ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…

著者 :
  • 而立書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880594262

作品紹介・あらすじ

政権べったりなことで知られる政治コメンテーターの横松輝夫。BSニュース番組「報道9」に招かれるも、訪れた局の控室が、ジャーナリスト時代の後輩・桜木の自死した現場と知るや取り乱し、擁護すべき政権のスキャンダルを暴露しはじめる。これは桜木の呪いなのか? 横松の本音なのか? 政権転覆にもつながりかねないスクープの大きさに現場は大混乱。番組に“待った”をかけるのは果たして誰か? メディアのありかたを通して、いまの日本を覆う“空気”の正体に迫る痛快な戯曲。
読売演劇大賞最優秀演出家賞受賞の社会派ホラー『ザ・空気』、読売演劇大賞選考委員特別賞、毎日芸術賞ほか受賞の『ザ・空気 ver.2』に続く、「メディアをめぐる空気」シリーズ完結編!

感想・レビュー・書評

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  • 日本覆う「空気」の正体。劇作家 / 演出家の永井愛に聞く、報道の自己規制への危機感、配信への思い | CINRA
    https://www.cinra.net/article/202203-nagaiai_gtmnm

    而立書房戯曲(日本)02
    http://www.jiritsushobo.co.jp/gikyoku_nichi02.html

  • 昨年、前作でシリーズ第2弾の『ザ・空気 ver.2』を拝読した際「次回の最終章は舞台で見たい」と切望していたのに、1月の東京公演開幕を前にして緊急事態宣言が発令されてしまい地方在住の為やむ無く断念。だけどもその隙間を埋めるかのようにこの戯曲を読んで間もなく、私の脳内で5人のキャストが生気溢れる姿で熱演し始め、それからは無我夢中で読了した。

    星野の「知識人ほど落とし穴にはまりやすい~」等の台詞には、一国民の私でさえもモジモジしてしまうくらい、核心を突く言葉に感じた。本作の横松らを見ていると、思想とは、オセロのように「裏を返せば正反対の〇〇が浮かび上がってくる」もののように思え、そんな、単純なものが無数の人々を苦しませてきたのかと愕然とするとともに、入口が簡易だからこそ抜け出すのが難しくなってしまうことを実感した。

    実を言うと、私にはまだ“選挙権”を与えられていない。
    さらには、これまで殆どの親族が(現在の)与党を支持しており、大した知識も持ち合わせていない子供には政治ニュースも断片的な話題しか耳にしなかった。
    その私が政府に対し不信感を抱くようになったのは、未知のウイルスに振り回される自国を傍観出来なくなった頃だったと記憶している。

    余談だが、改めて、右左関係なく「選挙に行こう」。これは高齢者の押し付けでなく、私たち若者も胸を張って言えること。学生である私の目から見ても、確実に今の日本は淀んでいるから。
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    横松「……それは、そうするしかないからで、つまり、本当のことを言ったら、大変にまずい ことになる。それで、ただひたすら、下を向き、秘書官から渡されたペーパーをぼそぼそと読み上げている。野党の追及にはしどろもどろで……」<46P>
    .
    横松「そう、自分の言葉で人を共感させたことがないからだ。共感させて、人を動かすことができず、力で脅して屈伏させるしかなかったからだ。彼の言葉は、本心を隠すための道具でしかない。それは、言葉に対する裏切りだ。言葉を裏切る者の言葉は、本人にだってうつろに響く。 だから……」<47P>
    .
    星野「知識人ほど、落とし穴にはまりやすいんだそうですよ。 知識人は理論で物事を把握しようとする。だから、自分が正しいと思うことを理論立てて証明すれば、世の中も正しく変わると信じている。ところが、人は理論だけでは動かない。多数派の空気で動くんですから。知識人は、だんだんこのギャップに耐えられなくなる。そして、このギャップ を埋めようと、新たな理論を展開する。それはもう、空気に合わせるための屁理屈です。でも本人には、それが理論の発展に思える。ここにおいて、彼の理論と世の空気はようやく一致を見たわけですから。もう何も後ろめたいことはない。こうやって、かつて多くの知識人が、自分への裏切りを意識せずに、戦争協力へとなびいていった。松さんにも、これと同じことが起きたんだって。」<69P>
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    二兎社公演44
    『ザ・空気ver.3 そして彼は去った…』
    http://www.nitosha.net/nitosha44/

    <公演日程>
    2021年1月8日 - 31日
    @東京芸術劇場シアターイースト

    <キャスト>
    横松輝夫|佐藤B作
    新島利明|和田正人
    袋川昇平|金子大地
    立花さつき|韓英恵
    星野礼子|神野三鈴

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著者プロフィール

1951年 東京生まれ。桐朋学園大学短期大学部演劇専攻科卒。
1981年 大石静と劇団二兎社を旗揚げ。1991年より二兎社主宰。
第31回紀伊國屋演劇賞個人賞、第1回鶴屋南北戯曲賞、第44回岸田國士戯曲賞、第52回読売文学賞、第1回朝日舞台芸術賞「秋元松代賞」、第65回芸術選奨文部科学大臣賞、第60回毎日芸術賞などを受賞。
主な作品
「時の物置」「パパのデモクラシー」「僕の東京日記」「見よ、飛行機の高く飛べるを」「ら抜きの殺意」「兄帰る」「萩家の三姉妹」「こんにちは、母さん」「日暮町風土記」「新・明暗」「歌わせたい男たち」「片づけたい女たち」「鷗外の怪談」「書く女」「ザ・空気」「ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ」「ザ・空気 ver.3 そして彼は去った…」「私たちは何も知らない」

「2021年 『鷗外の怪談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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