- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784878933424
作品紹介・あらすじ
子供を奴隷にする残虐な大人たち、グランデリニア軍との死闘を繰り広げる七人の少女戦士、ヴィヴィアン・ガールズの物語。
感想・レビュー・書評
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よく「他者に読まれない作品には意味がない」と聞く。「公開されない作品には意味がない」と。そう唱える人たちの持論では、小説でも絵でも古今東西あらゆる創作物は他者に認められ初めて存在価値が得られる。
ずっと疑問に思っていた。
はたして他人の目にふれない作品には本当に意味がないのか?
作品を公開し、認めてもらうだけが全てなのか?
SNSが発達した現代、クリエイターが発表の場を得るのは容易い。Twitterは無料の、しかも膨大な作品が掲載された日刊コミック誌で、ボケッと受動態でいても無数の作品がRТされてくる。小説投稿サイトから受賞を経ず商業デビューした作家も多い。
でも本当にそれが全て?
いいねの数に振り回されて本当に描きたいものや書きたいものを見失ってはないか。読者に媚びて迷走してないか。
沢山の人に褒められる作品は素晴らしい。
けれどどんなに多くの人がちやほやしてくれたって、自分が満足できなければ何の意味もない。創作活動は究極の自慰だ。自己満足だ。他人の為に書くんじゃない、大前提として作者は一番最初にして最高の読者なのだ。
ヘンリー・ダーガーは一切見せず読ませず知らせず、自分のためだけに自分の書きたいようにこの未完の大長編を書き続けた。
創作物を自己承認欲求を満たす交流ツールに落とすアーティストやクリエイターもどきが多い中、孤独で貧乏な彼は、抑圧からの現実逃避に駆り立てられ別の世界を構築した。
拷問と虐殺に彩られたおぞましい、歪んだ、そして可憐な。理想の世界への変態的な執着。
彼は自分という一番の読者に対し徹頭徹尾貪欲で正直にあり続けた、ある意味世界でいちばん幸せな創作者だ。
ヘンリー・ダーガーの経歴を見、ゴッホを思い出した。今では世界的な巨匠だが、生前は認められず不遇だったあのゴッホだ。
ゴッホは他者に肯定されたかったろうが、ヘンリーはそんなのどうでもよかったのでは。むしろ自分の恥部を知られたくなかったはずだ。誰だって自慰を公開するのは恥ずかしい。
ヘンリーは何度も養子を申請しては断られたというが、この物語を読めばサドでペドじゃないかと疑いを抱いても致し方ない。
真偽は永遠に不明だが、この物語はヘンリーの救いとして機能していた。
彼の死後に発見され、アウトサイダーアートの傑作と評価を受けるが、既にこの世にいないヘンリーにはどうでもいいことだ。
この物語には意味がある。
むしろ意味しかない。
ヘンリーの執筆時の心境はわからない。本音では自作の良き理解者を求めていたのかもしれないが、誰に見られずとも書くことだけで救われていた。
世の中には自分の為だけに書き続ける物語があっていい。
それがどんなにおぞましく、醜く、歪んでいようが。あるいは倒錯していようが、自由に書いていいのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヨシタケシンスケ先生が話題に挙げていたので、読みたい本として_φ(・_・
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大学3〜4回生の時に授業でブックとドキュメンタリーを観ました。もう記憶は朧げですが彼の生涯とアパートで一人作り続けてきた世界を凝縮したもの。大した感想は書けませんが、彼の世界・少女達への想いがストレートに、規制されず純粋に表現されているのだと感じました。
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立ち読みですが、見ました。
自分が期待していたワクワク感とは違った世界があったので、購入はしませんでした。
純粋だけれど、エネルギーが詰まっている。 -
世間から隔絶した世界で生きた一人の男が残した作品。
アウトサイダーアートと呼ばれるものらしい。
芸術的な教育を受けなかった人の作品。
現物は何冊もの本になっているっぽいがこれはその一部だけ。
半分が描かれた花と女の子、惨殺死体の後が酷い光景とかのイラスト部分で、4分の1が本文、残りが解説。
彼はこれを公開するつもりは全くなく、まさに、
彼の、彼による、彼のための物語、というすごい作品。
あと、正直値段にびっくりした。 -
2014/07/24
この本 ↓ で、ヘンリー・ダーガーがアウトサイダー・アートの代表として紹介されていて、読んだ(見た)ことを思い出しました。
ヘンな日本美術史
山口 晃 / 祥伝社 ( 2012-11-01 )
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4396614373/seaapteacucom-22/ref=nosim
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2011/11/20
「キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる」 で紹介された アウトサイダーアート。
シュールな絵も、作者の生涯を知ってから見ると、それほど違和感がない。
かわいくも残酷な世界、まさに「非現実の王国で」の話であって欲しい。
2011/8/29 予約 10/28 借りて読み始める。 11/20 絵のみ目を通す。
内容と著者は
内容 :
身寄りのない老人が遺した「非現実の王国で」と題された奇妙な絵物語。
93年「パラレル・ヴィジョン」展で世界に衝撃を与えたダーガーの、天真爛漫と残酷邪悪が並置する物語の抄録と挿絵、
マグレガーによる作品分析を収録。
著者 :
ヘンリー・ダーガー 画
1892〜1973年。17歳で知的障害児の施設を抜け出し、以後孤独な生活を送る。
ジョン・M.マグレガー 著
美術史研究家。アウトサイダー・アート研究の第一人者。 -
外界へ一切コミットせずに一生自分のメガネをかけ続け、そのレンズを通して世界を見ていたらこの世界の果てのような場所に辿りつけるのか。
生々しいエネルギーと情動をこれでもかと突き付けてくる妥協のない世界に受け止める側のキャパシティが足りず眩暈さえしてくる。ただの引きこもりのじいさんでしかなかったはずの人物の中に、歴史上の芸術家の中でも稀な、莫大な表現欲を見る。 -
ダーガーを知ったのはどこだったか。記憶にないが、きっとTHあたりだろう。
アウトサイダー・アート→美術全般→世紀末美術と興味の対象が移行した私にとっては、原点回帰に近い。
それだけダーガーとこやまけんいちは私にとってインパクトだったのだ。
(ただし彼がアール・ブリュットの代表格として選ばれている状況に納得するためには、まだまだ勉強が必要だ)
彼の絵の魅力は、色づかい。ポップ・アートのコラージュ。ペニスつきの少女。おしゃまな姿態。ファッション。背景(空模様・地形・ありえない色彩)の幻想味。戦争へのアンチと官能。
この本一冊じゃまだ足りない。もっともっともっと浸っていたい。 -
梅雨の時期でも、部屋でずーっと眺めていられる。るるる。