ナボコフ短篇全集 (1)

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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784878933677

作品紹介・あらすじ

「言葉の魔術師」が贈る短篇小説の醍醐味。英米文学者とロシア文学者による初めての全篇新訳。

感想・レビュー・書評

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  •  全2巻、52篇。ウラジーミル・ナボコフの全短篇をおさめた全集が出ている。
     1巻を手にしたが、今のところ、頭の中で話を勝手にゆで上げないよう、さっと目をくぐしてある程度だ。あとからじっくりと読みふけろか。
     しかし、この作家の小説を捲るは本書がはじめてだが、異常に波長が合う。長くさわっているのが少々恐ろしくなってきた。まるで呪いのようにぴったり来すぎて。もっとも、タブッキにチューニングを合わせるのに手こずったあとだから、余計に感じるというのはある。

     なぜに、それほどナボコフの波長に合ってしまうのか。
     それはもう、単純に個人の嗜好の問題。ではあるのだが、ただ好きだから、と言うだけではレビューにならないのだった。具体的に書いた方が墓穴を掘りそうだけれど……。

     何がどうして好きかって。まず、文学って、全集って、本を開いた時の匂いが、ちょっと違う。風格があって。知性派っぽくて。かっこいいじゃん。(あほ?)
     それから、このご時世、わりとあっさり納得して頂けるだろうが、ファンタジーというのはかなり魅惑の領域である。
     で、ナボコフの短編集では、どちらの空気も吸いこむことができる。文学チックなムードの中に、幻想物語の霧がわき出す。『森の精』『翼の一撃』など、題名からして喜ばしい響き。
     最も波長が合ったのは『ベルリン案内』という小品。街を描き出す言葉が、魔法のように美しく織りなされたあとは、語りおさめまでも心にくし。

     文学は文学、ファンタジーはファンタジーと、がきっと区別されてしまうと、何だか入り込めないで入口の前をうろうろしてしまうことがある。私なぞ、だいたいそこで帰ってしまう……。
     別にどちらでもいいのにね、と言ってくれているかのような(言ってないけど)ナボコフ。簡単に篭絡されるのもしゃくにさわるが、どうにも抗いがたい誘惑を感じてしまう。


    レビュージャパン掲載『ナボコフの波長』

  • 20190530
    ナボコフ読書会、若島正さんの移動祝祭日に参加しました。福岡市です。

    この中から、ある日没の細部が課題でした。
    お前はもう死んでいるリストの本を紹介いただき、ラブクラフトを知りました。

    マルクはトラックにはねられたけど、はじめから死んでたのかもしれなくて。クララとのことは全部妄想かもしれなくて。
    何が本当でなにが間違いなのかわからなくて。でもわたしの見ている世界もそんなもんかもなって。

    20210320

    『けんか』のみ読了。
    読書会の課題本で。zoom。26人参加?
    けんかは、1920年ナボコフ26才の時に書かれた短編。亡命ロシア人の目線で描かれてる。天気とか太陽とか明るいところから、だんだん夜へと移動してくる。単純な話にみえて複雑でした。

  • ベルリンに逃れてきた亡命ロシア人の話が多い。サラリとしたものから濃密なもの、ダメージを負うものまで様々。90度くらい捻りがある。心に残ったのは森の精、港、雷雨、ラ・ヴェネチアーナ、ロシアに届かなかった手紙、けんか、ベルリン案内、おとぎ話、オーレリアン、忙しい男、未踏の地

    「森の精」「外套」のパロディ?
    「港」 さわやか
    「雷雨」 預言者エリヤ
    「ラ・ヴェネチアーナ」 絵画の不思議な話
    「けんか」 絵画的な平和な日常から一転
    「ベルリン案内」 未来の回想の覗き見
    「おとぎ話」 シニカルな寓話
    「忙しい男」 円環構造
    「未踏の地」 M色のS景のよう。未開のジャングルでの昆虫採集

  • 様々なテーマの、様々な種類の作品が収められている。
    天使や神やファンタスティックなイメージが登場するものから政治的なものまでと幅広い。

    テーマが色々だからどの作品も印象に残るし、どれもが面白いし素晴しい。
    短篇集で、しかも35篇も収められていて、ほとんどの内容を覚えていられるというのはすごいと思う。
    たいてい短篇集なんていう場合、記憶に残るものや好きなものとそうではないものがはっきり分かれるものなのに
    この本はそんなことがない。本当にどの話もいい。
    聞くところによると、ナボコフは短篇の方がいいなんて言う人も割といるらしい。

    それにしても、いやはや、ナボコフさんはやっぱりスゴい人である。
    死ぬまでに読んでおかなくてはいけない偉大な文豪のひとりだと思う。
    言葉をこれほどまでに使いこなす作家はそうはいない。
    翻訳でこれなのだから、原文はきっともっとスゴいのだろう。


    美しい言葉で描かれた絵画。
    おとぎ話的な映像を脳に浮かび上がらせるような文章の連なり。
    美しい比喩が生み出す世界。
    散りばめられた色彩。溢れ出す色。


    紙の上にひろがる言葉によって描かれる風景に、うっかりするとすぐに気持ちよく目蓋を閉じてしまいそうになる。
    閉じてしまいそうというより再読の際は1ページ読むか読まないかのうちに目蓋が下りることもあったけど。。。

    劇的な起承転結によるストーリーというよりは、とある人間のとある人生の一部分の出来事を切りとったものが多い。
    中には少し長めの物語として読みやすい『ラ・ベネツィアーナ』のようなものもあるが、
    印象としてはどの作品も美しい風景に溶け込む死のイメージを文章にしたものばかりだった感じがする。

    読んでいる時よりも読み終えてしばらくしてからのほうが内容が体に沁みてくる感じがする。
    ふとした時に様々な作品の様々な場面がよみがえってくる。


    どれもいいのだが、私は特に『恩恵』『クリスマス』『ロシアに届かなかった手紙』が好きだ。


    最後に、素晴しい文章から成る『響き』より、好きな一節を引用。

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    ”ビロードの棺桶みたいなテーブルの上に載っていたアルバムを投げ出して、ぼくは君をみつめ、フーガと雨の音を聞いていた。いたるところで、棚からも、ピアノの翼からも、シャンデリアの細長いダイヤモンドからもしみ出てくるカーネーションの香りのように、さわやかな感覚がぼくの中から湧き出してきた。”

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  • 図書館でかりる。
    文庫版でだしてほしい!!

  • 短編で一番好きなナボコフの全集。
    書店で探しまわった思いでの品

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著者プロフィール

1899年ペテルブルク生まれ。ベルリン亡命後、1940年アメリカに移住し、英語による執筆を始める。55年『ロリータ』が世界的ベストセラー。ほかに『賜物』(52)、『アーダ』(69)など。77年没。。

「2022年 『ディフェンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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