シークレット・ウォーズ

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制作 : 佐藤 優  河合 洋一郎 
  • 並木書房 (2012年10月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (518ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784890632947

シークレット・ウォーズの感想・レビュー・書評

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  • すごい本でした。なかなか報道されない情報でシリア内戦やイラン核開発をどう捉えるべきか、西側の考え方が少しわかりました。不案内な地域の話だけにフックがなく読むのに時間がかかってしまいましたが。

  • 佐藤優おすすめということで手にとって見たが、2章で挫折。
    筆者は20カ国300人以上にインタビューをした。そしてそのインタビューでの発言をなるべくそのまま誌上に再現しようとしている。臨場感を高めるための試みだと思うのだが、その発言一つ一つに誰の発言であるか?その発言の中の「彼」「われわれ」は誰のことを指しているのか?を考えないと読み進めない。イランや外交に明るい人であればなんの問題もないのだろうが。。。

    原書がここまで読みにくい文章になっているのかは時間があれば確認したいところである。

  • 3/20−22のオバマ大統領のイスラエル、パレスチナ訪問はイランの核兵器開発中止を訴え、イスラエルの自制を求めている、またイスラエルに対してはパレスチナ自治区でのイスラエル入植地の拡大を非難しているが解決のめどは立っていない。

    ホメイニ革命以降のイラン、イスラエル間の暗闘が描かれている。冒頭は映画アルゴの舞台となったアメリカ大使館人質事件の様子から、このデモ参加者の中にアフマディネジャド大統領が参加している。今からは想像しにくいがパーレビ国王時代のイランはソ連の侵攻を怖れ、アメリカ、イスラエルとは協力的な関係に有った。

    ホメイニ革命後もサダム・フセインのイラン侵攻の際にはイスラエルはイランに武器を売り続ける。この時売られたマシンガンの一部は25年後にヒズボラに渡りイスラエルに向けられることになるこれが第二次レバノン紛争の引き金となった。
    イラクの地雷群に悩まされたホメイニは少年志願兵に戦場で死ねば天国に行けると確約する。聖戦で命を落とすのはシーア派では賛美されることであったが、特攻を殉教として拡大したのはホメイニだ。その後レバノンのシーア派組織ヒズボラの宗教指導者ファドララーと実行部隊のリーダー、イマッド・マグエニーが自爆テロを系統的な手段として完成させた。マグエニーはこの本の中でイスラエルの敵として最も多く登場している。日本ではヒズボラはアルカイダの様なテロ組織というイメージだがレバノンの政党という一面も有る。同様にガザ地区を支配しているハマスはパレスチナのスンニ派の政党でもある。

    イスラエル、特にモサドとイラン、ヒズボラはお互いに誘拐、暗殺を繰り返す。誘拐は人質交換の手段として使われ、特に戦闘に参加した兵士を連れ帰ることを重視したイスラエルに対しては有効な手段であり、イスラエルも誘拐や暗殺で対抗する。誘拐はヨーロッパ人も対象になり自国民が対象になるのを怖れたヨーロッパ諸国は国内のテロ組織掃討を躊躇していた。この辺りは現代とは違うようだ。最近ではむしろアメリカやイスラエルが政府機関同士の縄張り争いで失策が多かったりヒズボラが統率された協力な組織だったりと力関係にも変化が有るようだ。

    ビン・ラディンの登場ではアルカイダの歴史はアフガン戦争からパキスタン、サウジ、アメリカへとつながりスンニ派諸国同士のつながりとして説明されることが多いが著者はこれを明確に否定する。イランとヒズボラのシーア派組織は早くからスーダンのスンニ派テロ組織との間ではアメリカ、イスラエルへの対抗で同盟ができている。

    目下の問題はイランの核開発で、イラク戦争では核開発の証拠が見つからなかったことからオイルマネーや兵器商人、ユダヤロビーに動かされたアメリカの陰謀という話がある。しかしイランの核開発はホメイニ革命以前から続いており、むしろ核兵器を否定したホメイニによって遅れたようだ。(本書の中にはイラン侵攻が無ければイラクの核開発ももっと進んでいたはずだとある)イランはパキスタン、北朝鮮などからロケット、核の技術を導入しており着々とウランの濃縮を続けている。(あくまで建前は平和利用だが・・・)度重なるIAEAの査察ものらりくらりとかわしながら国内数カ所に核開発拠点を分散させており、イスラエルの攻撃が成功するとは限らないというのが著者の分析で、イラン軍の中には攻撃に対しては充分に反攻の能力が有ると言う者もいる。イランはヒズボラを通じてレバノンに影響力を高めており、シリアについては政府、反政府それぞれにアクセスし混乱を助長させ、イラク政府にも影響力を強めている。兵器開発では北朝鮮とも協力関係に有る。鳩山元総理がいくら友愛の精神を発揮しても何も解決しない。

    登場人物も多く、国ごとの背景についても知らないことが多いのと、時系列が錯綜するためなかなか一発で関係が把握できないが少なくともイスラエル側から見たイラン関係の理解は進んだ。

    以下は読んでる際のメモ
    シーア派 全体としては少数派だがイラン、イラク、レバノンなどに多い本書の佐藤優解説ではイランの目的はイランーイラクーシリアーレバノンと西へシーア派ベルトを作り宗教を通じイランの影響下にすること。アメリカはシリアの民主化を推進しスンニ派政権を作りたいがシリアはこのままでは無政府状態のアフガン化の様相。
    シリア バシャール政権はアラヴィー派だが国民の多数はスンニ派、イスラエルとはゴラン高原の国境紛争を抱える。レバノンのヒズボラを支援。イランとも接近。
    レバノン 南部でイスラエルと紛争を繰り返す。シリアからも侵攻された経緯が有り新シリア派、反シリア派がいるがヒズボラの影響力が拡大中。ケシ、アヘン栽培が主要産業となっている。
    ヨルダン パレスチナからの難民が多数流入。イスラエルとの関係は悪くない。
    パレスチナ自治区 ヨルダン川西岸地区とガザ地区に分裂ガザはハマスが占拠しアメリカ、イスラエルが支援している穏健派のファタハに対しハマスが支持を増大。イスラエルはハマスをテロ組織として交渉相手として認めず、ヨルダン川西岸にイスラエル人の入植が続く。アメリカ、EU、日本などを除く多くの国がパレスチナを国家として承認し国連でもオブザーバー国家となった。
    イラク 本書では脇役シーア派65%、スンニ派35%、サダム・フセインのバアス党はイスラムではなくアラブ民族主義で現在はシーア派が政権をとりイランに接近。シリアとは対立が長く、ヨルダンとは良好な関係。
    イラン アラブではなくペルシア地域ペルシア人が半分、アゼルバイジャン系が1/4シーア派が90%でスンニ派は少数

  • イスラム革命以後、ホエイニ率いるイランは、イスラム革命を全世界に輸出すべく、莫大なオイルマネーを武器にテロ組織を支援し、大量破壊兵器の入手を図ってきた。イランから殲滅することを宣言されたイスラエル、そしてアメリカは、イランと同様の「汚い」手段を用いて戦うことになる。

    本書は中東を舞台に繰り広げられてきたイランとイスラエルの30年間に渡る秘密戦争を明らかにするノンフィクションだ。佐藤優の「この本の秘密情報には30億円の価値がある!」という煽り文句はちょっと苦笑してしまうが、少なくともこれまでの固定観念が覆されることは間違いないだろう。

    旧ソ連は共産主義の輸出をスローガンにしてアメリカと戦い、結局、敗れた訳だが、一方のイランはイスラム革命の輸出に半ば成功していることに驚かされる。PLOやハマスなど、本来であればシーア派であるイランとは対立しているはずのスンニ派の組織も積極的に支援し、第二次レバノン戦争ではイスラエルに手痛いダメージを与えて勝利したヒズボラもイランの出先組織として、テロ組織というよりは完全な軍事組織へと育て上げている。さらにアメリカ国内にテロ組織を創設することさえ成功しているのである。

    もちろん、対するイスラエルも善人という訳ではなく、一般人を巻き込む二次被害を考慮しない手段で、テロ組織と戦っている。まさに血を血で洗う抗争である。ちなみに、一般にプロフェッショナルな諜報機関と思われているイスラエルのモサドの様々な失敗を明らかにされている点も興味深い。諜報組織間の対立で防げたはずのテロが防げなかったなどという事例は、まさに9.11に見られたものと同じだ。

    アラブの春により、いくつもの中東の独裁政権が倒れたが、その後に成立した政権にイスラム色が強いのも、イランの関与があったせいではないかと本書を読んだ後には、思わず勘繰りたくなってしまった。

    本書は西側から見たものだということは留意する必要があるだろう。イランからの視点からはどうなのか、ぜひ知りたいところだ。

    本書とCIAの失敗の数々を描いた『CIA秘録』を読み比べてみるのも面白いのではないかと思う(今度やってみよう)。

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シークレット・ウォーズの作品紹介

イスラム革命以後、中東からのアメリカ追い落としとイスラエル殲滅に動き始めたイラン-石油の富を背景にヒズボラ、アルカイダなどのテロ組織を支援し、核兵器開発にも着手する。モサドとCIAはその野望を阻止すべく熾烈な諜報戦争を挑む。アメリカがイラクとアフガンでの対テロ戦争に手間どるなか、騙しの技巧、暗殺、自爆テロなどあらゆる手段を駆使するイランの攻勢は続き、核兵器開発の成功は目前に迫る。果たしてイスラエルはイランの核施設を空爆するのか?10年におよぶ極秘データ収集と300人を超える関係者へのインタビューをもとに「インテリジェンス・ウォーズ」の実態に迫る。

シークレット・ウォーズはこんな本です

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