- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784879406118
感想・レビュー・書評
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じ染色に携わる人でも、志村ふくみさんとはずいぶん違う本だなあ。
歴史について色々書かれているのもおもしろいなあ。
と思いながらあとがきまで読んで、歴史もあわせて紹介するという趣旨で書かれたものと知った。
当然と思っていることを、あらためて知らせてくれる体験が好き。
この本で、鳥居があんなに赤いのは何をもってして昔は塗っていたんだろう。植物染料か動物染料しかないのに! と思ったり。
戦国時代の鎧の紐やら下げ緒やらが、茜草を使って染めた往時の色は今も赤く残っているのに、糸を継いだ化学染料部分は百年もせずに褪色しているのを見て、驚いたり。
p124ほか要約
日本で紫を尊ぶのは、中国から来たらしい。
中国では、『礼記』にて「周人は赤を尊ぶ」と書かれていたほど、赤が上位の色だった。五行の色で、赤もしくは黄が太陽の色だからだ。しかし、しだいに紫が上位になった。孔子は「紫の朱をうばうを悪む」と嘆いたそうだ。
「
漢の時代から、皇帝の住まいを紫宮、あるいは紫宸殿、紫禁城とあらわすようになったことにもあらわれる
」
紫宸殿とか紫禁城って、それで紫だったのか!
歴史の話と思って読むのも楽しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者は江戸時代から続く染屋の五代目。日本の四季の中での「染」を日本の染色の歴史、化学染料を使わない染色の方法等を著者の日々の生活、感慨を交えながら紹介している。しかしそれは専門書のような堅苦しいものではなく、エッセイともいえるもので素人の私にも共感できるものだ。「染」の歴史を語るとき、それは日本の文化の一端とも言えるものである。関わり深い場所、社寺も多く紹介されており、それは畿内に多く、私自身の今生活している場所にも近いところも多く、なんと私は恵まれた場所にいるのだろうと感じた。
明治になり、海外との交流を通じて、化学染料が使われ始めた。そして日本英語が日常的に日本語の中に入り出して、色の表現方法も変わり、またその日本らしい繊細な色自体も失われている。著者は自然の植物染料でなんとか昔の色を復活するための努力もしているのだ。日本中の様々な祭事に必要な道具、衣装等で著者の染めた布、紙が使われていることを知って驚かされた。
なんとか繊細な日本の色の文化を継承してほしいと願う。