作品紹介・あらすじ
高校の同級生で親友の蒼司に突然告白された千夏は、恋よりもずっと一緒にいられる友人であることを選び、やんわりと蒼司を拒絶する。その翌日、蒼司は学校を欠席した。心配した千夏は自宅や携帯電話に連絡を入れるが、なぜか知らない男が蒼司の電話に出る。男の言葉は異国のもので聞きとれない。不安に駆られた千夏は蒼司の家を訪ねるが、そこに彼の姿はなく-。彼らの運命を変えたラブサスペンス・ストーリー。
感想・レビュー・書評
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主人公達の心情描写がほんと丁寧。作家さんがキャラクター達を愛してるのが伝わるなァ~。ちょっと不足な所もある気はするけど、好きです。
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2月の手のかじかむような寒さが読んでいて伝わってくるような物語だった。両親を殺され、監禁され、為すすべもない蒼司と、彼を助けたい千夏…。しかし彼らはあまりにも無力だった。お互いがお互いを助けたいのにうまくいかない、そのどうしょうもなさも相まって、切なさが溢れ出す。
駆け落ちのような結末もよかった。
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尾上さんのデビュー作です。
当時表紙の美しさだけで、珍しく新書購入しましたが積ん読。
そのまま新作が発表されるたびに、何となく買い続け、やっと
タワーを崩す気になったんですが……。
早く読んでおけばよかった……っっ!!!
文章が少し硬質な感じで、読み始めた最初のあたりは失敗
したかなぁ……と思ったのですが、読み進めていくと
あれよあれよという間に引き込まれ、読後に長いため息が
ひとつ出ました。
一言では言い表せないような、何とも言えない余韻です。
これをハッピーエンドと取るかは人それぞれですが、
私はこのモヤモヤ感が気に入りました。
そしてその後に続く短編が、受の苦しい気持ちが綴られていて、
本編を思い返すとじわりと来るものがありました。
美しい言葉が並んでいて、非常に心地よいです。
サスペンス風味で、実際の事件をモデルに話を作られて
いますが、あの当時の事件をここまで広げて書ける才能に
拍手を送りたい。
受が攻と行ったお遍路で、納経帳の隙間に書き連ねた
思いの欠片が延々と出てくるシーンには、思わず目頭が
熱くなりました。
どんなに受が攻のことを好きなのかが、痛いほど伝わってきます。
そしてそんな受の気持ちに気づかなかったどころか、
持ち前の無神経さで優しく傷つける攻が憎たらしい。
私の中で、どうもこの攻の性格や背景設定が好きに
なれなかったので、★5には至りませんでしたが、受が
もうもの凄く健気。
強気なのに健気というお得感。
そして脇でありながらも、実質主役と言ってもいいような
若田が、物語を引き締めてくれています。
期待の新人さん。
それにしても挿絵がぴったりでいいですねー。
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奇しくもタイトルと同月、しかも雪の降る日に読み終えた。
作者の作品は『天球儀の~』のみ読了済だったが、それと比べると
本作の方が圧倒的に読み応えがあった。
何しろBL小説なのに関わらず、文字が2段である。
これだけでも個人的にとてもテンションが上った。
(常々BL小説は文字が少ないと思っていた)
内容は言ってみれば不治の病の話と言うか、何と言うか。
知らないうちに侵蝕され、気付いた時には取り返しがつかない。
読み進めていくと、登場人物の気持ちが伝染するかのように心が
締め付けられる思いがする。
若さと真っ直ぐさと、かけがえの無さが詰まった本。
ともすれば安っぽくなり勝ちの『愛してる』が、本当の意味に受取れる。
余談だがこれを読んで舞台である四国に興味を持った。
逆打ちと言う言葉のみは知っていたが、そこまで難易度の高いお参り
だと言う事も知った。
人生で一度くらいは四国八十八ヶ所を巡ってみたいものだと思った。
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初読みの作家さんです。
読後に感じたのはこの作品は良かったとか、感動したとか、そんな単純な感情じゃなかった。切々と綴られる感情の揺らぎに、その言葉の壮絶な美しさに、ただただ圧倒されて心が震えたとしか言いようがない。
ただ多くのレビュで見かけた意見に同感で、確かにサスペンスのリアリティを追求するなら、ツッコミどころは満載かもしれない。でも大事なのは、作家さんが描きたかったのは、そこじゃなかったんだとも思う。
愛する誰かの命をつなぐために、だた花を届けるみたいな気安さで、その実自分が壊れてしまいそうな必死さで、ボルトを届けるという極限状態を作りたかったのだと私は解釈しました。
ずっと親友だと思っていた蒼司から、突然想いを告げられて青天の霹靂だった千夏の無自覚な鈍感さや残酷さ。やさしさという名を借りて恋心を捨てさせる無神経さ。ていよく水に流して、それでもお前が大好きだよと縛り付けてしまう狡さ。ただ自分は何も知らなかっただけなのだと、自分の気持ちすらわかっていなかったのだと、蒼司を奪われて初めて気付いた時の絶望。蒼司は決して失くしてはいけない自分の半分なのだと自覚した時の後悔。
蒼司に向かって溢れ出すような感情の発露。それは泣きたいくらい幸せで悲しい。
ふたりのお遍路のエピソードがすごく良くて、特に御朱印帳の隙間にこっそり綴られた蒼司のささやかな日記のくだりはたまらず涙がこぼれた。それに返した千夏のつたないラブレター。
読んでいて苦しかった。不幸なのか幸せなのかわからなかった。でもやっぱり少し幸せで嬉しかった。
ふと我に帰って、事件の不整合生に興をそがれてしまう人もいるかもしれないけれど、私はすごく好きだった。
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尾上与一。参った。はまった。とりあえず今日はここまで。
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話としては面白いけど、これ、BLである必要はないんじゃね……? 重くて、読み終わったら疲れた。
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今までに読んだことないサスペンスBL。サスペンス要素大なので注意………個人的に結構なサスペンスでした………
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読み始めてすぐに挫折しそうになった…;話としては面白かったんだけど、サスペンスって(^^;)BLである必要はあるんだろうか…。そして、若田で締めるってどうなの。私もその空白の3日間が知りたいよ。
著者プロフィール
小説家。代表作『天球儀の海』『さよならトロイメライ』『初恋をやりなおすにあたって』(キャラ文庫)、最新刊『雪降る王妃と春のめざめ花降る王子の婚礼2』(キャラ文庫)。
「2021年 『笠井あゆみイラストカードブック 旦那はんと痴話喧嘩』 で使われていた紹介文から引用しています。」
尾上与一の作品