- Amazon.co.jp ・マンガ (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784883793747
感想・レビュー・書評
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木版による漫画集。詩のようなつぶやきのようなオリジナルストーリーの作品と、芥川龍之介などの短編や詩に絵をつけた作品がある。
オリジナルストーリー作品『黒猫堂商店の一夜』は初出が2005年。珈琲、麦酒、版画、古書籍を扱う黒猫堂商店の店主とそこに訪れる不思議な客の一晩を絵だけで見せる。
正直にいうと、小さなコマ割りの中に版画がごちゃごちゃ入っているイメージで、版画の良さを生かし切れていないのでは、と感じた。ただ、この作品は試行錯誤の段階だったのか、その後発表作品ごとに絵が整理されていき、最後の『パラソルの微風』(2011年初出)ではずいぶん洗練された画風になっている。
本書に掲載されている作品は、近代かレトロな空間を舞台にしたものがほとんどだ。懐かしいような温かみを持つ版画の手作り感がこの時代にマッチするのだろう。
私が一番好きなのはやはり『パラソルの微風』。昭和7年、友人に頼まれて一週間留守宅に住むことになった主人公が、これまでに何度も訪れていたその家を改めて新鮮に感じ、つかの間のぜいたくなひと時を過ごすという話。なんてことはないストーリーなのだが、書棚やガラスランプ、時計やいすなど、版画で描かれた家具類が妙に味わい深く、主人公と一緒に部屋にくつろいでいるような気分になる。
オリジナルストーリーは抽象的すぎてちょっととっつきにくいが、宮沢賢治とマッチしそうな画風なので、『銀河鉄道の夜』や『注文の多い料理店』などの作品を見てみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芥川龍之介「蜜柑」、葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」など、原作つきの一遍は、画面にところせましと活字が詰め込まれ、それでいて、どちらもごつごつした木版画がふさわしいようなモノトーンの世界。蜜柑がばーっとぶちまかれるところはまばゆい彩色のような錯覚を得たけれども。原作なしのものは、余白の美というか、幻想的なあじわいというか。しーんとしたたたずまい。
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藤宮史氏の作品『木版漫画集 黒猫堂商店の一夜(2012)』を読了。2022年”本(漫画)”37冊目。
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すごく温かみのある木版の漫画集。