- Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
- / ISBN・EAN: 9784879843197
作品紹介・あらすじ
時間にとり憑かれた男、マクシミリアン・シュテレルは自分の生涯を「時間切断機」ことタイム・マシンの制作にささげる。折しも時は激動の二〇世紀、戦争や革命がシュテレルと彼の「マシン」に襲いかかる。シュテレルはマシンを完成させ、未来へと脱出することができるのか──
感想・レビュー・書評
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2013/11/23読了。
ソビエトの埋れた作家のSFということで先入観なしで読んでみた。SFというよりは一人の男の人生の物語として味わい深いものがあった。
優れた知性の持ち主が、それ故に誰にも理解されず不遇な人生を送る物語、と見えるが、実はシュテレルという男はかなり幸せな人生を送ったと読後感を得た。自身も不遇なまま生涯を閉じた作家の願望が投影されているのか、とも思われる。誰かが自分の人生に気の利いたエピグラフを考えてくれる、こんな幸福を望むのは科学者よりも文学者のような気がする。
不思議な魅力のある作家だ。ロシア文学にもソビエト文学にも思い入れはないが、僕にしては珍しく初読後すぐに再読した。版元のサイトで配布されている短編もダウンロードして読んでみた。同じ版元が別の作品も刊行しているようなので、いずれそれも読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
未知の作家であり、予備知識ゼロで読んだが、情報過多のご時世にこういう読書も貴重な経験だ。
時間切断機(タイムマシン)の開発に成功した男の伝記の形を借りて、ソビエト社会の暗部を風刺した小説、と捉えてよいのだろうと思う。とりたてて舌鋒鋭いわけではない。
訳文との相性が悪かったらしく、作家独特の毒舌やアイロニーの凝った表現もたどたどしく、重く、サイドブレーキを引きながらアクセルを踏んだようなストレスを感じた。