々が高いところに登る足場を作ることである。 そして、その足場の利用を認めるのは、自ら高いところに登る努力をしている人に対してだけである。また、 無料で利用できる公共施設、たとえば図書館、公会堂、公園、美術館などを提供するのは、富豪の責任である。  なぜなら、このような施設の建設を税金に頼れば、より緊急度が高いといわれる施設への投資が優先するため実現がきわめて難しいからである。

     依頼心が強く、すべてを人に任せ、自分の生活が成り立たないのは、他人の責任だとするような人たちを助けるべきではない。富豪がその生活を助けるべき人たちはそのような人たちではない。 自己の将来に希望を持ち、勤労と勉学に励み、貧しくても意欲があり、強く向上を望み、努力を続ける人たちが、助けられる価値のある人たちなのである。熱心に自分自身を助けるために努力している人こそ、助ける価値があり、その結果が社会の利益ともなるのである。  慈善事業に携わる人は、自分たちの行為が社会に害を与えることになっていることを知らなければならない。相手が、ただ生活に困窮しているというだけの理由で、軽率に援助を与え続ければ、最後には、援助を与えた人の意図とまったく反対の結果になるのである。そのような慈善事業なら、何もしないほうが、より社会のためになるのである。

     富を蓄積し、これを増やしていくことは富豪の義務である。蓄財は利己的な行動ではなく、社会の発展にもっとも役立つ高尚な仕事なのである。富豪は自分のために働いているのではなく、社会の発展のために働いているのである。富を蓄積するのは蓄積のためではなく、富をもっとも緊要な部門に投資するために行っているのである。

     カーネギーは、第一章「富の福音」および第二章「富に対する誤解」の中で、脳力のある者が富を築くことは社会の進歩に役立つこと、そして、巨富を得た者はそれを社会に有効に還元すべきであることを再三にわたって説いている。

  • 100年以上読み継がれている永遠のバイブルを今手にしました。

  • 富を持つ者の振る舞いを書いた一冊だが、今日の社会の在り方も考えさせる一冊でもあった。
    今の社会政策や人類の生き方を問いているとも感じられたので、これからの自分の行いを見つめ直したい人におすすめしたい本だ。

  • 後半につれて内容が一段と難しかった。
    この内容が明治34年の世界大戦前に書かれたものとは思えない程、資本主義社会のあり方やその社会での生き方が記されていた。今までストリートチルドレンや乞食へ何故ものやお金を与えてはいけないのは、負の連鎖が起こるからだと曖昧に理解していたが、この本を読んでより理解が深まった。

    ・競争があるということは、社会のあらゆる面で適者が生存し、不適者が姿を消していくこと。不平等を不愉快に感じるのならば、その不愉快さを向上へのエネルギーに転ずることだ。
    ・自己の将来に希望を持ち、勤勉と勉学に励み、貧しくても意欲があり、強く向上を望み、努力を続ける人たちが助けられる価値のある人たちなのである。熱心に自分自身を助けるために努力している人こそ助ける価値があり、その結果が社会の利益ともなる。

  • 社会に貧富の差があるということは、社会が進歩する必要条件だと言っても良い。富を得たいという人間の欲望が、社会を動かす原動力になっている。

    個人主義、私有財産、富の貯蓄、自由競争は、さまざまな試行錯誤の結果到達した高い価値を持つ法則であり、社会にもっとも多くの果実を生み出すことのできる確実な法則である。

    巨額の富を処分する方法
    ①富を遺族や子孫に残す
    ②社会公共のために富を遺贈する
    ③自分の生存中に自らの経験を生かして、公共のために運用する


    子孫に富を残すのは愚行。
    ただ親の虚栄心を満足させるためだけ。
    多くは譲られた財産を使い尽くして終わる。

    富を運用することは、富めるものの権利であり、責任。

    富豪の義務
    ・どれだけ収入があったとしても、贅沢を避け、質素に暮らすことを心がける。
    ・自分の資産をうち、妻子には生活が成り立つ程度の少額の資産を与える。
    ・それを超える資産は、社会からその運用を信託された財産であり、自分はたまたま受託管理者に選ばれたのだと考える。


    慈善を行い、人に何かを与える人がまず考えなければならないのは、助けるべき人は、自分自身で努力している人に限る。

    富豪の援助が社会に最も役立つ分野は、奨学金制度のように人々が高いところに登る足場を作ること。

    無料で利用できる公共施設、たとえば図書館・公会堂・公園・美術館などを提供することは、富豪の責任である。


    「富を持って死ぬ者は、真に不名誉である」

    熱心に自分自身を助けるために努力している人にこそ、助ける価値があり、その結果が社会の利益ともなるのである。

    慈善事業が「みじめな乞食」を作るだけの結果になっていることも多い。


    ★図書館作りたい


    富豪とは、社会全般の繁栄があってはじめて生まれてくるもの。そして、社会全般の繁栄は自由な競争によって社会の富を、生産のためにもっとも有効に使用する方法を知っている富豪の尽力によって生まれるものである。

    「富は青年にとっては禍であり、貧は青年にとって幸いである」


    真の慈善とは、自らを助けるために努力しているものに対して、その努力に応じた援助を行うことである。この原則を持たない慈善は、人々を不幸に導くだけの偽りの慈善なのである。



  • ・「思考は現実化する」著書ナポレオンヒルが成功ノウハウを体系化したもとの人物である、カーネギーの著書
    ・人類は進歩することで富を増やし、その富を社会に有効に還元する必要がある

  • 富めるものの使命、
    それは、『最期を迎える前に、自分の考えでもって、自分自身で世の中のために最良の贈り物を残すこと。』
    遺産として誰かに使ってもらうのではない。

    そして、それはお金持ちであるかどうかに限らず、全ての人たちに言えることでもあると思います。
    “終わり“に向けてへのイメージが、良い意味で少し湧きました(^^)

  • お金持ちになりたいって気持ちの中で使い道などの考え方は変わった。とても為になったが、今読む本ではなかったかな…。 後半は当時の世界情勢がメインに扱われていたのでやや今は不必要な情報だった。 しかし今も昔も変わらぬ考え方は存在すると感じた。

  •  富を得るために読むのではなく、富を得た後に、その富をどう使うべきかを学ぶために読むべき本かもしれない。どのように富を使うべきか、そして、どのように使ってはいけないのかをかなり具体的に述べている。
     慈善団体への寄付には特に厳しい指摘をしている。何も考えずに慈善団体へ寄付をすることは却って貧しい人を増やしてしまうから慎むべきである、慈善団体への寄付こそが貧困の原因である、との指摘は鋭い。これは今も続く貧困問題の核心を突いているように思える。つまり働かなくてもお金が手に入るなら、むしろ働かないほうがお金が手に入るのであれば誰も働かなくなてしまう、そして社会が停滞し、さらなる貧困を招くということである。そしてこれは機会を奪う行為でもあるという。寄付に頼って生活をするようになれば、寄付された人の未来を奪ってしまう、すなわち貧しいままにしてしまうことにつながるのである。
     ひとり数百円でも大勢が寄付をすればかなりの金額になる。その結果、それを受け取った人の未来に何をもたらすのかを考えるならば、巨万の富を持っていなくともお金の使い方、特に寄付の在り方には慎重にならざるを得なくなる。

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著者プロフィール

一八三五年、スコットランドの貧しい織物職人の子として生まれる。一八四八年、一家とともに渡米。木綿工場の糸巻き手、電信技手、ペンシルヴァニア鉄道監督などを経て、製鉄業に進出、鉄鋼王にまでのしあがった典型的なアメリカン・ヒーロー。しかしすぐ実業界から退き、「富は神より委託されたもの」との信念に基づいて、教育施設や平和機関の設立など福祉事業にもてる資産を投じ、慈善事業家として第二の人生を送った。一九一九年没。

「2021年 『カーネギー自伝 新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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