MONKEY Vol.3 ◆ こわい絵本(柴田元幸責任編集)
- スイッチパブリッシング (2014年6月15日発売)
- Amazon.co.jp ・雑誌 (159ページ)
- / ISBN・EAN: 9784884183936
感想・レビュー・書評
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柴田元幸責任編集『MONKEY』のVol.3。今回の特集は「こわい絵本」
柴田元幸が選んでいるだけあって、ストーリーも絵もひねりとスパイスがきいている作品ばかり。中でも『本と女の子』と『幽霊譚のためのエンディング』がいい。『本と女の子』の作者ブライアン・エヴンソンは、前号Vol.2で初めてその作品を読んで強烈なインパクトをワタシに与えたのだけれど、彼が今号でもやってくれた。この作家の作品はいずれじっくり読んでみよう。
ところで「MONKEY」には、川上弘美、古川日出男、岸本佐知子、村上春樹が毎回文章を寄せているのだけれど、ここまでの三号を読んでいちばん印象に残るのは岸本佐知子。特に今回は「こわい絵本」という特集を意識したかのような仕上がりで、センスの良さが光る。
「私的講演録」というタイトルで寄稿されている村上春樹の文章を読むと、彼の考えていることがよく分かる。村上春樹のことが好きな人はますます好きになり、嫌いな人はますます嫌いになる。そんな文章だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
●猿のあいさつ
●GHOST GOES IN THE DOOR 絵–ジョン・クラッセン ★メジェド様!!
●まぶたのある生きものは 文-小川洋子 絵-ジョン・クラッセン
●ジョン・クラッセン インタビュー 読者を信頼する職人
●はじめての舞踏会 文-リオノーラ・キャリントン 絵-きたむらさとし ★むしゃむしゃ!!
●本と女の子 文-ブライアン・エヴンソン 絵-タダジュン ★
●白鯨 文-ハーマン・メルヴィル 絵-マット・キッシュ ★
●幽霊譚のためのエンディング 文-I・A・アイルランド 絵-山村浩二 ★
●対談 穂村弘+柴田元幸「怖い絵本はよい絵本」 ★「僕の宝物絵本」文庫化タイミングばっちり。
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●柴田元幸 (ひとまずの)最終講義
二十一世紀のアメリカ小説 ★1他者=黒人の登場、2方法革新ポストモダンでは白人男性、3他者再登場だが今度は黒人以外でプアホワイトも含まれる、4ニュー・ニューゴシック妄想小説。
●猿からの質問
門馬太喜/平田俊子/浜田真理子/内田樹/
岩松了/松家仁之/東直子/首藤康之/
マシュー・シャープ★/レベッカ・ブラウン★/
スティーヴ・エリクソン★/レアード・ハント
●デイヴィッド・ピース 龍之介のあと、龍之介のまえ ★ドッペルゲンガーもの。
●San Francisco--We are all in this together
City Lights Bookstore-ブックバイヤー・ポール・ヤマザキに聞く
5Books-柴田元幸がシティライツで買った本
Zyzzyva-サンフランシスコ発文芸誌を訪ねる
●ジョン・フリーマン 英語圏最大の文芸誌はいかにして作られるか
-『グランタ』元編集長に話を聞く
●ジョン・フリーマン 小説家を読むには
-シリ・ハストヴェットとポール・オースター
●対談 きたむらさとし×柴田元幸 グスタフ・ヴァーピーク 『さかさま世界』とフランク・キング
『ガソリン・アレーのウォルトとスキージクス』
【連載】
●川上弘美 「野球ゲーム」
●古川日出男 詩篇「春と修羅」
●岸本佐知子 「バリ島」
●村上春樹 「オリジナリティーについて」
●猿の仕事
スティーヴ・エリクソン
ガブリエル・ガルシア=マルケスのための
ーそして我々みんなのためのー歌 ★ -
柴田元幸責任編集モンキー。ポール・オースター好きの方からのいただきもの。知らなかった文芸の世界が開く素晴らしい雑誌である。これを読んでエドワード・ゴーリーの絵本を思わず予約したくらいである。第一号の『青春のポール・オースター』がほしくなったが欠品であった。中古品は原価以上……スウィッチさん増刷もうしてくれないのかなぁ。
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今回は絵本特集。
メルヴィルの「白鯨」にイラストをつけていった図書館員の方のイラストが素晴らしい。
後は柴田さんの21世紀のアメリカ小説論と毎号ある猿からの質問で今回のお題「立ち会ってみたい瞬間」が魅力的でした。 -
創刊第 3 号。特集「こわい絵本」文章のみが好みなので、
よくわからなかった。
デイビッド・ピースの短編を読めたのにはビックリ。
よく知らない海外の文芸誌のお話も面白かった。
ポール・オースターとシリ・ハストヴェット夫妻訪問エピソードも興味深い。
今回の村上春樹さんの担当部分はわかりやすかった。 -
ghost goes in the door の印象が凄まじい。海を見ていると、波の合間にいる気がするくらいである。現実を侵食するほどの怖さ。
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奈良祥智の絵で「こわい絵本」って、それだけでもう星5つですよ。
すばらしい。
収録されている「こわい絵本」達も、柴田元幸&穂村弘と言うもう何かありがとうございますとしか言えない豪華対談も、とても面白かった。
「立ち会ってみたい瞬間」も短編小説も良かったし、本を巡るもう一つの特集にはぐっと来た。
で、村上春樹のエッセイ「オリジナリティーについて」。
これがまたいい。
書いてあることは、前にもきっと誰かが言っていることだろうとは思う。
でもいい。
その中で一つはっとしたのは、「『春の祭典』を聴いたことのある人と、聴いたことのない人とでは、音楽に対する認識の進度にいくらかの差が出てくることになります」、という一節。
少し前に、ある日本のバンドのギタリストが「ギターは弦の数も決まっていて限界があってつまらない。つまらないからやってる」というようなことを言って炎上、そこに「だから彼のギターには深みがない。彼が様々な音楽を貪欲に聞いて来なかったのがわかる」と評している人がいるのを見た。
私はそのギタリストの音楽を知らないし、知っていたところで深みどうこうとはとても言えないのだけれど、恐ろしいことだと思った。
見る人が見ればすぐに浅さはわかってしまう。
もちろん、音楽をやりたければクラシックからロックまで先人達の音楽をちゃんと勉強しなければならない決まりはない。
何も知らずに見事な音楽を生み出す人もなくはないだろう。
けれどやっぱり、時代の積み重ねに敬意を表するのも必要だと思うのだ。音楽に限らず。
ていうか、好きなら敬意とか考えずにがむしゃらに突き詰めないかなー??
次号はジャック・ロンドンの「野生の呼び声」を柴田元幸が全訳して一挙掲載だとか!
楽しみ! -
特集がこわい絵本。どれも素晴らしい絵と文章でブライアン・エヴンソンの『本と女の子』が特に怖かった。『死神さんとアヒルさん』も読んでみたい。最終講義からは柴田さんの妄想アンソロジー「ニュー・ニューゴシック」のラインナップが素敵。あれもこれもと読みたくなる。そしてサンフランシスコの名物書店シティ・ライツやグランタやジジバの編集の方々のインタビューが、紙の本に携わる仕事もアートなのだと強く感じた。また彼らとMONKEYと私達読者もみんな本を通じてつながっていているような気がした。どのページを読んでも本好きにはたまらなかった。
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いやーもう、たまらん特集でした。
こわい絵本は良い絵本。
ジョン・クラッセン×小川洋子(と、インタビュー)
柴田元幸×穂村弘の対談
が殊に。
ジョン・フリーマンの講演と、ポール・オースター夫妻のエピソードも良かった。
春樹の文章は、マーラーをやっている今読めたのが嬉しいなという感じ。
春樹の小説の書き方と、自分が春樹を読みたくなるときの感じが似ていて、勝手に納得してしまった。(全く書かないときと、書きたくてたまらなくなるときがある、というような。)